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アイスランド捜査官エーレンデュルシリーズ第6弾。 あらすじ サマーハウスで女性の首吊り遺体が発見され、自殺だと思われる。亡くなった女性、マリアの夫バルドヴィンは、マリアが病死した母レオノーラとものすごく仲が良かったこと、死んでから精神的にダメージを受けていたこと、心霊的なものにはまっていたことを話す。さらにマリアはレオノーラが何か霊的な合図サインを送ってくれると信じていた。なんとなく不審に思ったエーレンデュルは夫(医師)を調べ始める。そして彼が学生時代に、死後世界体験の実験に参加していたことを知る。被験者を一旦死なせてから生き返らせるというもの。マリアの過去については、父マグヌスの姉も尋ねる。マリアの父は彼女が幼い頃、ボートから転落して亡くなっていた。姉から聞いた話では、当時マグヌスには別の女性がいたらしい。さらに、マリアは女性霊媒師に会っていたことも分かる。霊媒師の名前はマグダレーナ。さらにさらに、マリアとエレオノーラには土地を売った膨大な金額の資産があったことも判明する。バルドウィンには投資で失敗したため、借金を抱えていた。またバルドウィンは別の女性がいて、彼女が女性霊媒師に扮していた。不倫相手カロリーナは学生時代、演劇を勉強していたためなりすますのは可能だった。 エーレンデュルはマリアの父マグヌスが関係を持っていた女性を見つける。彼女の話によれば、レオノーラがマグヌスを突き落とした。それをマリアは見ていたのだ。 ということで結末…マリアは父親の死を負担に感じていた。さらに母親の死が打撃となってどんどん精神を病んでいた。それにつけこんでバルドウィンと愛人は精神的に弱らせて殺害することにした。臨死実験をマリアの同意で計画したが、用意していたAEDは壊れていたし、おそらく息を吹き返したマリアを絞殺した。 また、マリアの事件と並行して、エーレンデュルは過去に行方不明になった人の家族とも交流がある。例えば30年も前の青年ダーヴィッド。母親は亡くなり、父親だけが時たまエーレンデュルの家に訪ねてくる。もう一件、30年ほど前に姿を消した学生の女性ギュードルン。彼女は湖が好きな女の子だった。エーレンデュルは、もしかしたらダーヴィッドとギュードルンは付き合い始めていたのかもしれない、だから他の人は知らなかったのではないかと思いつく。そしてエレンディルはたくさんある湖の中から一つを探し出し、彼ら二人が氷の張った湖の上を車で進み、沈んでしまったということを突き止めた。 エーレンディル個人の話では。最近、娘息子とも交流がある。次男シンドリはアルコール依存症のグループのミーティングに出ている。娘エヴァ=リンドはエーレンデュルに強い口調をぶつけながらも関わってくる。 《感想》 今回は静かに、徐々に人の悪意が暴かれていく話。単なる自殺かと思われていたが、夫が用意周到に、着実に、愛人と一緒になって妻の精神を追い詰めていく犯行。その妻には過去に父親を死なせてしまったという出来事があったのでスイッチが入ってしまったのだった。エーレンデュルは、それを薄皮をはぐように一人でじわじわと、でも着実に落ち着いて明らかにしていった。結果として夫達に罪を償わせることができるかは不明。でも二人の良心に働きかけようとする場面では、それまで淡々と仕事をしている感じだったエーレンディルの強い気持ちが表に出ていて、はっとした。 今回はエーレンデュルの生涯の仕事といってもいい、行方不明者を探す仕事も一つ区切りがついている。30年間探し続けていた青年と、女学生の行方が分かった。二人を見つけた時には、青年の父親が亡くなっていたというのもこの作品らしいなと思う。 今回一番印象に残ったのは娘エヴァ=リンドがエーレンデュルの行方不明になった弟について言ういうところ。「もう(弟を)行かせてやってよ。あんたはその幽霊を手放さなきゃダメよ。」これまで不器用で、突っかかってばっかりだったエヴァ=リンドが少し大人になって、エレンディルと会話できているところが素敵だと思った。
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読書備忘録685号。 ★★★★。 アイスランドミステリー、レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルシリーズの第6作。 今回も暗いです。笑 北極圏の島国、昼なお暗い世界で起きる犯罪です。暗いに決まっています。笑 レイキャヴィク近郊、湖畔のサマーハウスで首つりで死んでいる女性...
読書備忘録685号。 ★★★★。 アイスランドミステリー、レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルシリーズの第6作。 今回も暗いです。笑 北極圏の島国、昼なお暗い世界で起きる犯罪です。暗いに決まっています。笑 レイキャヴィク近郊、湖畔のサマーハウスで首つりで死んでいる女性が発見された。 警察は自殺で処理したが、発見者の友人は自殺であるはずないと。 エーレンデュルは、警察の正式な捜査とは別に、自殺したとされるマリアの夫、友人などから話を聞く。 マリアが死ぬ前に、最愛の母レオノーラが病死しており、マリアは死後の母と会うために霊媒師に頼っていた。死者の国のレオノーラからマリアに印(サイン)が送られて来ることを信じていた。 そして、マリアが小さいころ、湖でボートから転落して、これまた最愛の父、マグヌスを失っていた。 マグヌスは本当にボートから転落したのか? 地道な聞き取りで徐々に明らかになるさまざまな過去。過去の断片が1枚の絵を構成していく。 果たしてマリアは自殺したのか、それとも殺されたのか。 一方、30年前に行方不明になった息子を探す老父。息子を探すことにずっと協力してきたエーレンデュル。 サイドストーリーとして、息子がなぜ突然行方不明になったのか?これまた地道な聞き取りで解決に導いていく・・・。 このシリーズで常にエーレンデュルの心を占めるのは、少年だったころ山で遭難し、行方不明になった弟ベルギュルのこと。 行方不明になったことの責任をずっと背負っているエーレンデュルは、行方不明事件を解決することに強い思いがあると感じる。 巻末、行方不明事件を解決したあと、エーレンデュルは弟の遭難に関わるなにかを見つけるために、再び山に向かう・・・。 そして、エーレンデュルの娘と息子。 危機的な薬物中毒からは脱したようだが、一筋縄ではいかない親子関係もこのシリーズの重要なサイドストーリー。 今回、正式な捜査ではなかったので、同僚のエリンボルク、シグルデュル=オーリの活躍が全く無かったのがちょっと寂しかった。笑 あと6作が刊行されているみたいなので、翻訳を楽しみに待ちたいと思います!
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シリーズ6作目。 相変わらずの少し暗い雰囲気、弟の行方不明事件が影を落としながら、自殺?の真相と共に過去の失踪事件の謎に迫っていく。 劇的な何かがあるわけではないし、読後感がすごいいいわけではないが、つい読んでしまうシリーズ。 次作に期待。
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派手な殺人事件が起こるわけでないし、手に汗握るアクションで盛り上がる訳でもない、この作家さんのシリーズ、つい、取ってしまう。 美しいアイスランド(ほとんど馴染みは無い) と家族の物語(こちらは普遍的) 今回も美しい湖畔のサマーハウスが舞台。 警察犯罪捜査官のひとりである、エーレンデュルが抱いた自殺者へのささやかな疑問と、30年前の行方不明者の細々と継続している捜査の並行作業。 他に警察の仕事ないの?と心配してしまうほど、のめり込んで行く主人公。 何度も言うけれど、決して派手ではない。 自分自身の家族問題も抱えながら。 それでも傍から見るレイキャビクの風景は美しい。
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エーレンデュルシリーズ、6作目! 彼の、捜査班や、私生活は、それ程かかわってこない。 エーレンデュルの、芯となる、弟さんの失踪、行方不明が、あるからだろう、今回は、深層、真相の、追求が、辛いし、痛い程にわかるストーリーだったな。
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凍てついた街、雪や泥濘みに足をとられるアイスランドの様子が匂いと共に漂ってくる様だった。前回同様、今回もエーレンデュルが過去に囚われてるのが腹立たしかった。 が娘エヴァとの関係性も改善されつつある中で、失踪した弟を「幽霊を手放さなきゃダメよ」と助言する彼女を好ましく思った。次回は...
凍てついた街、雪や泥濘みに足をとられるアイスランドの様子が匂いと共に漂ってくる様だった。前回同様、今回もエーレンデュルが過去に囚われてるのが腹立たしかった。 が娘エヴァとの関係性も改善されつつある中で、失踪した弟を「幽霊を手放さなきゃダメよ」と助言する彼女を好ましく思った。次回は希望が持てそう。
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6作目。堪能しました。アイスランドの凍てつく湖が目の前に広がるよう。絶望に陥る人と狡猾な人のコントラスト、そしてサブストーリーが見事に絡み合う様に打ち震えるほど。いやー、素晴らしかったです。ここまで読んできた身にとっては、エヴァリンドとこんな風に過ごし会話する姿に、涙を禁じ得ませ...
6作目。堪能しました。アイスランドの凍てつく湖が目の前に広がるよう。絶望に陥る人と狡猾な人のコントラスト、そしてサブストーリーが見事に絡み合う様に打ち震えるほど。いやー、素晴らしかったです。ここまで読んできた身にとっては、エヴァリンドとこんな風に過ごし会話する姿に、涙を禁じ得ません。そして、すべてを目の当たりにしたエーデルデュルの背中を映すラスト、彼にも希望があることを望まずにはいられませんでした
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アイスランド・レイキャビク警察・犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ第六作。 毎回重苦しい展開が続くのだが、今回もヴァランダー刑事シリーズでお馴染み柳沢由実子さんの読みやすい翻訳で気付くと入り込んでしまった。 それに今回は重苦しいだけではない、少し希望もあった。 本筋は女性が首を吊...
アイスランド・レイキャビク警察・犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ第六作。 毎回重苦しい展開が続くのだが、今回もヴァランダー刑事シリーズでお馴染み柳沢由実子さんの読みやすい翻訳で気付くと入り込んでしまった。 それに今回は重苦しいだけではない、少し希望もあった。 本筋は女性が首を吊って死んだ事件。 だが発見者である友人は彼女の自殺に疑問を唱え、彼女が生前霊媒師による降霊術を受けていた時のテープをエーレンデュルに渡す。最初は乗り気でなかった彼だが、そこから例の単独捜査クセが顔を出す。 また三十年前に息子が行方不明になった事件の捜査状況をいまだ尋ねにくる老人が病気のためにこれが最後だと言ったのをきっかけに、他の失踪事件と合わせ『今は比較的暇』という理由で独自捜査を始める。 同僚のエリンボルクからは古い失踪事件に首を突っ込むことに『国民の税金で給料をもらって遊んでいいのか』と辛らつな言葉を投げられているし、もう一人の同僚シグルデュル=オーリからは自殺で片付けられた事件を掘り返す彼に『失踪だけじゃないんだ、あなたが関心を持つのは』と皮肉を言われている。 シリーズ初期を忘れてしまっているが、同僚二人、こんな嫌な性格だっただろうか?とちょっと意外な印象だ。 特にシグルデュル=オーリ、職業や教育程度で人を差別するってどうなのか。 エーレンデュルが失踪事件に並々ならぬ興味を持つのは、幼いころに吹雪の中で弟を見失ってしまいいまだ行方が分かっていないという辛い経験が根底にある。 娘に年寄り扱いされる年齢になっても、弟のことは一日たりとも頭から離れることはないし、時間があれば弟を探しに行っている。 原題の「HARD SKAFI」とは弟を探しに行くのによく行く地名だった。 息子がなぜ行方を絶ったのか、その理由を知りたいと死の直前まで願い続ける老人の気持ちが痛いほど分かるから、エーレンデュルは同僚たちに皮肉や反発を食らっても真実を追求することを止めないのだろう。 本筋の事件においても過去の失踪事件においても、彼のやっていることは同僚たちが言うように本来の仕事ではないのかも知れない。だから潜水夫も個人的に雇っているし、これだけ歩き回っても起訴できるだけの証拠はない。 そうした意味では彼は警察官というより探偵であって、犯人を逮捕するのではなく真実を突き止めることを目的にしているように見える。 だがその甲斐あって冒頭に書いたように少し希望もあった。人が亡くなったという事実は変わらないが、家族が少しでも前向きになれるような真実がそこにあればエーレンデュルの苦労も報われる。なかなかそういう事件は無いのが残念だが。 彼のハードなプライベートも少し落ち着いてきたように思う。ドラッグ中毒だった息子と娘も更生に向けて頑張っているし、恋人との付き合いも順調だ。元妻との久しぶりの再会だけは物別れに終わってしまったが。 そもそも世界が違う二人がなぜ結婚したのかが分からないが、この結婚が原因で子供たちがドラッグ中毒にまで陥ってしまったのかと思うと辛い。元妻もエーレンデュルに出会わなければもっと違う人生があったかも知れない。 訳者あとがきによれば、アイスランド人は幽霊やお化けを本気で信じている人が多いし霊媒師に会いに行く人もいるとか。エーレンデュルのように神も死後の世界も信じないという現実主義者もいる一方で、人が死ぬ事件があれば担当地区の牧師が呼ばれる。厳しい自然環境の国だからこそ宗教や超自然的なものにすがるのも頷ける。 ※シリーズ作品一覧(邦訳版のみ) ★はレビュー投稿あり ①「湿地」 ②「緑衣の女」 ③「声」 ④「湖の男」★ ⑤「厳寒の町」★ ⑥ 本作 ★
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なぜこの作家に惹かれるのか、自分でもわからない。主役であるエーレンデュルは、特に憧れの対象にするようなスタイリッシュな主人公ではなく、むしろどこにでもいそうな地味な刑事である。シリーズ全体がどことなく物静かで、寂寥感に満ちている。そもそもがアイスランドを舞台にしていること自体がとても寂しい。 シリーズを通して、吹雪の山で置き去りにしてしまって以来行方のわからなくなった幼い弟のことに囚われている。どこか精神を病んでしまっているか病みそうなくらいにその記憶に取り憑かれている。とりわけ本作ではそれを強く感じさせられる。 死。あの世。臨死体験。あの世からのメッセージ。サイン。 それらが本書の主たるテーマだ。本書では事件と言う事件は起こらない。一人の女性が縊死をした。それは自殺として解決した。警察署は比較的事件に追われず、刑事たちの負担は現在はさほど多くない。だからこそエーレンデュルは、この時間を使って少女の縊死について、自殺と片付けられたにも関わらず深く調べることにこだわろうとする。自分の弟の行方に深くこだわり続けるように。 行方不明となった息子のことをエーレンデュルに相談するため定期的に訪問してくる老人がいる。今回は老人は癌で余命いくばくもないために最後の訪問だと言うが、エーレンデュルには過去の事件を今さら解決できるとは思えない。しかし、時間はある。老人の代わりにその時間を使ってみようと思う。 一方で車で出かけたきり、その車ごと行方がわからなくなっている少女という未解決事件がある。さらに縊死した女性の父親がボートから冷たい湖に落ちて急死したという過去の事件が冷たく横たわってそこにある。それは事故として解決済みな墓のように古い出来事だが、もしかしたら今回の縊死と何か関係があるかもしれない。 縊死した女性は、死んだ母からのサインを待っていたという。 一方で、冷水を使って心臓を止めた後にAEDを使って蘇生する、という危険な実験をやっていた男の存在がわかる。縊死した女性の夫だ。事件たちは時空を超えて、エーレンデュルの現在に集中してくる。 さらにエーレンデュルの娘の独特の個性のプレッシャー、別れた妻との再会シーンなどなど、主人公の私生活を揺する出来事も今回は印象的である。 というように地味ながら読み始めたら止まらない異様な面白さをもった作品である。文学的な叙述は他の娯楽作品の追随を許さないほど硬質で、イメージは豊穣だ。何度も気高い文学賞を受賞しているのもわかる。ちょっと心臓に負担がかかるほど重い読み応えながらも、他の追随を許さぬこの緊張を今回もまた楽しませてもらった。 シリーズ6作目である。今回は個性的な相棒の二人がほとんど登場しないのがちと寂しかった。彼らとの丁々発止もそれぞれの個性も魅力的なだけに、次作以降の邦訳への期待が深まるばかりだ。
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アイスランドミステリー、エーレンデュル警部第6段。湖の畔のサマーハウスで、女性が自殺した。些細な違和感から、エーレンデュル警部が孤独な捜査を始め、事件は思わぬ方向に展開する。 いつものように、北欧のひっそりとした森や湖と、濃密で陰鬱な人間関係のバランスが絶妙。
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