アフガニスタン・ペーパーズ の商品レビュー
調査報道のお手本のような本著。3人の大統領がどのようにアフガニスタンと向かい合ってきたのか(向かい合ってこなかったのか)を、ファクトを基に描き出した本作。 他の国の行動を力で変えさせることの愚かしさを、まざまざと見せつけられた本書。
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ワシントン・ポストの調査報道記者が、2001年米国同時多発テロへの報復としてアフガニスタンへの空爆が開始されてから、2021年に駐留米軍が撤退するまでの20年間続いた「出口の見えない戦争」の実態を克明に暴き出した一冊。 同紙が独自に入手した情報からは、そもそも戦争の目的が明確に...
ワシントン・ポストの調査報道記者が、2001年米国同時多発テロへの報復としてアフガニスタンへの空爆が開始されてから、2021年に駐留米軍が撤退するまでの20年間続いた「出口の見えない戦争」の実態を克明に暴き出した一冊。 同紙が独自に入手した情報からは、そもそも戦争の目的が明確にされず、特定の国に属さない一テロ組織であったアル・カーイダの撲滅がタリバーン政権の打倒と混同され、実質的にNATO軍が新たな国造りを担うも、長年の歴史や文化に敬意を払わず欧米式の復興政策を押し付けた結果、新政府や国民との関係はこじれ、新たに設立した統治機構や軍・警察は脆弱なまま、的外れな用途に注ぎ込まれた資金は汚職蔓延を生み、軍や民間の犠牲者が増え続ける中では、タリバーン復活はむしろ必然的な流れだったことが読み取れる。 このような状況が続いた20年間、米国政府から一般国民には成功や勝利といったメッセージのみが発せられてきたことに驚かされるが、そこには真実を明らかにすることがリスクになる構造があり、当事者たちには恐らく、あからさまな隠蔽という意識はなく、事実を自らの都合に合わせて「解釈」し、外向きのメッセージを「調整」する強いインセンティブが働いていたと思われる。数年で入れ替わる様々な階層の個人が同様の「解釈」と「調整」を繰り返す中で、国全体が袋小路に追い込まれる状況は決して対岸の火事とは言えず、一般企業としても学ぶべきことが多い。
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政権側がどのようにアフガニスタンで戦争をしてきたのかを明らかにするルポ。戦争というものは古今東西、国がいかに国民や世界を騙せるのかにつきるのかもしれない。もちろん情報統制も戦術のひとつなので致し方ないのだが。正直なところ、米国がアフガニスタンで20年も戦争を継続していたという認識...
政権側がどのようにアフガニスタンで戦争をしてきたのかを明らかにするルポ。戦争というものは古今東西、国がいかに国民や世界を騙せるのかにつきるのかもしれない。もちろん情報統制も戦術のひとつなので致し方ないのだが。正直なところ、米国がアフガニスタンで20年も戦争を継続していたという認識はなかった。これも情報操作のひとつだろう。米国は敗戦したと考えるのが妥当だろう。本書を読むと、米軍のアフガン撤退直後にタリバンが復権したのか理由が分かる。そして、タリバンの復権が米国のこれまでのアフガン戦争の20年を水泡に帰した重要性を理解できる。本書を読んで、現在のウクライナ戦争に頭が向く。この戦争はどこまで真実がつたえられているのだろうか。
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アフガンが失敗した原因 ・民主主義が根付いていないところにいきなり大統領選挙から始めた ・目的を定めないまま戦争を始めた
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「あの戦争は何だったのか」 こう思わずにいられなかったのは、昨年米軍がアフガニスタンから撤退した時と本書のレビューを読んだ時だった。 ブッシュ政権が聖戦だと言わんばかりに宣戦布告、しかし泥沼化が進む割には何のゴールも見えず。政治や海外情勢に疎くても、それくらいは自分も分かっていた...
「あの戦争は何だったのか」 こう思わずにいられなかったのは、昨年米軍がアフガニスタンから撤退した時と本書のレビューを読んだ時だった。 ブッシュ政権が聖戦だと言わんばかりに宣戦布告、しかし泥沼化が進む割には何のゴールも見えず。政治や海外情勢に疎くても、それくらいは自分も分かっていた。 本書のタイトルはベトナム戦争に関する隠蔽資料「ペンタゴン・ペーパーズ」をアフガニスタン軍事侵攻版としてもじったもの。 アフガン版の情報開示に踏み切ったのはワシントン・ポスト紙。アフガニスタン復興担当特別監査官事務所なる組織が、戦争に関わった数百人(高官から兵士まで)に取材を行ったという情報を報道記者だった著者がキャッチ。連邦訴訟まで起こして何とか公開に至ったという凄まじい経緯である。 他で入手した情報も交え、あの20年戦争とは何でどこが間違っていたのか、3代の歴代大統領がどのように隠蔽していたのかがここで赤裸々に明かされる。 要は見切り発車の開戦だったんだな。 目標が定まらず、しまいには戦う相手や任務の内容まで曖昧になっていったのが、戦争が長引いた主な原因であった。(開戦当時、侵攻先の知識はほぼ皆無で、タリバンとアルカイダの区別すらついていなかったのには流石にゾッとした) 「われわれがアフガニスタンに行ったとき、誰もが1、2年ですむだろうと話していた」 やがては軍部も、重要な事実(副大統領が現地の空軍基地にて自爆テロに巻き込まれかけた件etc.)を隠蔽し、「われわれは優勢だ」と虚言を繰り返すようになる。 そうした「根拠のない楽観論」が国民から真実を知る術を奪い、膨大な戦費と犠牲を生み出してしまった。(あとどうでも良いけど作戦に怪物の名前を付け過ぎ笑 「メデューサ作戦」とか) 関係者の数があまりに多く、いきさつを追うのに苦労したが、どの人物も役目を負う者にしては信じられないくらいに手探りだった。もっと早く戦争を終結或いは軍を撤退させる事も出来たのに、見す見すそのチャンスを逃してきた。 また本書には民間人の証言が一切登場しなかった。(アメリカ側の視点で書かれたのも大きいかもしれないが) 戦争の発起人であるアメリカ人たちですら戦う意味を解していなかったのに、訳も分からず日常を奪われた民間人からしたら、死傷者数でしか生きた証を残されないのはたまったもんじゃないのでは?と一人息巻いてしまった。(実際国連は2009年になってようやくその数を集計する調査に乗り出している) そうは言うもののここまでの公開に持ち込んだ、著者の勇気とジャーナリズム精神には感嘆している。同時に「彼の祖国も、過去のどこかで一歩引く勇気を示してさえいれば…」と遺憾に思いながら、ラストの描写を見送った。
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この緻密な報道記録を読むまでは、私もアメリカと同じミスを犯していた。ターリバーンとアル=カーイダを同じように見做すということである。 これだけ多くの軍関係者が、大国アメリカの看板の下で、ほぼ一つのことを主張していたというのは驚くべきことである。それはつまり、"アメリカ...
この緻密な報道記録を読むまでは、私もアメリカと同じミスを犯していた。ターリバーンとアル=カーイダを同じように見做すということである。 これだけ多くの軍関係者が、大国アメリカの看板の下で、ほぼ一つのことを主張していたというのは驚くべきことである。それはつまり、"アメリカの無知が、自国民も含めて多くの命を奪い、意味のない戦いを生んだ"ということである。
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読売新聞2022821掲載 評者:森本あんり(東京女子大学学長,国際基督教大学名誉教授,神学者) 日経新聞202293掲載 評者:高橋和夫(放送大学名誉教授,国際政治学者 forsight2022917掲載 評者:瀬谷ルミ子(認定NPO法人REALs理事長,元国連職員) 読売新聞...
読売新聞2022821掲載 評者:森本あんり(東京女子大学学長,国際基督教大学名誉教授,神学者) 日経新聞202293掲載 評者:高橋和夫(放送大学名誉教授,国際政治学者 forsight2022917掲載 評者:瀬谷ルミ子(認定NPO法人REALs理事長,元国連職員) 読売新聞20221225掲載 評者:森本あんり(同上)
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