花と恋して の商品レビュー
兎にも角にも、著者である上村先生が牧野富太郎博士を深く深く愛し、敬っておられるということは余す所なく伝わってきました。 同時に、不肖ながら牧野博士の事績について本当に全く知らなかった私にとっては全ての記述が新鮮で、エネルギーに満ち溢れた心熱くするものでもありました。 自らを「植...
兎にも角にも、著者である上村先生が牧野富太郎博士を深く深く愛し、敬っておられるということは余す所なく伝わってきました。 同時に、不肖ながら牧野博士の事績について本当に全く知らなかった私にとっては全ての記述が新鮮で、エネルギーに満ち溢れた心熱くするものでもありました。 自らを「植物の精」と称し、植物研究に文字通り人生を捧げた牧野博士はたいへんにピュアな人だったのだろうと察せられ、一方で研究者間における人間関係の機微だとか金銭管理といった俗事には全く疎く、現代の価値にしておよそ一億円という大変な金額の研究資金援助をしてくれた大恩人・池長孟氏との関係にしても上手く保つ事が出来てはいなかったようだ。 比較的に裕福な家庭環境に生まれ、若かりし頃は家の援助で湯水の様に研究資金が都合出来た。 やがて家業は傾いていくが、博士の金銭感覚は変わらずにおり、給料以上の家賃の住まいを借りてはとんでもない量の書籍・資料を買い集めて(しかも高価な同じ本が何冊かあったらしい)、着る物や使う物にも妥協はせず、人力車で研究室に通い、子沢山だったというからそりゃ金がいくらあっても足りないに決まっている。 壽衛夫人の内助の賜物、というのは簡単だが想像を絶する様な知られざる苦労があったことだろう。むしろ、夫人は日々どこからどうやって金策していたのかに興味津々。 著者が牧野博士に傾倒するあまりに礼讃する表現がちょっとくどく感じられる部分は多々あるが、ともあれ、日本植物学の父とも呼ばれる偉業を成した牧野富太郎という人物についてみっちりギッシリと詰まった一冊。 博士の故郷、高知県佐川町のお墓の隣に建つ碑文「草を褥に木の根を枕 花と恋して九十年」が余りにも名文。書いたのが誰なのかはちょっと調べただけでは判りませんでしたが…。 来春の朝ドラが楽しみになりました。 2刷 2022.11.3
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