ロシアの星 の商品レビュー
ユーリー・ガガーリンを主軸に、実在の人物と、創作の登場人物が入り乱れる連作短編集。 ソ連の英雄に祭り上げられた彼を、国籍も時代も関係性もバラバラな多くの登場人物の視点から見て描かれているのが斬新だった。 歴史小説の側面も強いが、ユーリー・ガガーリンという国家に押しつぶされた一人の...
ユーリー・ガガーリンを主軸に、実在の人物と、創作の登場人物が入り乱れる連作短編集。 ソ連の英雄に祭り上げられた彼を、国籍も時代も関係性もバラバラな多くの登場人物の視点から見て描かれているのが斬新だった。 歴史小説の側面も強いが、ユーリー・ガガーリンという国家に押しつぶされた一人の飛行士に対する哀歌にも思える。 個人的に好きだったのは一番初めの話。 ロシア系アメリカ人の子供と、ロシアから移住した彼の祖父が、ソ連の宇宙船の競売を見に出かけていく。ガガーリンや星の街の話を孫に語り聞かせる祖父は、嘗ての祖国の虚飾をよく知る人間でもある。それと同時に、彼は同僚たちと成し遂げた偉業を誇りに思っていることが分かる。 ガガーリンの神話は少年に受け継がれ、次の世代にも続いていく。最後までこの本を読んだ後にこの話に戻ることで、ガガーリン自身も少しでも救われる何かがあるのではと思わずにはいられなかった。
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1961年4月12日に世界初の有人宇宙飛行を成し遂げたユーリー・ガガーリン。そのガガーリンについて実在の人物や架空の人物を織り交ぜて描かれた物語。実在の人物はガガーリンの妻や娘、宇宙飛行士ゲルマン・チトフ、ヴォストークの設計技師長コロリョフ、サラトフの農村の女性、架空の人物は星の...
1961年4月12日に世界初の有人宇宙飛行を成し遂げたユーリー・ガガーリン。そのガガーリンについて実在の人物や架空の人物を織り交ぜて描かれた物語。実在の人物はガガーリンの妻や娘、宇宙飛行士ゲルマン・チトフ、ヴォストークの設計技師長コロリョフ、サラトフの農村の女性、架空の人物は星の街の元医師、下水清掃員のファン、警察署長と孫娘、フランスのジャーナリスト、工業専門学校の同窓生など。それぞれの直接的や間接的な関連エピソードが連作短編で綴られている。登場人物同士が時と場面を変えて出会い繋がることもあって、物語ならではの楽しみもある。 関わる人物を通してガガーリンの気持ちや考え、行動、意志を知ることができるが、それと共に当時のソ連の環境、英雄の扱い、宇宙開発計画の実情なども知ることができる。宇宙飛行を境に、ガガーリンの夢と希望は耐え難い現実に侵されていったということも。英雄と祭りあげられたがためのガガーリンと家族の苦悩、最後までただ「飛びたい」と願ったガガーリンの心と不安や後悔に押し潰されそうな妻の心、世界初の有人宇宙飛行に成功した人物の光と影を堪能した。
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