切り裂きジャックに殺されたのは誰か の商品レビュー
19世紀末、ビクトリア女王の戴冠式にわくロンドンで、女性ばかりが次々と惨殺されたいわゆる切り裂きジャック事件。犯人は見つからず迷宮入りしたこの事件は、その後も映画や漫画に取り上げられるなど、不思議な魅力を放っている。本書は、模倣犯によるものを除き、確実に切り裂きジャックに殺害され...
19世紀末、ビクトリア女王の戴冠式にわくロンドンで、女性ばかりが次々と惨殺されたいわゆる切り裂きジャック事件。犯人は見つからず迷宮入りしたこの事件は、その後も映画や漫画に取り上げられるなど、不思議な魅力を放っている。本書は、模倣犯によるものを除き、確実に切り裂きジャックに殺害されたとされる5人の女性にフォーカスを当てたもの。当時から現代に至るまで、被害者の女性は売春婦で、社会落伍者で、男に縋って生きるもしくは男を惑わせる魔女のような女とされてきた。このことから犯人を英雄扱い、ダークヒーロー扱いすることまで起こっている。本書ではこのような見方を完全に否定し、女性たちの人生に光をあて、これまで蔑まれてきた彼女たちの名誉回復を図るもの。このような正しいものの見方にハッとさせられる。
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イントロダクション―二都物語 第1部 ポリー 第2部 アニー 第3部 エリーサベト/エリザベス 第4部 ケイト 第5部 メアリー・ジェイン 結び―「ただの売春婦」 物が語る人生
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切り裂きジャック事件について、ロンドンで女性たちが殺された事件と曖昧に記憶していた。ホワイトチャペルという地域が貧民街だったこと、殺されたのが売春婦と言われていたこともぼんやりと覚えている。貧民街であることは確かだが、殺されたのは売春婦とは限らなかった。被害者の生い立ちを丁寧にた...
切り裂きジャック事件について、ロンドンで女性たちが殺された事件と曖昧に記憶していた。ホワイトチャペルという地域が貧民街だったこと、殺されたのが売春婦と言われていたこともぼんやりと覚えている。貧民街であることは確かだが、殺されたのは売春婦とは限らなかった。被害者の生い立ちを丁寧にたどり、労働者階級の普通の女性、教育を受けて読み書きができるものもいたこと。ビクトリア朝時代のロンドンの、特に労働者階級の大変な生活と、特に女性であることの悲劇。いくつかの不運が重なればホームレスとなり、アルコール中毒がそれに拍車をかける。一方で、被害者を売春婦と報じた新聞の功罪と、それを受け入れてしまった民衆が無意識に持っている差別構造にも、著者は言及している。女性の置かれていた立場は戦前の日本のようだと思ったが、ビクトリア朝と比較しなくてはならないと考えると、日本という国がいかに遅れていたのかと、あらためて情けなくも思う。
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「ホワイトチャペルの殺人鬼」「レザー・エプロン」。イギリス・ ロンドンの貧困地区で連続した殺人事件が起きたは19世紀末。 すべてが一人の犯人による犯行ではない。ロンドン警視庁に届いた 犯人からを思われる手紙にあった署名は「Jack the Ripper」。 後に「切り裂きジャ...
「ホワイトチャペルの殺人鬼」「レザー・エプロン」。イギリス・ ロンドンの貧困地区で連続した殺人事件が起きたは19世紀末。 すべてが一人の犯人による犯行ではない。ロンドン警視庁に届いた 犯人からを思われる手紙にあった署名は「Jack the Ripper」。 後に「切り裂きジャック」と呼ばれる連続殺人犯。未解決事件で あるだけに、現代でも犯人像の考察が行われたり、ミステリーの モチーフになったりしているので、古い時代の事件でも人々の 興味を掻き立てる。 正式に切り裂くジャックの犠牲者として認知されているのは5人の 女性たちだ。彼女たちの名前こそ公になっているが、一括りに 「売春婦」とされて来た。 本書は、切り裂きジャックそのものを追うのではなく、被害者と なった女性5人の生きた軌跡を追い、彼女たちの人生を肉付けして いる力作だ。 「売春婦」とされた女性。しかし、彼女たちは決して元から売春婦 として暗がりの路地に立っていた訳ではなかった。 女性が自立することなど不可能だった時代。彼女らは結婚に失敗 したり、大黒柱だった夫が亡くなったり、家を失ったりした女性 たちだった。 不衛生で狭い木賃宿に泊るほどの収入はなく、貧窮院に入ること さえ出来ず、路上で暮らすしか選択肢はなかった。そんな彼女たち は、ある夜、切り裂くジャックの犠牲者となり、事件後から現代 まで「売春婦」と呼ばれて来たのだった。 これほど古い記録が残されていたこと、それを根気よく調べ上げた 著者に脱帽。 女性たちの末路は、決して他人事ではない。ひとつ歯車が狂った だけで、最底辺の生活までに堕ちて行く。それは、セーフティ・ ネットが発達した今でも変わりないのではないか。 大作だし、力作だし、「売春婦」とされてしまった女性たちの 名誉回復にもなっていると思う。だが、翻訳が少々読みにくい。 イギリスで使用されている単位表記(距離とか金額)だが、距離こそ 括弧書きで日本で使用されている単位表記があるが、金額も日本円 表記をして欲しかったなぁ。
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切り裂きジャック事件の被害者5人の、人生こんなんだったんではないかという話なので、実話ではありませんが差別的先入観で認識していた事には気付かされました。 お酒の飲み過ぎには、自分も気を付けようということにも改めて気付かされました。
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有名な「#切り裂きジャック 」。その被害女性たちはこれまで130年以上、無名の女、殺されても仕方のなかった女、であるかのように、十把一絡げに扱われてきた。 けれど、#ハリールーベンホールド が彼女たちの埋もれていた人生を掘り起こし、それぞれの姿をまざまざと蘇らせる。彼女たちの人生...
有名な「#切り裂きジャック 」。その被害女性たちはこれまで130年以上、無名の女、殺されても仕方のなかった女、であるかのように、十把一絡げに扱われてきた。 けれど、#ハリールーベンホールド が彼女たちの埋もれていた人生を掘り起こし、それぞれの姿をまざまざと蘇らせる。彼女たちの人生を知ることで、当時の過酷な社会の有りようも見えてくる。暴力、貧困、病。そして女性差別。やり直しはきかず、殺されてもなお差別は続き、貶められた。 とにかく細部まで丹念に描かれていて、それが5人分なので、結構な分量。でも、あの時代と、あの時代の貧しく生まれた女性が置かれた立場を知ることができた。現代でも、未だ被害者を貶める言説を見かけることがあるから、130年経っても、私たちはあまり変わらない世界に生きているのかも…。
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これまで注目されてこなかった切り裂きジャックに殺害された被害女性たちの人生を丹念に追跡し、彼女たちの多くが従来言われてきたような売春婦ではなかったことを証明する。同時に、彼女たちを「ただの売春婦」としてしか見てこなかった歴史に対してその歪な価値観を批判する。19世紀末ロンドンの社...
これまで注目されてこなかった切り裂きジャックに殺害された被害女性たちの人生を丹念に追跡し、彼女たちの多くが従来言われてきたような売春婦ではなかったことを証明する。同時に、彼女たちを「ただの売春婦」としてしか見てこなかった歴史に対してその歪な価値観を批判する。19世紀末ロンドンの社会状況は過酷で、転落していく彼女たちの物語を読むのは気力が要った。
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