危機の読書 の商品レビュー
大病以降の佐藤優の顔写真がシリアスで危機感を煽る。その表情が暗示するかのような世界情勢ね危機的な現況においては、読書のような活字媒体からどんなオシントをすべきか。アーネスト・ゲルナーやユルゲン・ハーバーマス、斎藤幸平を手掛かりに。佐藤優によくある論説のため慣れている人にはまたか、...
大病以降の佐藤優の顔写真がシリアスで危機感を煽る。その表情が暗示するかのような世界情勢ね危機的な現況においては、読書のような活字媒体からどんなオシントをすべきか。アーネスト・ゲルナーやユルゲン・ハーバーマス、斎藤幸平を手掛かりに。佐藤優によくある論説のため慣れている人にはまたか、という感じもあるが、それはそれで復習になるため有難い。しかし初見なら難易度が高いかもしれない。 佐藤優といえばロシア情勢。先ずはそこから味わう。 ー 他の地域より破壊を免れているウクライナ西部には、驚くほど多くのポーランド人がいる。東部、南部と中部、及びこの西部エリアにウクライナ3分割される可能性がある。ゼレンスキー政権は西部のガリチアに拠点を移す。東部南部のドンバスはロシアに併合される。中部ウクライナは中立国家となる。 ー ウクライナ戦争に対する日本の政策は、アメリカやG7諸国と共同歩調をとっているようで、独自の行動をとっている部分もある。日本はロシアに唯一G7の中で領空を解放している国である。シベリア上空を通ってヨーロッパに移動する自国の利益を見出しているからだ。また石油と天然ガス採掘プログラムであるサハリン1.2の権益を日本は維持する方針。また入漁料を支払って、魚を取る仕組みも維持されている。防衛装備輸出三原則によって、ウクライナに対する軍事的な貢献をそれほどできていない。 話は民族論にも展開される。 ー 現代社会において、公務員、弁護士、医師などの職業は去勢化されている。ここでのを去勢とは、世襲性の否定という意味だ。 ー ゲルナーは、民族のナショナリズム理論の誤りについて主張している。①自然に自己発生的なものであるとすること。しかしこれは、近代より前の共同体において民族と言う意識を持っていなかった事は、学術的には定説であり、誤り。②民族はエリート集団によって作り出されたものであると言う見方も誤り。中国はウイグル、チベット、モンゴルを包摂した。中華民族を形成しようとしているが、うまくいっていない。道具主義によって民族は説明できない。③宛先違いの理論。これはマルクス主義が好む。例えばシーア派ムスリムの過激派が大天使ガブリエルが間違いを犯して、アリーに届けるはずの神のメッセージをムハンマドに届けてしまったと主張する。これと同じようにマルクス主義者は本来階級に届けられるはずであった「目覚めよ」と言うメッセージを階級ではなく民族に配達してしまったと主張する。 ー ユルゲン・ハーバーマスの「順応の気構え」。高度な教育を受け、たくさんの情報を持つと、その情報の全てを精査し検証することに疲れてしまう。それを避けようと、誰かが説得して自分を納得させてくれるはずだと考えるようになる。ハーバーマスは、そうした重要な気構えは教育水準が上がり、情報量が増えると出てくると指摘している。 ー 皇国史観の基礎は江戸時代の水戸学にある。鎖国体制をするための動員のプロパガンダ術。それはその後、国家総動員体制を完遂するためのイデオロギーとして利用される。神話の無謬性を信じることで士気を高める。ウクライナにおいても、ガリツィア史観により、動員。 斎藤幸平と佐藤優の対談が見てみたいな、と思った。ネットで検索すると、簡単に見つかった。
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タイトルの書見、読書術の類か、と思ったが、まえがきにあるように、その実は 「この本で紹介する各本は、各時代の様々な危機に直面しそれを乗り越えることに取り組んだ知識人たちの著作。 今の時代は危機に直面している。 だからこそこれらの本を読み解くことで、現代の危機を乗り越えるための知恵...
タイトルの書見、読書術の類か、と思ったが、まえがきにあるように、その実は 「この本で紹介する各本は、各時代の様々な危機に直面しそれを乗り越えることに取り組んだ知識人たちの著作。 今の時代は危機に直面している。 だからこそこれらの本を読み解くことで、現代の危機を乗り越えるための知恵を得るのが目的となる。」 とのことである。 実際、読んだ感想としては逸脱しておらず、また佐藤優ならではの視点や経験、視座から、現代を生き抜くのに有益と思われる本がその推薦根拠とともに紹介されているため、読書人としては得るものが大きかった。 本書ではとりわけ、佐藤優のインテリジェンス・オフィサーとしての視点や思考が前面に出ていてワクワクさせられた。 また同時に、神学者としてのバックボーンも現れているため、職業と思想の関係性のようなものが把握できて面白い。 既読のものもいくつかあったが大半は未読で、是非読もうとチェックさせていただいた。 ありがたい。 関係ないけど帯に写っている佐藤氏が激やせしてる点がとても気になる。体調大丈夫だろうか…。
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雑誌連載の読書案内の書籍化だが、掲載期間がコロナ禍と重なっているので、概ね「危機≒パンデミック」として話題が展開されている印象。尚、ウクライナ問題は最後に片山杜秀との対談として収録されているが、ここも中々面白い。 紹介本は日蓮宗(創価学会)、キリスト教、共産主義(スターリン主義)...
雑誌連載の読書案内の書籍化だが、掲載期間がコロナ禍と重なっているので、概ね「危機≒パンデミック」として話題が展開されている印象。尚、ウクライナ問題は最後に片山杜秀との対談として収録されているが、ここも中々面白い。 紹介本は日蓮宗(創価学会)、キリスト教、共産主義(スターリン主義)、ナショナリズム、マスクス主義(コミュニズム)と、宗教やイデオロギー色が強いものが紹介されているが、その中で異色なのは手嶋龍一の公安小説と言えるだろう。
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神学の危機やチェコスロバキア、共産党の昔の幹部の話がどうタイトルにつながるか。これは難しい。知の巨人が描く世界観は、読者にも知力を要求する!?筆者の狙いはわからず、タイトルへのつながりは掴めなかった、残念!
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ロシアに肩入れしてる感は拭えないが、一方的にしか入ってこない情報に「それでいいのか?」という問いかけができる人間は重要。
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ウクライナとウルグアイを間違えてたという件はふいてしまいました。 安倍元首相事件の容疑者を別の角度からみるとこう見えるのかと。多角的に物事を捉える必要性は重要ですね。
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共産党には頑張って欲しいけど、なんとなく権力は握ってほしくない。その「なんとなく」の部分が、佐藤優の共産党批判を読んでると正体がつかめるような気がするというか… 『民族とナショナリズム』を読みたい。
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