僕らが学校に行く理由 の商品レビュー
「学校は希望(hope)です」とシャロンはいう。教室で同じような年齢の友だちといっしょにすごして、「学ぶことは楽しい(fun)」と感じた。楽しいともっと学びたくなる。それまで知ることのなかったワクワクにたくさん出会い、自分がどんどん新しくなっていく。そんな可能性を実感できる豊かな...
「学校は希望(hope)です」とシャロンはいう。教室で同じような年齢の友だちといっしょにすごして、「学ぶことは楽しい(fun)」と感じた。楽しいともっと学びたくなる。それまで知ることのなかったワクワクにたくさん出会い、自分がどんどん新しくなっていく。そんな可能性を実感できる豊かな時間と、何より大切な友だちとのつながりは、とつぜん、「貧困」によってうばわれてしまったのだ。(p.26) 親は子どもを住みこみができる働き先に出すことで、仕送りまでは期待しなくても、「口減らし」になる、つまり養わずにすむと考える。家族の苦渋の思いを感じとる子どもは、限られた選択肢の中でら自ら働く決意をするのだ。(p.79) 「何かやりたいことや将来の夢はないか?」と質問するが、「何もない。やりたいこともないし、行きたいところもない」…(略) かなわない望みを持ってもしかたがないー。そんな「あきらめ」がいっぱいつまっているような「何もない」というルルの言葉を受け、僕は申し訳ない気持ちになっていた。 …(略)おそらく、僕が彼女に申し訳なさを感じたのは、母国、国籍、職業選択や移動の自由、夢を追いかけるエネルギーなど、ルルが持っていないものを僕がたくさん持っていることに対してだと思う。 それらには当たり前のように与えられてきたものもあるし、自分の努力や才能で手に入れたものもある。僕はそう思ってきた。でも、それはきっと思いちがいで、僕がたまたま日本で生まれたから、たまたまある両親のもとで生まれたから、たまたまいい条件が積み重なったから、結果、今の恵まれた状況があるにすぎない。(p.142) 「生活は変わらないけど、幸せだと思うようにしている」…(略)「将来の夢もないし、何をやってもうまくいかないし、なすすべがない感じなのはあいかわらず。でも、それを受けとめながら、今いるところで幸せを見つけようとしている。たとえ幸せじゃなくても幸せのほうに心を向けていくことはできる。そうすれば、どこにいても明るく生きていける気がするから」(p.144) 【テラコヤの子どもたち→ヴァッサー大学の合唱部】 あなたの靴で歩きたい あなたの靴と髪を手に入れて マニキュアもしたい 口紅と服が最高ね あなたの感性がほしい 外国を旅して好きな場所に住みたい あなたの靴で歩いたらどんな気分かしら 【ヴァッサー大学の合唱部→テラコヤの子どもたち】 私は一つの言語しか話せない あなたは二つも三つも話す あなたはおどるときに人目を気にしない 私はおどるのが怖い 人に笑われるから だからほしい 私はほしいの あなたがもつ自由がほしい あなたのように歩きたい 今は自分の見方しかできないから 星空が見える夜がほしい 【テラコヤの子どもたち→ヴァッサー大学の合唱部】 いいえ 星にはそんな大事な意味なんかない お母さんやお父さんに ふれられる何かがほしい 【いっしょに】 私はほしい やっぱりほしい あなたが持つ自由がほしい あなたのように歩きたい 今は自分の見方しかできないから もっとほしい 私はもっとほしいの あなたの靴で歩きたいの (『I want more』作詞・作曲:マット・グールド)(p.178)
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※このレビューにはネタバレを含みます
紛争、貧困、飢餓、災害……困難の中に生きる子どもたちの姿から、「学ぶ」意味を考えていく一冊。 「ノーチョイス」という言葉が彼らの状況を象徴していると思った。幼い兄弟の世話をしなければならない、労働しなければ食糧がない、生きていくお金が得られないないなど、自分の意思で自分の人生を選び取る自由を奪われている子どもがたくさんいる。もう知っていたことだけど、渋谷さんは、実際に生きている子どもの思いや姿を伝えているので、他人事じゃなくするような力を帯びている本になっている。 今年の自分のテーマは「正しく生きる」。これは、ルールを守るとか、ズルをしないとか、そういうレベルではなく、もっと広がりのあるテーマなんだと、最近いろいろな本を読みながら思っている。「環境」「不平等」「貧困」などなど、社会的な課題に目を向けて、「正しい」行動をしていけるようにしよう。無知でいると、それができない。そのために本を読み、自分の行動を考えようと思った。本を読むとは、平和を創ることにつながるんだな。こういう自分の発見を、子どもにも還元していきたい。 「貧困とは、たんにお金がなくて生活に困っている状態ではなく、自分の意思で自分の人生を選び取れない状態のことをいうのかもしれない」 本書は、「僕らが学校に行く理由」を、かなり周り道して考えていくような構成になっている。まず、困難の中に生きているさまざまな子どもたちの思いや生活を豊富な写真とともに知る。そして、困難な状況の中で学ぼうとする子ども、学びへ誘う大人の思いを読むことで、「彼らにとっての」学校に行く理由を考える。そこから初めて、自分自身が学校に行く理由を考えることができる。 彼らの姿から、ウチの学校の子どもたちが「学校に行く理由」を考えることはなかなか難しいかもしれない。状況が違いすぎて。ただ、「学校に行く」ということがあたりまえにない生活があり、学校に行きたくても行けないという子どもがいるという事実を、字面だけでなく一人一人の子どもの姿から感じることができるというのは大切だろう。 渋谷さんは、エピローグで、学ぶことの意義を次のような言葉で表している。 ・「自分が生きている世界がどのような世界かを知ること」 ・相手と自分を隔てる「心の境界線」をとりはらい、まなざしをともにするため つまり、「僕らが学校に行く理由」は、一言でいえば、平和な世界を創っていくためだと渋谷さんは言っているように思った。この世界で起きていることを知り、生きづらさを抱えた人とまなざしをともにし、一人一人が幸せに生きていくために行動する。そのために必要なことを学校やその他の場所で学んでいく。 学ぶ理由を個人の人生の中で完結させない視点をこの本は与えてくれる。地球に生きる一人として学ぶ理由を考えさせてくれる。
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心の境界線をとりはらうこと。 日本に暮らしていて常に意識し続けるのは難しいかもしれないけど、こうやって考える機会を与えてくれてるから、自分から機会を得て考えないと、と思う。
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貧困や戦禍や病気や自然災害などの過酷な状況下でも学校が開かれ、必死に学ぼうとする子らがいる。また学ぶことができない子もいる。 フォトジャーナリストの著者の写真を交えて学ぶことの意義を見つめ、写真の力や過酷な現場を撮影することの意義をも思い知る。
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著者が2019年に出した『まなざしが出会う場所へ』を、10代の若者に向けてより手に取りやすい形にした、ということだろうか。文章より写真の方が多いが、著者が前著で伝えようとしていたことが、よりわかりやすく整理されてストレートに提示されているように思う。
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南スーダン、バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、ウガンダの子どもたちの姿を伝える。 子ども達が置かれている苦しい環境を訴える写真もあるが、そんな状況にあっても子どもらしい笑顔いっぱいの写真、教室で目を輝かせて学ぶ写真、仲間と楽しそうに戯れる写真が印象的だ。 小学生(高学年)に...
南スーダン、バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、ウガンダの子どもたちの姿を伝える。 子ども達が置かれている苦しい環境を訴える写真もあるが、そんな状況にあっても子どもらしい笑顔いっぱいの写真、教室で目を輝かせて学ぶ写真、仲間と楽しそうに戯れる写真が印象的だ。 小学生(高学年)にもわかりやすい文章で、世界のいろいろな国の子どもたちの話が書かれている。 特に良いと思った点は2つ。1つ目は、子ども達ごどういう理由で、苦しい環境に置かれているのかという政治・社会的な背景がきちんと説明されているところ。2つ目は、小学生だった子ども達が、その後どんな道を辿り、どんな大人になっているか、同じ子どもを何年も追い続けているところ。 日本人の子どもなら「勉強なんてつまらない」と思う子が多いかもしれない。本の中の嬉しそうに学ぶ子どもたちの姿を見て「学校に行く理由」や「学ぶとはどういうことか」など、いろいろ考えを巡らせてほしい。
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なぜ学校にいくのか? 著者自身も漠然としてわからない答えをいろいろな国のたくさんの子どもたちに聞いてわかろうとした話です。 学校、買い! 2023/02/13 更新
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紛争や貧困などの理由から学校に通えない状況でもひたむきに学ぼうとする子どもたち。そんな彼らの生きる姿とそこにある社会背景。学ぶことが未来や希望に繋がると信じている子どもたち。切実に。苦しい。何を学びたいのか、何のために学びたいのか。そういう心からの欲求があっての学び。世界中の子ど...
紛争や貧困などの理由から学校に通えない状況でもひたむきに学ぼうとする子どもたち。そんな彼らの生きる姿とそこにある社会背景。学ぶことが未来や希望に繋がると信じている子どもたち。切実に。苦しい。何を学びたいのか、何のために学びたいのか。そういう心からの欲求があっての学び。世界中の子どもたちが教育を受けられますように。大人がやらなきゃいけないこと。
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