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稀書探訪 の商品レビュー

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2件のお客様レビュー

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2023/02/05
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※このレビューにはネタバレを含みます

フランス文学やパリの風俗・建築などを研究されている方の古書蒐集エッセイ本。 蒐集趣味の悲喜交々・一喜一憂・紆余曲折、天国と地獄を行き来していらっしゃる…! 私も収集癖・蒐集趣味があるので、ちょびっと共感出来るところもあったり。 いやでも借金してまでは集めませんけども(笑。 2tの紙類とか半端ない。しかも1回の買い物で。 日本では馴染みのない、フランスの出版形態や古書のあり方について垣間見られるのが貴重。 中世の職人ギルドの流れを汲んで、20世紀半ばくらいまで?書籍出版込みの書店と革を扱う製本屋『ルリユール』で分かれてるんですね。 例えば本は最初は仮綴じ本と言われるハードカバーの付いてない簡易表紙の中身だけみたいな状態で出されて、それを読者が買って製本屋に持ち込んで予算に応じて革の外装やマーブル紙などの遊び紙を入れて製本してもらうと。 なので同じ本でも外見が全く違う事が当たり前にあって、どれだけ表装が凝っているかで古書としての値段も変わるそう。 小説本は最初は挿絵がない状態で出版されて、人気が出たら挿絵追加版を出されたとか。 近年ではフランスでも日本のような版元製版が一般的なようです。 ルリユールは工芸製本とも言って、工芸技術として生き残っています。 個人的に好きなのがジュール・ヴェルヌの挿絵本にアルセーヌ・リュパンを連載していた小冊子、19世紀のパリの人々の風俗画。どんな洋服で街中を闊歩していたかとか、馬車のカタログやオペラ座の情景が生き生きと描かれていて素敵でした。 ファッションプレートをもうちょっと見たかった。 モダン・パリの装い―19世紀から20世紀初頭のファッション・プレート (鹿島茂コレクション)という本も出てるので、そちらで補完したいところ。 あと水着でまでコルセットを着けていて、更にバッスルスタイルが流行の時だったようでおしり部分を膨らませている事にびっくり。アヒルちゃん…。 襟ぐりがオープンなのもやっぱりドレス時のスタイルを踏襲してるんだろうなとか。 それから博物画は深く暗い沼なので避けていたらしいのだけど、それでも買ってしまったジョルジュ・キュヴィエ。いいものです。 同時期に読んだ『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』にも"文学や絵画といったジャンルでは、模倣と影響によって作品が生まれる"とあったとおりだなぁとしみじみ思ったのが、ブリア=サヴァランの味覚の生理学→バルザックの結婚の生理学→生理学物ジャンルが発生というエピソード。 古書流通の形式で、『海外在庫』を日本の洋古書店も使ってるのか~と。確か古書系ミステリで知ったシステム。 在庫の本のカタログを古書店同士で持ち合って、お客さんにこれこれこういう本はないものかと聞かれたら、カタログを見て他の書店にあったら電話なんかで押さえて取り寄せて仲介手数料を取ってお客さんに販売するみたいなのだったはず。 今はネットがあるから直接買い付けも言語の問題をクリアできれば楽なのかな~と思います。

Posted byブクログ

2022/07/08

フランス古書に憑かれた作者が数々のコレクションを解説する本。蒐集エピソードを読むも良し、美しい本の写真を愛でるも良し、フランス古書・出版事情も学ぶも良しです。

Posted byブクログ