最後の鑑定人 の商品レビュー
面白かった。 読んでいてタイトルの意味に納得。 そして歩容鑑定、炭化深度、燃焼残渣。。科学鑑定方法も興味深かった。 冷静に真実を求める「最後の鑑定人」と呼ばれた元科捜研エースの土門誠。 助手の高倉柊子とは最高のコンビ。是非続編期待。
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土門誠。事件に関わる物証を科学的に解析する鑑定のプロだ。かつては科捜研のエースだった土門だが、ある事件がきっかけで退職し、民間鑑定所を立ち上げ独立した。 「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」とまで言われた土門のもとには、現在でも鑑定困難な証拠物件が数多く持...
土門誠。事件に関わる物証を科学的に解析する鑑定のプロだ。かつては科捜研のエースだった土門だが、ある事件がきっかけで退職し、民間鑑定所を立ち上げ独立した。 「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」とまで言われた土門のもとには、現在でも鑑定困難な証拠物件が数多く持ち込まれる。 これは「最後の鑑定人」の異名を持つ土門が解明した事件の記録である。 ◇ 人間は嘘をつく生き物だ。 若手弁護士の相田直樹は浅いキャリアであるにも関わらず、近頃その思いがますます強くなる一方だった。 相田は現在、かつての交際相手の女性を殺害したとして起訴された北尾洋介の弁護を担当している。 洋介は犯行を否認しているが、被害者の体内に残されていた体液のDNAが洋介のものと一致。状況は極めて不利である。 一縷の望みがあるとすれば、防犯カメラに写っていた犯人の映像が不鮮明で、洋介であることを証明できないことぐらいだ。だがそれとて裏を返せば、洋介でないことの証明にもならないということになる。 相田は先輩弁護士の勧めで土門鑑定所を訪ね、防犯カメラ映像の解析を頼むことにしたところ……。 (第1話「遺された痕」) 全4話。 * * * * * 岩井圭也さんの作品は初読みでしたが、本作は骨太で読み応えがありました。 何より主人公の土門誠という鑑定人の魅力によるところが大きかったと思います。 長身で痩せ型。眼光は鋭く愛想笑いなどしない。 無駄口は利かず、話すのは必要なことだけで、当然、人付き合い等は苦手で不器用。 ただし、鑑定人としての見識とスキルは高く、他の追随を許さない。 その実力と重厚な人柄で、多くの関係者の信頼を集めている。 まったくシブくてかっこいい。ザ・プロフェッショナルの風格を感じます。 実際、土門が行う緻密な鑑定によって、事実が次々と明らかになっていくところには圧倒されてしまいます。 そんな土門のスタンスの根底にあるのは、「科学は嘘をつかない」という信念です。 科捜研を退職する原因となった冤罪事件を教訓にして、その信念を強くした土門は「鑑定人なら、科学を裏切るような真似をしてはいけない」ということを常に念頭に置くようになりました。 土門はそれ以来、ベストを尽くした鑑定をきちんと表に出し、科学に裏打ちされた分析結果に基づく見解を述べるのでした。 たとえその結果が、組織的に見て、あるいは人情として、好もしくない事態を招いたとしても、土門の姿勢は変わりません。 事実、第2話「愚者の炎」最終話「風化した夜」で土門が鑑定し解明したのは、このまま蓋をしておいてもよかったかも知れない事件の真相でした。 土門鑑定所でただ1人の職員である高倉柊子は、「いかなる事件についても、解明した事実は表に出す」ということに疑問を呈しますが、土門の「事実を選別しない」という姿勢に圧倒されるとともに感銘も受けます。 普段は朗らかでマイペースな柊子が、真剣に鑑定人としての自らの立ち位置について考えるシーンは印象的でした。 事件に絡むすべての人の事情を斟酌して真相を明らかにするかどうかを判断するのは、神にしかできないことでしょう。 1人の人間に過ぎない土門にとっての最善は、ただ粛々と鑑定作業に取り組み、忖度なしに真相を解明することであるのは間違いないと思いました。
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ある事件をきっかけに科捜研を辞め、民間の鑑定所を開設した、変わり者の鑑定人を中心としたサイエンスミステリー。 科学捜査で明らかなる真実はどれも残酷で、どの話もやるせない気持ちになる。
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「科学は嘘をつかない。真実を解き明かすのみ」民間の鑑定所所長の土門は「最後の鑑定人」と呼ばれたかつての科捜研のエース。サイエンスミステリ連作。最後にそれぞれの犯人たちの語りにより事件の背景が浮かび上がってくる。なぜ事件は起きたのかという側面も見れて面白かった。
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鑑定の最後の砦。それで、ついたあだ名が「最後の鑑定人」。科学を武器に、土門誠が真実を追いかける。 土門誠という、凄腕の鑑定人の物語。 天才型の探偵役は、変人だったり、冷たかったり、 とっつきにくかったり…、 という描かれ方をすることが定番のようになっている。 この作品でも、...
鑑定の最後の砦。それで、ついたあだ名が「最後の鑑定人」。科学を武器に、土門誠が真実を追いかける。 土門誠という、凄腕の鑑定人の物語。 天才型の探偵役は、変人だったり、冷たかったり、 とっつきにくかったり…、 という描かれ方をすることが定番のようになっている。 この作品でも、無愛想でとっつきにくい鑑定人が主人公で、 胸の内や、頭の中を、そうそう見せようとはしない。 そういう描かれ方をすると、人間的魅力が乏しくなり、 物語にすっと入りにくくなりそうだが、 この連作短編を読んでいるうちに、とっつきにくさも 無愛想さも、気にならなくなってくる。 それは、鑑定に対するゆるぎない態度から来るものか。 「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは人」という彼の言い分は、 どこかで聞いたことがあるような。 持ち込まれるのは事件とはいえ、あくまでも鑑定、 捜査ではない。 だが、鑑定は、科学的捜査とも言え、 事実を重ね、推理し、真相にたどりつく。 それは、土門だからできることなのだろう。 そして、事件で傷つく人の心に決着をもたらす。 ただ一話だけ、土門自ら外に「聞き込み捜査」に出ている。 人とのコミ力に難ありな彼は、高倉を前に押し出しているところが、 何ともほほえましい。 土門以外、高倉や、弁護士の相田などの登場人物のキャラが なかなかに、じわっと、しみてくる。
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「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」 「最後の鑑定人」と呼ばれ、科捜研のエースとして「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」と言わしめた男・土門誠。 ある事件をきっかけに科捜研を辞めた土門は、民間の鑑定所を開設する。 無駄を嫌い、余計な話は一切しないという奇人ながら、その群を抜いた能力により持ち込まれる不可解な事件を科学の力で解決していく。 (アマゾンより引用)
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元科捜研の土門誠は現在民間の鑑定会社を営むスゴ腕の鑑定人。ドラマ科捜研の女(実は見たことない)の流行りに乗ったか?と思いチョットベタさを危惧したが… ベタ展開と言えばそうなんだが、決して悪くはない出来。その辺が岩井圭也の腕かなぁ。伏線の重層さとか圧倒的感動とかそういうのではないが、ミステリー短編としての丁寧さが安心して読めて心地よい。 なんとなくだが、この1冊は助走部分だという気がしている。シリーズ化して近いうちに結構骨太な長編を書く予定じゃないかなぁ。当たっていれば非常に楽しみ
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これはミステリではない。岩井圭也の作品なのだから。そう思いながら読むと、良さがしみじみと感じられる。人は、どんな屈託を抱えながら生きていくのか。どこまで抱えながら生きていけるのか。それを噛みしめ、測っていく。それが岩井圭也の世界なのだろう。罪への視線。彼の多くの作品を通して感じ...
これはミステリではない。岩井圭也の作品なのだから。そう思いながら読むと、良さがしみじみと感じられる。人は、どんな屈託を抱えながら生きていくのか。どこまで抱えながら生きていけるのか。それを噛みしめ、測っていく。それが岩井圭也の世界なのだろう。罪への視線。彼の多くの作品を通して感じる。
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助手がハーブ水を飲ませる理由が面白い/ ミステリ的な意味では面白味は少ない/ 読者に鑑定知識が無いから、その情報を知っているかどうかってだけの話で/
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『科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です』 〈科学捜査研究所〉を辞めて民間の鑑定所を立ち上げた土門誠。『最後の鑑定人』と呼ばれ、彼が『鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない。科捜研の最期の砦』とまで言われたほどの高い技術と鑑定眼を持つ男。 四話収録されて...
『科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です』 〈科学捜査研究所〉を辞めて民間の鑑定所を立ち上げた土門誠。『最後の鑑定人』と呼ばれ、彼が『鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない。科捜研の最期の砦』とまで言われたほどの高い技術と鑑定眼を持つ男。 四話収録されているのだが、第一話での印象は名探偵キャラにありがちな、気難しくて彼の興味を引く事件でないと引き受けないという設定。 そんな彼が警察や科捜研が下した事実をどう覆すのか、あるいは警察や科捜研すら見つけられない新事実をどう見出すのかが作品の肝となる。 専門用語には着いていけなかったが、物語としては興味深く読めた。 第一話のDNAの話は確か横山秀夫さんの作品にも似たようなものがあったように記憶しているが、全く違う展開だった。 一方でこの話の中で、土門が科捜研を辞めたことに何かしらの事情があることが示される。 第二話では土門鑑定所の唯一の技官で助手で事務員の高倉の目線で描かれる。 第一話同様、事件の真相は苦い。同情の余地はあるがだからといってどうすれば良かったのかは分からない。 その苦さによるモヤモヤを口にする高倉に対し、「鑑定人なら、科学を裏切るような真似をしてはいけない』と断じるブレない土門が描かれる。 そして第三話では、土門鑑定所と警察、科捜研ではなく科警研の三つ巴の捜査が描かれる。 海底から引き揚げられた十二年前に沈んだ遺体。遺体の身元すら分からなかった捜査が、土門と科警研との競い合いで様々な手がかりが見つかっていく。 そしてその手がかりを元に警察の捜査も加速していく。 『科学は嘘をつかない』『私は鑑定結果を読み違えたことなどありません』と絶対の自信をもっている土門だが、一方で科学捜査にも様々な手法があり鑑定結果の解釈にも様々あることも分かる。 ということは、どの手法を取るのか、どういう条件で鑑定するのか、そしてその結果をどう解釈するのかによって結果は違ってくるということではないかという疑問も湧く。 そして最終話。いよいよ土門が科捜研を辞めたきっかけとなった冤罪事件の真相に土門自身が迫る。 土門の下した鑑定結果が、捜査にどう影響を与えたのか。結果的になぜ冤罪事件は起きたのか。そしてその捜査を担当した警察官は何故亡くなったのか。 第三話で土門のプライベートも少し明かされ、この第四話では彼の気難しいキャラ設定にも変化が出ている。それだけ彼にとってもこの事件は大きな影を落としていたということだろう。 だが何よりも、ここまでの第三話で加害者の物語ばかりが描かれていたのだが、最終話では初めて被害者遺族の話が出てきた。 様々な事情があって事件を起こしたのは分かるが、やはり一方的な印象が拭えずモヤモヤが残っていた。 だが最終話に至って鑑定者、捜査員、加害者、被害者遺族という様々な視点から描かれていたのが良かった。 加害者にとっては過去のことであっても被害者遺族にとっては『終わりなんてない』のだ。 この事件と再度向き合った土門がどう変化するのか。また高倉の技官としての成長もみたい。 続編を期待したい。 初めて読む作家さんだったが、他の作品も読みたくなった。
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