お江戸暮らし の商品レビュー
杉浦日向子さんはこの本で知ったのだが、最近、時代小説をちょこちょこ読んでいたので面白かった。 漫画家さんでもあるということで、合間合間に様々なイラストや見取り図、漫画などが入っているのが良い。 文でわからなくてもなんとなく絵でわかる。 杉浦さんが旅行の際に持ち歩いたという黄表紙...
杉浦日向子さんはこの本で知ったのだが、最近、時代小説をちょこちょこ読んでいたので面白かった。 漫画家さんでもあるということで、合間合間に様々なイラストや見取り図、漫画などが入っているのが良い。 文でわからなくてもなんとなく絵でわかる。 杉浦さんが旅行の際に持ち歩いたという黄表紙集『江戸の戯作絵本』、どこかで見つけられるだろうか。
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まさに杉浦日向子エッセンスであった。自分の興味からいえば、北斎と応為の創作(小説)や、井上安治について書かれた文章を読めたのがうれしい。正岡容や森銑三リスペクトもか。
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杉浦さんの様々な業績を1冊にまとめたもの。 亡くなって時間が経ってもこうして新しく誰かの目を通した杉浦さんを見れるのは素直に嬉しい。
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・杉浦日向子を読んだことがないと思つたのは、杉浦日向子「お江戸暮らし 杉浦日向子エッセンス」(ちくま文庫)を買はうかと思つた時であつた。あれだけ文章や漫画を書いた人である。だから目にはしてゐよう。しかし、全く読んでゐないのである。もちろん読んだ記憶はない。漫画等の絵ぐらゐは見てゐ...
・杉浦日向子を読んだことがないと思つたのは、杉浦日向子「お江戸暮らし 杉浦日向子エッセンス」(ちくま文庫)を買はうかと思つた時であつた。あれだけ文章や漫画を書いた人である。だから目にはしてゐよう。しかし、全く読んでゐないのである。もちろん読んだ記憶はない。漫画等の絵ぐらゐは見てゐるのだらうと思ふがそれだけである。どんな絵であつたかも分からない。つまり私は、杉浦日向子を名のみ高き作家(?)として知つてゐるだけであつた。既に故人であることは何となく知つてゐたと思ふのだが、正確なことは分からない。そんな私にとつて、本書は正に杉浦日向子入門の書であつた。 ・杉浦が時代考証家を目指してゐた(「編者解説」326頁)ことはもちろん知らなかつたが、それゆゑに彼女はあんなに江戸のことを知つてゐたのだつた。例へば忠臣蔵、私は歌舞伎からの知識が中心であるから本当のことはよく知らない。しかも吉良側のことは、領地吉良が同じ三河地方にあるといつても、吉良が地元では良い殿様であつたと言はれてゐることぐらゐしか知らない。ところが杉浦は「親の代までは、ずうっと米沢人で、米沢といえば、忠臣蔵の敵役、吉良の血縁であります。」(38頁)といふ人であつた。杉浦の「祖父や父なんかも、年末恒例の、忠臣蔵のテレビ映画は絶対に見な」(同前)かつたといふ。そんなわけで、杉浦に「忠臣蔵は、 気持ちのよい話には思え」(同前)ないといふ。「淺野家の浪士四十七名が、吉良家主従四十名を殺傷したという事実だけが、頭に残るのです。」(同前)さうしてできたのが、本書第一の漫画「吉良供養(上・下)」であつた。これは私には衝撃的であつた。そのタイトル扉の上には〈「忠臣蔵」ーー殺戮のプロセス!!〉とある。吉良を殺して仇を討つのではない。殺されるのは吉良の家臣達であつた。例へば最初に殺されたのは足軽である。火事と偽つて門を開けさせたその足軽を切つたのである。「表門番足軽 岩田弥惣兵衛 負傷」(47頁)「表門番足軽 森半左衛門 死亡」(48頁)。以下、かうして殺されていく吉良の家臣達が次々と記される。吉良本人を加へていろは順の「ゆ」まで続く。「公の調書では(原文改行)死亡十六名、負傷二十三名となっているが重傷で落命するものが多く、検視後には死亡二十三名負傷十六名と逆転。」(74頁)といふわけで、これはむしろ「大量殺戮」(同前)ではないか。 その「斬られた側の、吉良の家臣は、埋骨の地点さえわからない。」(39頁)そして、「いちばん可哀相なのは、ついでに斬られて死んだ、吉良家の家臣の妻や子ではない」(38頁)か。「損な役廻りは、いつまでも損だ」(39頁)といふことで、「快挙とも義挙とも云われる義士の討入はまぎれもない惨事だと思う。」(44頁)となる。この漫画は「まぎれもない惨事」を具体的に描いたもので、かういふ斬られる吉良側から描いた忠臣蔵を私は知らない。たぶんかういふのもあると思ふが、何しろ世の中、忠臣蔵=義挙といふ見方でほとんど一色になつてゐるから、さういふのは目につかない。これとてもそれほど目立つものではなかつたのだらうが、そ れでもこれだけはつきりと義挙ではなく惨事だと言つてしまふのはなかなかできないことであらう。そんなわけで私には衝撃的であつたのだが、これも杉浦が時代考証家を志してゐたがために、江戸に対する素養が十分にあつたからできたことであらう。通、粋、気障等の違ひを論じる講演も載る。私は読んでから、改めてこれを思ひ出した。さう、杉浦は気障ではない。そこが分かつてゐるから気障ではないのだと、改めて確認したのであつた。
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以前に出た「杉浦日向子ベストエッセイ」の続編的内容。(買ったは良いが積読のままだ) 杉浦日向子が残したエッセイや漫画から武家や黄表紙、蕎麦など章ごとにテーマを決めてのより抜き集。エッセイも良いけど、久しぶりに読み直したら杉浦日向子はやはり漫画が良いな。忠臣蔵を四十七士による虐殺事...
以前に出た「杉浦日向子ベストエッセイ」の続編的内容。(買ったは良いが積読のままだ) 杉浦日向子が残したエッセイや漫画から武家や黄表紙、蕎麦など章ごとにテーマを決めてのより抜き集。エッセイも良いけど、久しぶりに読み直したら杉浦日向子はやはり漫画が良いな。忠臣蔵を四十七士による虐殺事件として捉えた「吉良供養」とか、古川柳を題材にした「古川柳つま楊枝」などの実験性はこうの史代の先駆けとなるものだな。
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