伊勢 風の里 カラスの写真日記 の商品レビュー
この写真集から見える郊外の姿は何も伊勢に限ったことではない。全国どこにでも見られる風景である。著者はたまたま伊勢の郊外に移り住んだことからここにスポットを当てる。「田んぼのイベント毎にやってくるカラス」はその田んぼがどんどんなくなっていくことに胸を痛めているのだろう。「神風の」は...
この写真集から見える郊外の姿は何も伊勢に限ったことではない。全国どこにでも見られる風景である。著者はたまたま伊勢の郊外に移り住んだことからここにスポットを当てる。「田んぼのイベント毎にやってくるカラス」はその田んぼがどんどんなくなっていくことに胸を痛めているのだろう。「神風の」は伊勢にかかる枕詞である。伊勢をくまなく吹く風にカラスは身をゆだねているようにも見える。そんなカラス目線で郊外を歩く著者の思いがページのところどころに配される「ぼやき」に込められている。
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§悲しくなるほど空虚 社会派で、「平和と民主主義」云々を言う団体から出た本なので、さぞかしテーマ性を持った作品なのだろうと期待したが、空しくそれは裏切られた。 プロに対して失礼とは思いますが、写真はお上手です。構図やタイミングだけでなく、白黒の諧調性とか完璧で、そこいらの写真家気取りとは訳が違う。 白黒で他人様の肖像を堂々と撮るスナップ、年配の方の肖像を美しく撮るという点に於いては「社会派」らしい「感じ」はする。でも作り笑いとかカメラ目線も散見。 これはスナップとしては致命的である。 しかし、「人々に何が何でも伝えたい」と言うモノと熱意が全く感じられない、ただフラフラ散歩しながら写真を撮っている所謂普通のアマチュアと大差ない。 そういう写真が見たければネットサーフィンで幾らでも只で見る事が出来る。 繰り返すが、訴えたいモノを全く持たないと言うのが致命的過ぎる。 タイトル、「風・・」写真からは風は心情的にも全く感じられない。 キャプション、「瀕死の風・・・今日は何人死んだ・・・」これは「風が死んだ」と言う意味らしいが、墓地の写真のキャプションである。ウクライナや中東では今日も人間が何人も命を奪われている。 呑気も度を過ぎると無神経となる。これが今日の「社会派」なのか?超絶悲しくなった。 或いは、あらゆる文化に於いて、無内容が権威づけられる事に私は恐怖さえ覚える。それはその文化の堕落、衰退、消滅の道に思えるからだ。 あと、写真集は立ち読みで内容が確認できる書店で購入し、通販で買わないこと。そうすればこうした散財は防げる。 補遺 著者の強烈なシンパサイザーか或いは出版元の中の人と思えるレビュアーが本書を擁護している。 そこで使われる用語「神風」は伊勢にかかる枕詞であるそうだが、そんな高校の古文で扱う様な話では無く、多くの人々にとって100年経たない、あの忌わしい戦争の「特攻隊」への連想が強い言葉である。 繰り返すが、これで著者はキャプションに「今日は何人死んだ」と書くのであり、「社会をリアリズムの眼で捉え」「平和と民主主義に寄与する」(ネットで直ぐに分かる)「社会派」である出版元の写真集と言うにはかなりの無理がある。 著者とこのレビュアーの「戦争とそれによる人の死に対する不真面目さ」が、はからずも意外な所から露呈した感がある。むしろ私の方が「ため息」である。 補遺2 >無内容が権威づけられる事に私は恐怖さえ覚える。 調べると著者は出版元の理事に就任された。どうりで「中の人」と思しきレビュアーが必死で擁護する訳だ。 「無内容と戦争への無反省」が「権威付けされる」どころかある種の権力になる事がどんなに恐ろしい事か。 戦後数十年に渡って作り続けられる「好戦的サブカルチャー」と同じファシズムに繋がる危険な流れに思える。 検索キーワード「日本リアリズム写真集団」
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