僕が死ぬだけの百物語(4) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ユウマの家に漂う違和感の正体が少しずつ見えはじめる。 同時に、既巻では被虐性しか感じられなかったユウマの闇が感じられた。 以下、個人的に面白いと思ったストーリー。 第三十四夜「害霊駆除」 害虫や害獣のように、幽霊であろうと人間の害になるものは駆除されるというストーリー。幽霊を人間が捕まえ、解体し、処理する。幽霊なのだから当然死んでいるが、人間が人間だったものを駆除することに倫理的反発と矛盾を感じる。事故物件が必要以上に注目される昨今で、この発想はなかった。 第三十五夜「ハッピーバースデー」 母の誕生日に帰ってきた娘は、母の嫌っていた娘だったというストーリー。物語序盤、頑なに姿を見せず、声でしかやりとりできない娘は不気味としか言えない。娘を愛せなかった母と、母を愛していた娘のすれ違いが切ない。可愛がっていたほうの娘は、母の誕生日のことなどすっかり忘れて元気に生きている、という皮肉も母の虚しさを助長させている。 第三十八夜「山離れ」 山の中で迷った主人公を送り届けてくれたのは、昔山の中で死んだ兄だったというストーリー。幼いままの兄を山から連れ出そうとすると、兄の身体はボロボロと崩れ落ちるシーンは、あの世の領域たる山をイメージさせる。山を神域とする山間信仰を背景に、あの世の住人となった兄との不思議なつながりに少し胸があたたかくなる。
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