デクリネゾン の商品レビュー
腹減った ってな事で、金原ひとみの『デクリネゾン』 いつもの金原さんのイメージかと思いきや料理と絡めたお話 普段は和食、居酒屋飯メインのわしじゃが、色んな国の料理が出てきて、これ食べてみたいなってのもあったり デクリネゾンってタイトルはそれぞれみ...
腹減った ってな事で、金原ひとみの『デクリネゾン』 いつもの金原さんのイメージかと思いきや料理と絡めたお話 普段は和食、居酒屋飯メインのわしじゃが、色んな国の料理が出てきて、これ食べてみたいなってのもあったり デクリネゾンってタイトルはそれぞれみんなのデクリネゾンって言うのか、読み終えてタイトルの意味を調べると、なるほどなっ‼️って腑に落ちた 志絵、理子、吾郎、蒼葉それぞれみんな好きなキャラじゃったなぁ。みんなそれぞれええ調理(良い人生経験、新しい家族定義と言うのか)されて活かされとる感じですかね じゃが、『蒼葉』の名前にルビが打って無かったんで、何と読んでいいのか分からぬままモヤモヤした気持ちがデクリネゾン ← 意味も無くただ使ってみたかった 2023年19冊目
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自分が面白いと思う小説には2種類あって、ストーリーが気になって一気読みしてしまう小説と、登場人物の会話や独白に惹き込まれる小説。金原ひとみはまさに後者だと思う。 主人公はバツ2で作家の志絵。作者自身を投影してるような部分もあって興味深かった。元夫や娘の理子、恋人で大学生の蒼葉。...
自分が面白いと思う小説には2種類あって、ストーリーが気になって一気読みしてしまう小説と、登場人物の会話や独白に惹き込まれる小説。金原ひとみはまさに後者だと思う。 主人公はバツ2で作家の志絵。作者自身を投影してるような部分もあって興味深かった。元夫や娘の理子、恋人で大学生の蒼葉。コロナ禍、蒼葉と同居することになり、入れ代わりに理子は元夫宅へ出ていく。 多様な価値観とか家族観とか、これだけいわれていながら、相変わらず母親には母親らしさが求められ、そこはなかなか寛容にならない。志絵は母親よりも女性の幸せを選択し(たように見える)、それを全面的に肯定したラストは、個人的には良かったと思うのだけど、批判されないような周到な表現だな、と感じるところもあった。 作中でフェミニズム系の映画を志絵たちが批評する場面が出てくるが、この小説への批評を先んじて並べておいたのかとさえ思った。 あまりにもいい子な理子との理想的な母子関係、父子関係など、少し絵空事のように思えるところもある。 これまでの作者のヒリヒリするような痛々しい作風と比較すると毒や刺激は少なめだが、世間がコロナにどれほど振り回されていたか、描写がリアルでまざまざと思い出される。 家族や編集者たち、作家仲間との会食など、食べたり飲んだりの場面が多く、どれも本当に美味しそうだった。
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「腹を空かせた勇者ども」の裏表になっている作品だと、何かのインタビューで見た記憶があって、こちらの本を読んでみた。 女性小説家で2度の離婚を経たシンママが大学生の男の子と恋愛して……という筋書きで、合間合間に繁華街のスペインバルちっくなお店の料理の描写が差し込まれる。 なぜだか...
「腹を空かせた勇者ども」の裏表になっている作品だと、何かのインタビューで見た記憶があって、こちらの本を読んでみた。 女性小説家で2度の離婚を経たシンママが大学生の男の子と恋愛して……という筋書きで、合間合間に繁華街のスペインバルちっくなお店の料理の描写が差し込まれる。 なぜだか分からないけれど興味を持続することができずに半分読んだところで挫折してしまった。多分、小説家という職業に就いてるし、2回は結婚してるし、娘は理解あるし、小説家の友達はいるし、元夫は育児に協力的だし、年若い男の子から崇拝のような眼差しを向けられてるし、「まあ、じゃあ、いいんじゃない?」と思ってしまったからなのかも… とくに気になった一文はあった。こういう表現は心地が良い。 ーーー "和香の不倫もきっとそれと一緒で、一人の男を知っていく、とことんまで深く入り込んで愛し愛され、これから食される牛や豚のように喉元から肛門まで互いをナイフで切り裂き内臓を表出させ内臓同士を擦り合わせたり裂け目に顔を埋めたりするような恋愛をして互いを遮る皮膚の存在をすっかり忘れた頃、彼女は彼に纏わる小説を何本か書き上げ、もう彼から得られる栄養素がないことを知り、小説を書くため新しい恋愛を探し求める。" ーーー また気が向いたら続きを読むかもしれない。
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ハッピーエンドでよい。 自分の衝動に素直に生きることは良い。 これに出てくる歌舞伎町の火鍋のお店は行ったことある
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心地良さは皆無。 二度の離婚を経て中学生の娘・理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家・志絵。 二人の元夫と交流を続けながら、大学生の恋人・蒼葉と暮らし始める。 とても貪欲だ。 仕事も家庭も子供も恋愛も、全て手中に収めたい彼女と自分の境遇が違い過ぎて共感する事が難しい。 ...
心地良さは皆無。 二度の離婚を経て中学生の娘・理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家・志絵。 二人の元夫と交流を続けながら、大学生の恋人・蒼葉と暮らし始める。 とても貪欲だ。 仕事も家庭も子供も恋愛も、全て手中に収めたい彼女と自分の境遇が違い過ぎて共感する事が難しい。 友人や恋人と美味しいものを食べ歩き十分満たされているかのように思えるが、時に発動する破滅的な言動にたじろいでしまう。 時間と共に人との関係性は変化し、未来に絶対はない。彼女の危うさに翻弄されつつも、迸る熱量に圧倒された。 志絵の自由さが羨ましくもある。
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年齢の変化、人間関係の変化、環境の変化、そんな細やかな日常の中の気持ちや感じてることが、とても細やかに言語化されていて、じっくり読めた。金原ひとみさんの作品は食事がとても美味しそうで、今回もたくさんの魅力的な食事がでてくて、美味しいご飯を食べたくなった。
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最高の小説だった。生涯ベスト5あたりに食い込むかもしれない。 「私」を支配する、自分でコントロールしきれない私の欲望。それに従ったり抗ったり絶望をおぼえながらも、それでも、誰かと、この世と、生きていくしかない。その選択をし続けている「いま」の尊さ。 コロナ禍の直前から落ち着くまで...
最高の小説だった。生涯ベスト5あたりに食い込むかもしれない。 「私」を支配する、自分でコントロールしきれない私の欲望。それに従ったり抗ったり絶望をおぼえながらも、それでも、誰かと、この世と、生きていくしかない。その選択をし続けている「いま」の尊さ。 コロナ禍の直前から落ち着くまでの期間を、飲み会やライブの状況と照らして描くから、まるですべて自分ごとのよう。いやー、最後までめっちゃおもしろかった。
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デクリネゾンとはフランス料理で使われる『1つの食材をさまざまな調理法で仕上げること』といった意味合いの専門用語。 小説家の志絵を軸に1人娘、2人の元夫、20年下の大学生の現恋人との関係性とその変化を、コロナ禍の時代背景を交えながら描いている。 中学生の娘を既に持つ志絵の恋愛に...
デクリネゾンとはフランス料理で使われる『1つの食材をさまざまな調理法で仕上げること』といった意味合いの専門用語。 小説家の志絵を軸に1人娘、2人の元夫、20年下の大学生の現恋人との関係性とその変化を、コロナ禍の時代背景を交えながら描いている。 中学生の娘を既に持つ志絵の恋愛に対する果敢な姿勢は、非常に強い欲望に突き動かされているように一見思える。しかしその時々での男との恋愛、そして衝突や別れを淡々とした語り口で描いていることから、あまり強い衝動は感じなかった。 志絵の感情や共感力が薄いわけではなく、自分が他者に感じる愛に対して正直な行動を重ねていった結果とも言えると感じた。
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不穏が平穏に。 家族観や女性観が緩やかに溶かされ、温かい陽光を感じながらナプキンで口を拭う。 本作のテーブルには食欲を掻き立てる風味絶佳の料理が並び、同時にその食卓には志絵のSignificant other達が座る。最初はそこに不穏さを感じた。とんでもない、恋愛体質で子を蔑ろ...
不穏が平穏に。 家族観や女性観が緩やかに溶かされ、温かい陽光を感じながらナプキンで口を拭う。 本作のテーブルには食欲を掻き立てる風味絶佳の料理が並び、同時にその食卓には志絵のSignificant other達が座る。最初はそこに不穏さを感じた。とんでもない、恋愛体質で子を蔑ろにし、「彼氏」や「デート」に興じていると。彼女は私と違ってそういうことができる可塑性に満ちたところに居る作家さん、なんだと。 しかし挟まれる和香やひかりとの飲み会の相伴に預かり、理子や蒼葉との気の置けないやり取りを見るにつけ、彼女が祈りにも近い切実さで人と共にあることが分かってくる。胸の中の強烈な悲鳴、暴れ出しそうな獣。それを収めてくれる絶対的な存在としての他者。 「青春の続き」を思い出してしまった。 ------ 「己自身のだめ生きるだけって もうしんどいの 期待も落胆も知れている」 溜め込んだ愛は過飽和中 行き場のない危ういこの心身を 強く深く重く組み敷いて押さえて 陶酔させてほしい 嗚呼 貴方を掴んでいられたら ずっと安心 ------ そうして自分自身にも嵌められた桎梏に自覚的になると、小説はヒーリング的な意味合いを持ち始め、ああ長編で良かったな、まだ終わらない。と思った。 そもそも「デート」とか「彼氏」みたいな言葉がよくわかんない色に錆びて、何も意味をなしていない日本語なのかもしれない。 彼女の連載テーマとストーリーが連動している仕掛けも良い。メッセージがくっきりと伝わり、心の置き場が定まる。「小説に求めるべき価値は、社会的正当性のない言葉をいかに伝えられるか」とエンドースされ、気持ち良くフィクションに「誑かされる」のだ。それは「騙されるよりも甘く、欺かれるよりも怪しい」 最後には彼女はコロナの息苦しさから解放されたような世界で、緩やかに自立する。その澄んだ呼吸音が聞こえるかのよう。 「私は戻ってきた」かー…自分は女としてそこに達していないから、行かないで、と思ってしまったのだけれど。
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恋愛体質な子持ちの30代女性作家のコロナ禍での生活を取り上げた小説。 主人公はあまりに自分本位だと思って共感はできず、複数の元夫や不倫相手とこんなにうまく共存できるものなのかと思ったりはしたが、随所に人間に対する洞察が溢れていて、なかなか面白く読めた。
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