犠牲者意識ナショナリズム の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
戦争を語ることはむずかしい。ぼくは「反戦平和」を訴えたいが、ならばその結論あるいは前提を導くべく戦争のリアリティをつぶさに見つめる必要がある。歴史のダイナミズムの中で日本がどのように戦争に巻き込まれたか。あるいはどのように乗り出していったか。本書の試みはそうしたダイナミズムをグローバルな視点から、つまり国境を果敢にまたいだ視点から俯瞰する性格を持つ。だが、それだけにとどまらず各国が置かれていたローカルな歴史の特性を理解しようと深堀りする慎重さをも崩しておらず、したがって実に力の入った論述を読ませて唸らせる
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今年一番の考えさせられる本でした。記憶の戦争、犠牲者意識ナショナリズム。戦争の記憶がグローバル化されるなかで個人の原罪までも行き着く事が理想だけど…
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大変フラットな目線で、各国で発言した犠牲者意識ナショナリズムの形態を読み解く名著。 去年、昭和天皇と、ヒトラーとムッソリーニを並列したウクライナのTwitterが”炎上”しましたけれど、では枢軸国たる日本の、ヒトラー枠って誰なのか、誰が主体で戦争始めたのかが分からないのはなぜなの...
大変フラットな目線で、各国で発言した犠牲者意識ナショナリズムの形態を読み解く名著。 去年、昭和天皇と、ヒトラーとムッソリーニを並列したウクライナのTwitterが”炎上”しましたけれど、では枢軸国たる日本の、ヒトラー枠って誰なのか、誰が主体で戦争始めたのかが分からないのはなぜなのか。日本が二次大戦を始めた、というよりも、なんとなく戦争が始まって、原爆で悲惨に終わったような気がしてしまったように物語化してしまうのはなぜか…犠牲者意識ナショナリズムの補助線ですっきり見えてくる。
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360°、死角なく論理で武装したようなぶ厚い1冊。とにかくどの方面にも徹底して「君たちは本当にただ被害者であるだけなのか?」と厳しい視線を投げかける。ポーランド、ドイツ、イスラエル、韓国、日本……。本来加害と被害は表裏一体のはずなのに、自国に都合の良い被害者としての記憶だけを利用...
360°、死角なく論理で武装したようなぶ厚い1冊。とにかくどの方面にも徹底して「君たちは本当にただ被害者であるだけなのか?」と厳しい視線を投げかける。ポーランド、ドイツ、イスラエル、韓国、日本……。本来加害と被害は表裏一体のはずなのに、自国に都合の良い被害者としての記憶だけを利用して被害者意識ナショナリズムに浸っているんじゃないのか?と圧倒的な論拠をもって突き付けられるド迫力がたまらない。 忖度やノリや空気やキャラクターばかり求められる今の社会の中で、そういったものを全く削ぎ落として徹頭徹尾冷静な、いや冷酷とも思える程の目線で本質を見極めようと試みるその誠実さに幸あれ。
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東京新聞2022917掲載 評者: 栗原裕一郎(評論家) 日経新聞2022101掲載 評者: 板橋拓己(東京大学大学院法学政治学研究科教授,国際関係論,国際政治史)
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ポーランド、ドイツの事例が豊富で、日韓とはまた違った経過を見せており興味深い。 一点気になったのは「犠牲者」「被害者」の語の使い分けで、日本語のニュアンスではむしろ前者の方が軽い意味で使われている印象がある。
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冷静に中立的な立場をとる筆者のどの国、どの団体、どの民族にも忖度しない姿勢には驚かされる。日本の加害性を指摘したかと思いきや、犠牲者の記憶を利用して立ち回る韓国に対する指摘も怠らない。個々の事例から犠牲者意識ナショナリズムがどのように作られているのか、またどのような規則があるの...
冷静に中立的な立場をとる筆者のどの国、どの団体、どの民族にも忖度しない姿勢には驚かされる。日本の加害性を指摘したかと思いきや、犠牲者の記憶を利用して立ち回る韓国に対する指摘も怠らない。個々の事例から犠牲者意識ナショナリズムがどのように作られているのか、またどのような規則があるのか、膨大な知識量で示されている。 私は日本人なので日韓関係の話には多少見聞がある。しかし本書を読んだことによって、ポーランドとドイツの関係を犠牲者と加害者という単純な対立と捉えていた自分の知識不足を恥じるばかりである。 戦争責任を背負った日本人としてグサグサくる内容もたくさんあるので覚悟して読みましょう。
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