世界の神話 躍動する女神たち の商品レビュー

沖田瑞穂(著者)

2023/02/06

・エレシュキガルの冥界の家が、陰鬱で誰も帰って来られない場所とされているところからは、古代メソポタミアの人々の、死に対する、あらがうことのできない恐怖が見て取れます。女神イシュタルであっても、それを克服することはできなかったのです。

2022/11/15

〇神話、伝説、昔話の中の“女神”たちの性質やその司るものをみていく
世界中の女神たちを網羅していて、ダイナミックで面白い
異世界転生ものと神話との比較も興味深い

◎はじめに
美しさや優しさだけでない、「女神」の持つ意外性を楽しんでもらいたい

1:絶世の美女神
美しさの気まぐれと残酷、争いの原因
…イシュタル、アプロディテ、フレイヤ、ジュリー、ヴィヴィアン、ドラウパディー、牙娘、コノハナサクヤビメ、バナナの木の精、デルドレ

※神話と伝説と昔話はどう違う？
神話…聖なる物語
伝説…事実（と、みなされていた物語。聖性は期待されない）
昔話…聖性は期待されず、事実も関係ない
ただし厳密に区分されているわけではない。

2:めちゃくちゃ強い女神
想像を遥かに超えてたくましく強力な女神たち
戦女神ドゥルガー、ダマヤンティー姫、サーヴィトリー、セクトメ、ダンジャイ、ヴァルキュリア、青い鷹の妻、トリカブト姫、アマテラス、

※酒と聖なる飲み物の神話

3:母神の愛憎
優しく慈しむ母神、子殺しの母神、子に助けられる母神
サシクニワカヒメ、スセリビメ、柳花、プローマー、コアトリクエ、春山之霞荘男の母、魔女メディア

※親孝行の娘がパイナップルになった話

4:転んでもただでは起きない女神
不運や理不尽に負けない
アリアドネ、プシュケ、パールヴァティー、シャチー女神、バリ公主、ウバユリ掘りの娘

※ライトノベルの異世界転生ものの人気について
神々の輪廻転生の軛

5:変わった奥さん
異類婚姻譚
トリカブト姫、魚女房、トヨタマビメ、メリュジーヌ、象の女房、竜の女房、蛇婿とタニシ女房

※雪女・雪男・雪娘っ子

6:怖い女神
恐ろしくも勇ましい女神たち、人を食う女神
カーリー、鬼子母神・ハーリーティー、ヤマンバ、変婆、バーバ・ヤガー、ヨーロッパの魔女、ゾノクワ、老魔女・セットゥト、エレシュキガル、ポリネシアのヒネ、イザナミ、イヌイットのセドナ

※嫉妬深い女神たち

◎あとがき_女神のたどった道
旧石器時代
約二万年前、世界ではじめての女神の表象
鳥の姿

新石器時代
農業のの開始
偉大なる母神・グレートマザー
古ヨーロッパ・母系性社会
鳥と蛇、蝶、蜂
自然の生命に対しての敬虔な姿勢
インド＝ヨーロッパ語族（男性型）の侵入
…農耕的・定住的・平等主義的・平和的
　　→階級的・牧羊民族的・移住的・戦争指向型

青銅器時代
女神とその愛するものとの別離の神話
女神文化への侵略と破壊
女神の象徴が生と死にわかたれる