さだじいの戦争かるた の商品レビュー
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これは、とても良い本でした。 1963年生まれの著者の、生きていれば90余の父親(貞夫氏)から、昔語りに聞かされた先の大戦のエピソードを、44枚のかるた仕立てにして聞かせてくれる。 「いろは」や五十音順じゃないことに一瞬違和感を覚えたが、要はさだじいの生誕から戦後めでたく結婚にいたるまでの半生を(ほぼ)順に追って並べている体裁。 (り)「陸軍の 軍人の名に あやかって」と、生まれて命名された話から、(さ)「最愛の 人と結婚 戦後かな」まで。 読み札と絵札のページには、戦中に少年・青年時代を過ごした「さだじい」が、やわらかながらも直截な関西弁で当時の想い出を語ってきかせる。 続く見開きページで、そのエピソードにまつわる史実や、世相、用語解説が画像などを交えて著者によって記されている。 「学童疎開」「教育勅語」「空襲警報」「赤紙」「奉安殿」「焼夷弾」「ハウスボーイ」「ソビエト抑留」「進駐軍」・・・ etc. etc... 自分の世代(=著者と同世代)も、それらの単語は肌感覚の伴うものではないが、ややもすると近年は、まったく見聞きすることも、意識に上ることもなくなった言葉たちだ。 これからの世代にとってはなおのこと。 いままた、世界の片隅では大きな火種になりそうな近代国家同士の戦争が繰り広げられている。片や、長らく大国の理論に翻弄されてきた民族の恨みつらみがあり、片や、常に敵視され悪意ある意図を向けられ続けてきたという被害意識に苛まされている。 すべては歴史の記憶によるもの。また、それを利用しようとする為政者によるものではあるのだが。 戦争の記憶を語り継ぐ、風化させないことは是か非かという意見もあるが、「さだじい」という一市民が、戦争があったために体験した44の事実は、やはり、戦争がなければ体験しなくても済んだのに・・・と思う事ばかりだ。 この本は、小学生くらいの甥っ子、姪っ子たちに読ませたいなあ。
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