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下り坂のニッポンの幸福論 の商品レビュー

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2022/09/17

一気読み。 「撤退論」に続き、下り坂の日本でどう私たちは「降りて」暮らしてゆくか、を内田樹と想田和弘が語る。 牛窓で暮らす想田和弘は地方の里山で暮らすことを実践しており、それが時間感覚の転換をする生き方の実例として紹介される。 正直、想田和弘は、「精神」などの映画は好きだが、週...

一気読み。 「撤退論」に続き、下り坂の日本でどう私たちは「降りて」暮らしてゆくか、を内田樹と想田和弘が語る。 牛窓で暮らす想田和弘は地方の里山で暮らすことを実践しており、それが時間感覚の転換をする生き方の実例として紹介される。 正直、想田和弘は、「精神」などの映画は好きだが、週刊金曜日での瞑想の連載くらいから、大丈夫かな?と思うところがあった。(この対談を読んでもその気持ちは変わらず) 内田樹がその懐に想田和弘をどう包み込んでいくか、それがこの対談の読みどころでもある。 内田樹も武道家であり、神道や仏教に親和性もある人なので、方向性としては同じところを向いているなと思う。 しかし、圧倒的に内田樹は内田樹で、そのリアリストとしての不動さで、想田和弘を圧倒している。 最後の章は、一生懸命猫のナワバリについて話す想田和弘に対して、苦笑しながらも内田樹が優しく理解してあげているなと、思いつつ読んだ。 といったいった二人の資質の違いはあれど、この下り坂をどう降りていくかという方向性が同じなので、対談は示唆に富むことが多かった。 高齢化・少子化によって過疎が急激に進行しているところは事実上『居住不能』になり、公共交通機関は止まり、学校や病院は統廃合され、警察や消防のような行政機関も撤収。それをビジネスチャンスと思って生態系の保全や地域住民の健康の配慮などはなされなくなっていくだろうという未来予想。 総務省の中位予想でさえ、2100年には日本の人口は5000万人を切るのであるから、当然過疎の問題は喫緊の課題である。 だからこそ人口の分散を促す地方移住をし、里山を復活させようというのが、この対談で二人が主張するところのものだ。 具体的でわかりやすく、そして、なんだか和やかで楽しく、いい対談だった。 そして、内田樹がやっぱりすごくいいことを言うのです! カウンター的な国民の動きはバイオリズム的に必ず来るだろうから、その種火を守っているのだ、という発言やら、 「忍耐力がないというのは、重要な資質」で、「無意味なことに耐えられないことは生物として健全だ」し、センサーの感度が高いという発言やら、 「暇と退屈が創造性の源泉」だということやら。 内田樹ってすごいなと思う。相手に届く発言をする人だなと。 そういう意味でこの読書は楽しく、この本はよき本だった。

Posted byブクログ