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平家物語の彩[いろ] の商品レビュー

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2022/08/18

アニメ『平家物語』の美術画集です。 作中ではキャラや物の作画の背景となっていた画が、遮蔽物なしでそのまま観賞できます。 私は本アニメが本当に気に入っているのですが、本作では美術がとても印象的でした。 例えばp.19のような桜(まばらな桜花、まだ茶色っぽい若葉、地衣類でまだらにな...

アニメ『平家物語』の美術画集です。 作中ではキャラや物の作画の背景となっていた画が、遮蔽物なしでそのまま観賞できます。 私は本アニメが本当に気に入っているのですが、本作では美術がとても印象的でした。 例えばp.19のような桜(まばらな桜花、まだ茶色っぽい若葉、地衣類でまだらになった樹皮)のモチーフは、構図を変えて何度も登場しています。 江戸時代に開発されたソメイヨシノに比べたら華やかさは劣りますが、逆に清楚な感じがあって大好きです。 あるいはp.189の維盛入水の背景ですが、夕景の赤紫色の空と海が溶け合って、維盛が死に際して念頭に置いていたであろう西方浄土を想起させます。 この背景一枚で、維盛の感情と浄土思想が一体となって飛び込んでくる、アニメだからこそ可能な強い表現です。 テキスト部分は、次の3部に分かれます。 1 山田監督× 久保美術監督の対談 2  久保美術監督の背景美術注釈 3 歴史監修の佐多先生の解説 特に2の注釈は必見です。 各話バラバラに登場した美術を、花、海、式典、襖絵と屏風絵、雪、夜、山、炎、空、庭の10テーマで串刺しにして解説しており、普通にアニメを鑑賞しているときには立てなかった視点が得られます。 また、3の解説は美術とあまり関係がありませんが、狩衣と直垂の違いなど主に服飾の面から視聴時は見逃しがちな違いに言及していて、歴史好きには興味深いです。 アニメの美術は、監督、各話コンテといった演出側の意図と、お名前も特定できない描き手の側の意図、それに品質管理の側面もあります。また、一瞬で次のカットに移ってしまう画も多いですから、ある作家の絵画を美術館で観るものとも違います。 しかし、たまにはこうして画集でじっくり観賞するのも面白いですし、そもそもそうして観賞したいと思える作品に出会えたのは本当に幸福なことだと思いました。

Posted byブクログ