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人間の経済と資本の論理 の商品レビュー

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2024/03/01

著者の東京大学での講義ノートをベースにしつつも,市場システムの分析に限定されない「広義の経済学」の観点から人間の経済を捉えなおそうとした本。 カール・メンガーによると,経済は「節約化の方向」と「技術‐経済的な方向」からなりたっている。新古典派経済学は前者のみを対象としている。 ...

著者の東京大学での講義ノートをベースにしつつも,市場システムの分析に限定されない「広義の経済学」の観点から人間の経済を捉えなおそうとした本。 カール・メンガーによると,経済は「節約化の方向」と「技術‐経済的な方向」からなりたっている。新古典派経済学は前者のみを対象としている。 アダム・スミスは利己的な個人による自由な交換行為が市場による自己調整を可能にし,富を人々に行き渡らせるとしたが,ジェームズ・スチュアートは利己的な個人が互恵的関係や相互依存関係を結ぶには為政者による調整(為政者が市場を調整し富を再分配すること)が必要と考えていた。 アリストテレスやアダム・スミスなどに代表されるように,かつては生産物が富と考えられてきたが,自己増殖する価値の運動体である資本の影響力が増すにつれて,剰余価値という抽象的な形で富が把握されるようになった。 剰余価値の拡大再生産が人間の経済を巻き込み,労働,土地,貨幣という資本でないものさえ擬制資本として資本の論理にからめとられる。 剰余価値の拡大再生産という資本家的生産様式は財の生産の面(ポジの行程)にしか焦点をあてず,廃財(廃物と廃熱)を発生させる過程(ネガの行程)を切り捨ててしまう。 広義の経済学の観点から人間の経済を捉え直す鍵は,生命系・生態系と地域主義だという。また,広義の経済学では,経済成長は持続可能という幻想を捨てる必要があるようだ(観察する側が非連続的な経済発展の結果をつなぎあわせているだけにすぎない)。

Posted byブクログ