ロシアのなかのソ連 の商品レビュー
自分はソ連時代を知っている世代ではあるが、その当時の彼の国がどのようなものだったのかは知る由もなかった。 ただ小学生の時に『ビーチャの学校生活』という児童書を読んだ時、ほんの少しその生活を垣間見る事ができた。この本を読んだ時、その事を思い出した。 前半はソ連時代とロシア時代の違い...
自分はソ連時代を知っている世代ではあるが、その当時の彼の国がどのようなものだったのかは知る由もなかった。 ただ小学生の時に『ビーチャの学校生活』という児童書を読んだ時、ほんの少しその生活を垣間見る事ができた。この本を読んだ時、その事を思い出した。 前半はソ連時代とロシア時代の違いを生活者目線で語られ、後半はウクライナ侵攻についての説明が描かれる。 正直よくわからなかったウクライナ侵攻が少しわかったような気がした。
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プーチンと同世代で大学時代をソ連で生活した著者が、実際その目で見てきたソ連の実情と共に語るロシア像はかなり面白い。ソ連崩壊から30年以上経つが、当時の社会主義的思想から脱却できず苦しむ国民が鮮明に描かれていた。 誤解のないように言うと、著者はウクライナ戦争に対してロシアを否定す...
プーチンと同世代で大学時代をソ連で生活した著者が、実際その目で見てきたソ連の実情と共に語るロシア像はかなり面白い。ソ連崩壊から30年以上経つが、当時の社会主義的思想から脱却できず苦しむ国民が鮮明に描かれていた。 誤解のないように言うと、著者はウクライナ戦争に対してロシアを否定する立場をとっているため、手嶋龍一, 佐藤優「ウクライナ戦争の嘘」(中公新書ラクレ)のようにロシアの肩を持つような内容ではない。 ただ本書ではロシア国民の大半が戦争反対のように書かれているが、ソ連時代から引き継ぐ国民性やプーチンの支持率を見るに、果たしてそうなのだろうか?という疑問はある。
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ロシア人の気質や、ロシアが辿ってきた近代から現代の歴史が簡単にさらっと書かれており、読みやすい。 ウクライナとの戦争についてももちろん言及されている。 終戦を迎えたとて、何十年も遺族の悲しみが続き、何世代にも渡りロシアとウクライナ、2国間のしこりは残ることになることを改めて気付...
ロシア人の気質や、ロシアが辿ってきた近代から現代の歴史が簡単にさらっと書かれており、読みやすい。 ウクライナとの戦争についてももちろん言及されている。 終戦を迎えたとて、何十年も遺族の悲しみが続き、何世代にも渡りロシアとウクライナ、2国間のしこりは残ることになることを改めて気付かされた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
1970年からソ連・ロシアに関わった著者にしか書けない内容で非常に興味深く拝読。 今、世界中の多くの人が関心を寄せる国でありながら、その本当の姿はなかなか伝わってこない。特に、強権的な国家とその中にいるロシア国民とのギャップがそうだ。十把一絡げで語られがちだが、実はそうじゃないという、地に足のついた、長年にわたる体験から語られるロシア人像に改めて刮目させられる。あとがきに記される著者の驚きも、ロシアを知る身として大いなる共感を持った。 「そうなのだ、合理的判断と最も遠くにあるのがロシアの生き方なのだ。」 今となっては貴重なソ連時代の現地体験の述懐が、自分のソ連時代の記憶とも重なり感慨深い。そして90年代の混乱期の体感を経て、現在のロシアの、ロシア人の変遷を記す。 自分の知るロシア人も、ものすごく親切で、困った人にはなんの躊躇もなく手を差し伸べる(力を必要とする作業などは特に)、あの助け合い精神は、日常生活の中でもよく見たシーンだ。荷物を持って乳母車を押す母親を、地下鉄の階段で2,3人の男たちが乳母車と荷物を抱えて持ち上げる。何も言わずとも息を合わせてさりげなく行動に移す姿に、モラル、社会規範として身に付いてるのだろうと静かに感動していたもの。 それが近年変わってきてるのだそうな。 「駅の階段の前に重そうなスーツケースを持ったおばあさんがいた。通りがかりの青年が、「手伝いましょうか」と手を伸ばした瞬間、「触らないで!」とおばあさんが叫んだ。最近、スーツケースを盗む輩が駅に横行しているという。声をかけた青年は見るからに真面目そうだったが、おばあさんの拒否に当惑していた。人びとは自由を得たが、社会全体がギスギスしてきたのは確かだ。」 なんともなぁ・・・。 さらに、昨今のウクライナ戦争で、さらに国民感情は複雑になっていることだろう。 本書でも、ロシアが今、どこへ向かおうとしているのかが、しばしば語られる。 「いま、ロシア政府は急速にかつての大国、ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)への回帰を目指そうとしているように見える。(中略)アメリカと世界を二分したソ連時代へのノスタルジーが拡がっている。」 ロシア政府だけでなく、国民もまた、社会主義の恩恵で「安定し、見通しのきいた生活」や、イデオロギーで善悪が明確に定義され「生まれてから死ぬまで人生のレールがきっちり敷かれ、迷う必要もない人生」を懐かしむ向きは多いと著者は言う。かつては「芸術振興に力を入れ、音楽学校、バレエ学校などを各地につくらせ、あらゆる村に文化会館を創設した。芸術教育は無料であり、卒業後の就職先も保証される」、そんな文化的な国家だったあの頃に戻りたいという機運も高まっている。 そうした記述から感じ取れるのは、ロシア国民が望むことも平和や安定であり、武力を用いた他国の領土侵犯ではない、ということだ。国家と国民性のギャップをまざまざと感じさせられる。 いずれにせよ、事態はのっぴきならないところにまで来ている(2022年11月現在)。 ロシアも西側も、ここは冷静に判断、対処してもらいたいと切に願う。そして、ロシア人の辛抱強さにも期待しよう。著者も記す。 「ロシア人は危機に強い。ロシアでは毎日のように予想外の危機が起きる。国の政変や戦争という大きな危機から、朝起きると突然水が出なくなっているというような日常の危機まで。」 だからといって国民に我慢を、いつまでも強いているのではプーチン政権も危うい。西側の制裁では国家へダメージを与えることは出来なくても、国民の革命心に火をつけるかもしれない。 「芸術を愛する心と革命に燃える心は、根っこが繋がっているのではないだろうか。」 だとしたら内圧による思わぬ決着があるのかもしれない。 その思わぬ動きも、けっして合理的なことではないのかもしれないが、それは我々の想像が及ばないだけなのだろう。 予想もしないことが起こるのがロシアだ。そういうものだと「身に沁みてわかっていたはず」の著者をしても今の情勢は予想外だった。今後も、さらなる予想外が起こるだろうと予想しておくためのヒントが盛り込まれた本書。 それがソ連でありロシアだという思いを、また改めよう。
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