誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課 の商品レビュー
弱者のための社会福祉を支える、市役所職員さんの静かなる闘争と、そして必死に生きる市民達の思いやそこに至る経緯がぎゅっと詰まったドキュメンタリーのような作品。公の機関では本当にいろんな事情の人を相手する。その大変さに脱帽だし、わたしもちょうど生活保護を考えて自分の自治体の窓口に電話...
弱者のための社会福祉を支える、市役所職員さんの静かなる闘争と、そして必死に生きる市民達の思いやそこに至る経緯がぎゅっと詰まったドキュメンタリーのような作品。公の機関では本当にいろんな事情の人を相手する。その大変さに脱帽だし、わたしもちょうど生活保護を考えて自分の自治体の窓口に電話したけど、とても優しくて、心がすこしおだやかになった。いろんな話を聞いて、どんな人にもやさしく、本当に公的援助が必要か、必要ならどんな援助が必要かを判断しつつ、傾聴するのは対応をするのは大変だろうに、真摯に話を聞いてくれた。ドラマ「マザー」で冷たくあしらわれるイメージだった生活保護の現場のイメージを大きく変え、市民のために働くその先駆けとなった自治体ならではの作品。このマインドは、ぜひみんなで共有したい。共有できれば、世界は、日本は、もっと優しい国になるはず。
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「誰も断らない」 決して無理をする訳ではなく、自分たちの限界を知っているからこそできる連携の形がある。 こんな風に自然と周りが助けてくれるチームづくりができたらいいな。
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「生活保護制度の存在は知っていたが、生活困窮者自立支援法という法律ができたことも知らなければ、生活保護とは別の第2のセーフティネットとして自治体が自立相談支援事業を進めていることも、自治体や民間団体が困窮者の自立に向けて奔走していることも知らなかった。…無邪気に「知らない」「知ら...
「生活保護制度の存在は知っていたが、生活困窮者自立支援法という法律ができたことも知らなければ、生活保護とは別の第2のセーフティネットとして自治体が自立相談支援事業を進めていることも、自治体や民間団体が困窮者の自立に向けて奔走していることも知らなかった。…無邪気に「知らない」「知らない」と書いているが、正確に言えば、「見えていなかった」ということだと思う。」 「今回、相談者だけでなく、支援する側のヒューマンストーリーを書き込んだのは、様々な思いを抱えて支援する人々の存在を伝えたかったためだ。同じような使命感を持って活動している人は大勢いるだろう。生活困窮の実態だけでなく、本書を通して、そういった人々にも目を向けるきっかけをつくれればと考えている。」 ー本書エピローグより 本書はタイトルにあるように、神奈川県座間市生活援護課の日々の奮闘、困った人を「誰も断らない」という信条のもと、NPO法人など様々な所と連携して支援している実態を取材したものである。 事例とともに、一つとして同じように困っている人はいない、不幸は一つとして同じ形をしていない、そのような家庭や事情を抱えた人々に対してどのような包括的な支援を行っているかが豊富に書かれており、非常に読み応えがある。 読みながら、自治体がこのような支援をすることができるのかと感動すら覚えた。このような自治体が増えれば、このような支援のあり方を模索する人たちがこれからも居てくれれば、生きていく中で希望が持てる。読んでいて、そうも思える。 また、支援する側が一方的に支援される側に与えるだけではない。 支援を受ける人たちから学ぶこともある。 座間市生活援護課の課長である林さんは、支援を受け、施設に通う若者と「なぜ働くのか」ということを話し合う機会があった。 その時とりわけ重い障害を抱える若者が言った言葉。「それが、僕の仕事だから」。 この言葉に、林さんは「人間には、それぞれ得意なことと不得意なことがある。何でも器用にできる人もいれば、一つのことに注力するのが得意な人もいる。今の世の中は生産性や創造性という言葉で人間の能力に優劣がつけられているが、それぞれの場所でできることに全力を尽くせばそれでいいはずだ。」という当たり前のことに気付かされる。 読んでいて、なぜか一番印象に残った言葉だ。 それぞれの場所でできることに全力を尽くす。 そこに全ての本質がある気がしたのだ。 最後の、座間市の林さんと、林さんが座間市の連携の形を作り上げるうえで参考にした滋賀県野洲市で活躍した生水さんとの対談も見逃せない。経験豊富で、福祉に全力を尽くしてきたお二人の言葉には含蓄がある。 このような方々がいることに、福祉に希望を見出すことができ、また福祉というものに以前にも増して興味が湧いた。 ぜひみなさん読んでほしい。 目次はブクログさんが紹介ページで書いてくれているので、今回は割愛させていただく。 もっと福祉について知りたい、学びたい。 そう思わせてくれる一冊なので、本当にぜひ読んでほしい。
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これだけ幅の広い活動が行政、民間 絡み合いながら出来るのか。10万人の都市というコンパクトさだからなのか。舌を巻きました。 数年交代ではなく、魂が入って、じっくり腰を据えて取り組めている。座間市の人事ってどんな感じなのだろうな。
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行政でここまでできるってすごい。 私もなんだかんだで福祉に携わって8年くらいにはなるが、同じケースはひとつとない。行政も地域も医療も、それぞれの立ち位置で仕事したけど、掘れば掘るほど様々な事情で苦労している人がいて、その支援のために使える決まった制度なんてほんの僅か。多くはその制...
行政でここまでできるってすごい。 私もなんだかんだで福祉に携わって8年くらいにはなるが、同じケースはひとつとない。行政も地域も医療も、それぞれの立ち位置で仕事したけど、掘れば掘るほど様々な事情で苦労している人がいて、その支援のために使える決まった制度なんてほんの僅か。多くはその制度の隙間を縫うように、なんとか組み合わせてそれらしくしているだけ。もどかしい思いもたくさんしたし、仕方ないと割り切らなければならないこともたくさんあった。自分の無力さに愕然とすることも多々ある。今も。常に。 だけどそれは、組織、制度とはこういうものだから、と諦めから入っていた自分の甘さだったのかもしれないな、とこういう本を読むと思う。 まあでも、難しいよね、実際は。 それを、難しいから、と引いてしまわない人が、こうやって新しい道筋を開いていくのだろうな。
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都会だからできるというところもあるけど、志として持つべきものは共通だろう。まず、誰も断らないと覚悟することが大事。
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生活困窮者支援に徹底的に取り組む神奈川県座間市生活援護課の奮闘を追ったルポ。 庁内外の連携をカギとする座間市生活援護課の取組は、福祉行政の一つのあるべき姿と感じた。ただ、福祉の磁石となるおそれや職員の負担は心配になった。具体的な支援事例が生き生きと描かれ、読み物としても面白かった...
生活困窮者支援に徹底的に取り組む神奈川県座間市生活援護課の奮闘を追ったルポ。 庁内外の連携をカギとする座間市生活援護課の取組は、福祉行政の一つのあるべき姿と感じた。ただ、福祉の磁石となるおそれや職員の負担は心配になった。具体的な支援事例が生き生きと描かれ、読み物としても面白かった。
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星は3つとしたけれど、とても良い本なのは間違いない これだけ分断と格差が広がったこの国(言いたいことは山ほどあるけどあえて言いません)に公助が存在する事を改めて認識し、それが精神的な支えになることで救われる人がどれだけいるのだろうと想像するだけでも泣けてくる
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自分のしている地味な仕事にスポットライトを当ててくれた作品。私には、応援になった。 違う世界の人はどう感じるのか知りたい。 同じ仕事をしている人とは、感想を語り合いたい。 本に出てくる方達と連携したいと強く感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課 著者:篠原匡 発行:2022年6月30日 朝日新聞出版 生活困窮者自立支援法の可決と生活保護法の改定を同時に行った時、共産党と社民党が強く反対していた記憶がある。生活保護を受けている人を自立支援の名の下に切り捨ててしまうつもりだ、みたいなことを言っている人がいた。調べてみると、国会での採決が2013年。施行が2015年のようで、その年、主に生活保護を担当していた座間市の生活援護課に「自立サポート担当」が加わったのは、その2015年4月だそうだ。 自立支援事業は幅広く、分かりやすいものでいえば、生活保護予備軍のような人に対し、職や住まい探しのお手伝いなどをする事業。他に、子供の学習支援などたくさんある。日本人は生活保護を受けられる生活困難者でも、抵抗があって受けない人が多いといわれるが、そんな人にも職探しや住まい探しを通じて安定生活を取り戻してもらうことができる。 ただし、生活保護担当と自立支援担当は別部署となり、役所の縦割り弊害が出ている自治体は多い。自立支援担当は相談者が生活保護対象だと判断すると、生活保護担当に引き継いであとは知らん顔ということで生活保護担当サイドからの不満も多いようだ。座間市の場合は同じ生活援護課でその両事業を担当しているため、これがなく救える人もとても多くて幅広い。50人を超える課員のうち、27人が生活保護を担当するケースワーカーといった具合。 「断らない支援相談」を理念に掲げる。外国人でも市外の人でも、座間市とつながった人の相談は必ず聞く。例えば、こんな事例が紹介されている。子供を国に残して夫婦で働きに来ているブラジル人(妻は日系ブラジル人)のペドロ氏。パン工場で働いているが雇い止めにあってアパートも出なければならないと電話が来た。電話は1年前にもあった。その時は座間市の流通センターで働いていて、雇い止めにあった相談だった。そして今回も。だが、パン工場と住まいは埼玉だった。座間ではないので地元自治体の仕事になる。しかし座間市の担当者は彼に「シェルターが空いていますから座間市に来ませんか」と提案した。シェルターは仕事を失った人が一時的に住めるように座間市が確保したアパート。そこに入ってもらい、つまり座間市に住んでもらい、対象者になってもらって職探し、住まい探しを一緒にしませんか?と提案したのである。彼は感激してそうすることにして、座間市でインストラクターの職につくことができた。 生活困窮者自立支援法の問題点は、生活保護者を対象外にしている点だとのこと。だから、生活保護者は生活保護者のままになりがち。自立支援をするならそちらの担当が独自でやらなければならない。 座間市では、縦割り弊害が起きないように役所内の横の繋がりを大切にし、そうなるように工夫をしているほか、外の組織とも一体となって「チーム座間」を作っている。社会福祉協議会はもちろん、生協やNPOなどの企業体も含めている。その中には、フードバンク(賞味期限切れなどで破棄される食品を回収して無料配布)や、引きこもりなどのところに出かけて行って支援するアウトリーチをしている企業体もある。 とまあ、座間市の宣伝パンフのような本を読まされている気分にもなったが、残り3分の1ぐらいから少し面白くなってくる。支援する中での苦労話が出てくる段だ。 孤独死をしている人のアパートに行き、真っ白な顔になった死体を見た話や、何度言っても「はい、分かりました」と素直に理解しているような返事ばかりをするのに全くしようとしない人、全くお金がないのでシェルターに入ってもらっていていた人に、もうシェルターの延長が出来ないと告げると、「はい分かりました、東京のホテルに泊まります」とタクシーで去っていった人・・・ 生活保護など、水際作戦が横行する自治体窓口。僕の地元自治体もその一つだ。生活保護相談はしたことがないが、僕もあることで水際作戦にあったことがある。支配する維新に萎縮し、目が市民から完全にそれている課長級以上の職員に読んでもらいたい一冊ではある。
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