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ぼけと利他 の商品レビュー

4.4

15件のお客様レビュー

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2022/12/10

これは「他者性」に関する書簡/対話の書ではないか、と思った。私たちはついつい(効率/コスパに毒されたのか)絶対に話が通じない「他者」を対話の相手として設定する。ちょうど「ぼけ」た老人が話が通じない相手と思い込むように。違う、と2人なら言うだろう。話が通じないようで鋭くこちらの懐に...

これは「他者性」に関する書簡/対話の書ではないか、と思った。私たちはついつい(効率/コスパに毒されたのか)絶対に話が通じない「他者」を対話の相手として設定する。ちょうど「ぼけ」た老人が話が通じない相手と思い込むように。違う、と2人なら言うだろう。話が通じないようで鋭くこちらの懐に入り込む、そんな「わからない」存在でありその不可知な性質こそ「他者性」なのだ。その「他者」を、引いてはそうした存在と共生している舞台であるこの世界をどう捉えるか。書簡/対話は縦横無尽に広がり、こちらを癒やす。実に深い、コクのある本

Posted byブクログ

2022/11/29

2人の手紙のやりとりが1冊の本になっている。僕の母は、それほどぼけることもなく亡くなった。父は、身体が思うように動かなくなって、先に入院してしまったので、僕はぼけている父をそれほど実感することはなかった。妻の母が、義父がぼけて困ると言っている。年末年始、合計1週間くらいしか一緒に...

2人の手紙のやりとりが1冊の本になっている。僕の母は、それほどぼけることもなく亡くなった。父は、身体が思うように動かなくなって、先に入院してしまったので、僕はぼけている父をそれほど実感することはなかった。妻の母が、義父がぼけて困ると言っている。年末年始、合計1週間くらいしか一緒に過ごさないので、僕にはそれほど大したことには思えない。同じことを何度も聞いてしまうとか、自分が薬を飲んだかどうかを忘れてしまうとか。とりあえず、運転免許は返上したので、その点での心配はなくなっている。本書を読んでいると、レベルの違うぼけ方が登場する。汚れたオムツをベッドの柵に干しているという話。夜中のテレビでそれを乾かそうとしている。すごい発想だし、それに気づく方もすごい。徘徊する老人に付き添う職員の大変さ。そりゃ、トイレにも行きたくなるでしょう。老人が動かした商品を元の棚に戻す。店員にもあらかじめ断りを入れておく。まあ、大変な仕事なわけだ。しかし、考えてみると、そういう仕事をしている人は何だか「生きている」という実感がする。デスクワークで情報だけを動かしているのとはわけが違う。ケアする方も、ケアされる方から何かを得ている。生かされている。効率なんか考えずに、どろくさく、生のお付き合いができると良いのだろうな。これは、きっと教育でも同じことなんだろうと思う。ブロッコリーをどうしてもブッコロリーと言ってしまうというおばあさんが探偵ナイトスクープに出ていた。小さな子どもにも同じような間違いがある。脳は次第に生まれたころの状態にもどっていくのかもしれない。しかし、何十年と生きてきたその歴史の重みは忘れないでいたい。ところで、伊藤亜紗さんの手紙には探偵ナイトスクープ案件がいくつもあった。工場の駐車場らしきところに置かれた物体の数々。ときどき配置換えもある。なぜ、何のために置かれているのか。新聞紙で作った兜をかぶって、雨の中駅から出て行ったおじさん。そして、伊藤亜紗を伊藤亜砂と確信犯的に間違って手紙を書いてよこしたばあば。もう、伊藤亜紗まつりで、1日で3本まとめて解決してほしいですね。伊藤さん、依頼してみませんか? (それと、内田先生の「複雑化の教育論」(東洋館)のときにも書いたけれど、どうしてノンブル(ページ番号)がノド(本の内より)に入っているのだろう。見にくいと思うのだけどなあ。)

Posted byブクログ

2022/11/06

2020年9月から今年の4月まで web雑誌「みんなのミシマガジン」に連載された往復書簡。リアルタイムでも更新を楽しみにしていたが、こうして一冊の本になると益々、おふたりの専門知識と持って生まれたユーモア感覚にコロナ禍だけのせいでなく疲れ果てていた当時の自分がどれだけ救われたか改...

2020年9月から今年の4月まで web雑誌「みんなのミシマガジン」に連載された往復書簡。リアルタイムでも更新を楽しみにしていたが、こうして一冊の本になると益々、おふたりの専門知識と持って生まれたユーモア感覚にコロナ禍だけのせいでなく疲れ果てていた当時の自分がどれだけ救われたか改めて思い出される。視点を変えるって大事。おふたりがお互いの手紙から影響を与え合う瞬間に立ち会えたようで読み手である私もゾクゾクわくわくしました。

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2022/10/16

伊藤亜紗さんと村瀨孝生さんの往復書簡。 ぼけと利他という2つのもの(現象?)がこうつながるのか。 そのあわいをめぐって重ねられ、交わされ、深められてゆく思考に様々な刺激を受けた。 読んでいながら(確かに咀嚼しながら)脳が別の方面にも拓かれていく感覚。 ふいに腹にドンと落ちる共感。...

伊藤亜紗さんと村瀨孝生さんの往復書簡。 ぼけと利他という2つのもの(現象?)がこうつながるのか。 そのあわいをめぐって重ねられ、交わされ、深められてゆく思考に様々な刺激を受けた。 読んでいながら(確かに咀嚼しながら)脳が別の方面にも拓かれていく感覚。 ふいに腹にドンと落ちる共感。 実に刺激的な読書だった。 すごい本だ。

Posted byブクログ

2022/10/10

高齢者の”ぼけ”を通して、人間関係を深く見つめる 相手に負債感を与えない、偶発的な(意図しない)行為が利他であるなら、ぼけは利他につながる 介護者が被介護者から色んな気づきを貰えてる様子を読みながら、利他は循環するのだなと思わずにいられなかった

Posted byブクログ