5分後に最凶のラスト の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
かつて付き合っていた女性からバレンタインデーにクッキーと革の手袋が届く。別れたあとも友人として関係を続けていた彼女からの贈り物に疑念も抱かずに受けとるが……。 *** こちらは先日読んだ5分間シリーズとはまた別の出版社。エブリスタ編という事なので、小説を投稿するサイトエブリスタで開催されたコンテストから選出された話が掲載されいている様子。 16万作という膨大な応募作品から狭き門をくぐり勝ち抜いた、10作品。 帯にサイコホラーとある通り、人間の狂気が存分に振るわれている作品が多かった。人に裏切られ、欲望にまみれ、恨み、妬み……。負の感情とはなんと恐ろしい事か。しかも、その多くがひた隠しにされており表面的にはその狂気はくみ取れない。しかし、確実に少しずつ水に毒を混ぜているかのように平和な日常を侵食していく。標的となった人物はその事実に愕然とするのだが、気が付いた時にはすでに遅く、逃げ場など用意されていないという有様が恐ろしかった。 中でも、ぞっとしたのは「家政婦が見た奇妙な夫婦」と「ナズナと電鈴」。 この二作品は、女性の愛憎が水面下で絡まりあい、極まっていく様をまざまざと見せつけられたので怖かった。 これなら面と向かって泣き喚かれたり、怒鳴り散らされた方がましだ……。企みごとをしている様子なのだが、その企みごとを仕掛けられようとしている当事者たちは何もわかっていなくて、やがて起こりえるであろう悲劇を、読者として予想している側からしたら非常にハラハラした。 男女のもつれといえばもう一つ、「Future prophecy」もなかなかに怖かった。これは、先ほどタイトルを上げた作品とは逆の展開になるのだが、悲劇の渦中にあった人物が、逆襲のために行った行動によって更に悲劇に見舞われるのは読んでいてちょっと胸が痛んだ。他にも様々な作品があったが、どれも面白かった。中には設定がちょっと特殊すぎて5分間で読み終われるというコンセプト内で終わらせるには、少々もったいないなと感じる作品もあった。それぞれの作品にそれぞれの作者の個性が見えて面白いのが、こういった作品集のいいところだと思う。5分間シリーズは様々な出版社から出ているのでこれからも読み続けていきたい。
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