忘却のための記録 普及版 の商品レビュー
2022年出版。 著者は朝鮮が日本の植民地にあった時代に現在のソウルで生まれ、中学3年の時に終戦を迎えて日本に引き揚げようとするが、その際に経験した壮絶な体験談を収めたのが同書である。 終戦を迎えた際の日本人の感覚を、当時まだ中学生だった著者の目を通じて追体験することができる。...
2022年出版。 著者は朝鮮が日本の植民地にあった時代に現在のソウルで生まれ、中学3年の時に終戦を迎えて日本に引き揚げようとするが、その際に経験した壮絶な体験談を収めたのが同書である。 終戦を迎えた際の日本人の感覚を、当時まだ中学生だった著者の目を通じて追体験することができる。 著者は日本(内地)の記憶はほとんどなく、朝鮮半島で育った日本人だが、初めのうちは日本人という誇りに溢れ、朝鮮人を下に見るような感情を露わにしている。しかし、日本政府という後ろ盾を失い、略奪や殺戮の対象となって時には物乞いをしながら生き延びる中で、朝鮮人の日本に対する怨みがどれほど大きいのかを知り、また人間というのは環境次第で落ちぶれることを知るようになる。 引き揚げ体験を書いた多くの本と同様に、無政府状態となった朝鮮半島(北半部)でソ連軍による略奪と強姦、朝鮮人による報復的な略奪に苦しみ、飢餓や伝染病で多くの日本人が死んでいく中、時には親身になってくれる朝鮮人の存在に助けられつつ、著者は南半部への脱出に成功する。 引き揚げの記憶を記した書籍の中でも特に生々しくその過程を記した本だと言えるだろう。
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大戦末期、日ソ中立条約を破棄し侵攻したソ連。 併合下の朝鮮に生まれ、当時半島北部の中学生だった筆者家族は一夜にして避難民となり、内地本土への決死の逃避行を余儀なくされる。 ソ連勢力圏にいた彼らはどこの国の庇護も受けられず、引揚げには1年以上を要した。 飢餓、病気、寒さから落命...
大戦末期、日ソ中立条約を破棄し侵攻したソ連。 併合下の朝鮮に生まれ、当時半島北部の中学生だった筆者家族は一夜にして避難民となり、内地本土への決死の逃避行を余儀なくされる。 ソ連勢力圏にいた彼らはどこの国の庇護も受けられず、引揚げには1年以上を要した。 飢餓、病気、寒さから落命する人が後を絶たず、むしろ帰国できたのが幸運とも思える。 3四半世紀前のソ連兵の蛮行は現代ウクライナで起きていることを思い起こさせるし、半島人の振る舞いは推して知るべし。 今は薄れてしまったこういう記憶も改めて振り返る時期にあるだろう。
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