ぼくたちはまだ出逢っていない の商品レビュー
いじめに悩むミックスルーツの陸、そんな陸の心の拠り所である樹、母の再婚によりできた新たな「家族」に居場所を見つけられない美雨。 それぞれがそれぞれの形の傷を持つ「ぼくたち」を繋ぐのは『金継ぎ』でした。 最近でこそ、オシャレでサステナブルな趣味としてスポットが当たることも増えてき...
いじめに悩むミックスルーツの陸、そんな陸の心の拠り所である樹、母の再婚によりできた新たな「家族」に居場所を見つけられない美雨。 それぞれがそれぞれの形の傷を持つ「ぼくたち」を繋ぐのは『金継ぎ』でした。 最近でこそ、オシャレでサステナブルな趣味としてスポットが当たることも増えてきましたが、やはりまだまだ渋いイメージのある「金継ぎ」。 そこに中学生を掛け合わせるという、なかなかに特殊な角度から切り込んだ作品でしたが、伝統工芸の奥深さに爽やかさと甘酸っぱさが薫る良作だと思います。振り返れば首を違えるほど思春期が遠のいた大人には、そこに一滴の寂寥感も加わってしまうほどに「可能性」というものの眩しさも感じました。 壊れたカケラを繋ぎ、修復した傷に美を見出す日本独自の精神を、人と人、自分自身に照らし合わせる構図も、児童書としてかなり効果的な表現で、子どもたちの胸に刺さりやすそう。 金継ぎというものの存在を理解して表紙を見ると、なるほどと思わせるデザインになっていて素敵です。 何年か前に国際平和デーの式典で、国連事務総長が日本の金継ぎを引き合いに出し、世界で起こる紛争による亀裂を埋めるためにその理念を用いようと言っていました。そんな風にも表現できる伝統技巧を日本人として誇る気持ちも育ってほしい。 ルビしっかりめで、ストーリーや文章は小学校高学年からイケるかなと感じますが、実物の金継ぎ作品を見たことのない子は想像だけでは実像に結びつきづらいかも。個人持ちのタブレットで調べさせてもおもしろそうです。 天平堂も衣川さんも実在のモデルがあるようで、漆のことや後継者問題と一緒に、中学生にはその辺まで興味を派生させてほしいと思います。
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