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隠し女小春 の商品レビュー

2.9

10件のお客様レビュー

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2024/01/08

戦慄の事態に巻き込まれていくスリラー小説

多様なエンタメ要素のある作品であるが、大手出版社に勤務するアラフォーの独身男性「聡」が、私生活上の不安や悩み、女性不信などで心の変調を来す中、磁力に引き付けられるように出会い購入したラブドール「小春」によって、最終的に戦慄の事態に巻き込まれていくスリラー小説である。「聡」に代表さ...

多様なエンタメ要素のある作品であるが、大手出版社に勤務するアラフォーの独身男性「聡」が、私生活上の不安や悩み、女性不信などで心の変調を来す中、磁力に引き付けられるように出会い購入したラブドール「小春」によって、最終的に戦慄の事態に巻き込まれていくスリラー小説である。「聡」に代表される現代人が頭でっかちで生の充実感を得られず無機質化していくうちに、単なる愛玩人形が感情や意志を持ち人間に脅威を与えうる自立した存在になっていく。その変化を無意識的、無自覚的に受け入れてしまう「聡」に、不自然さよりも恐怖や危機感を覚える。すでにAI人形が活躍する現在、彼らが人間のコントロールから逸脱し、暴走を始めることは本当にないのであろうか。

fugyogyo

2023/07/11

初読みの作家さん。 芥川賞、谷崎潤一郎賞など受賞されてる方。 何かで紹介されてるのを見て購入。 聡は出版社で校閲の仕事をする独身男性。 彼は密かにハンガリー製のラブドールを購入し、小春と名付けて毎夜弄び、話しかけ、これが精神衛生上とても良いと考える。 バーを営む千賀子とは定期的...

初読みの作家さん。 芥川賞、谷崎潤一郎賞など受賞されてる方。 何かで紹介されてるのを見て購入。 聡は出版社で校閲の仕事をする独身男性。 彼は密かにハンガリー製のラブドールを購入し、小春と名付けて毎夜弄び、話しかけ、これが精神衛生上とても良いと考える。 バーを営む千賀子とは定期的に会う。 千賀子はバーに現れた男が過去の秘密をネタに脅されている。 恭子は、一度見かけただけの聡に執着して彼を眺めることのできるマンションに引っ越し、双眼鏡で半年以上も観察し続ける。 正直言ってちょっとずつ変な人ばかりの物語で、文学や映画の蘊蓄もいっぱい出てくるけれど、どういうストーリーなんだろう...と思いながら読んでいた。 が、後半、急激におかしなことになっていく。 終盤、怖いけれどページを捲るスピードが上がります。 淡々とした文章で読みやすかった。 予想以上の怖さで楽しめました。

Posted byブクログ

2022/11/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アカデミックに知識人達を配し都会的に男女の交際を絡めてゆきながら、変態なのか狂人なのか手探りしながら読み進めてゆく。 で、結局はファンタジーと思わせておいてのホラー小説…? 分からないけれど何故か心に残る一冊。

Posted byブクログ

2022/10/23

他の方も書かれてますが、街並やカルチャーのリアリティが荒唐無稽な設定に自然な粧いを施しています。流石の文筆力

Posted byブクログ

2022/10/03

辻原さんは芥川賞を初め文学賞総なめと言ってよい重鎮なのですが、やはり合わないようです。 主人公・矢野聡によって小春と名付けられたラブドールが心を持って行動し始める設定です。そういえば是枝監督作品に“心をもつことは、切ないことでした”というキャッチフレーズの「空気人形」という映画が...

辻原さんは芥川賞を初め文学賞総なめと言ってよい重鎮なのですが、やはり合わないようです。 主人公・矢野聡によって小春と名付けられたラブドールが心を持って行動し始める設定です。そういえば是枝監督作品に“心をもつことは、切ないことでした”というキャッチフレーズの「空気人形」という映画が有りましたね。 場所や食べ物、映画etcが出てくる度にその解説がストーリーに割り込んできます。情景とか心象表現は少なく”解説”と言うかほとんど蘊蓄です。教養小説と捉えることも出来ますが、ここまで来るとスノッブと感じてしまいます。 ストーリー的には気づけば既成事実のように小春が動き始めています。理由の説明も無く、主人公は何の戸惑いも見せません。まあ、下手な説明をするよりその方が良いのかもしれません。ただ最終盤に向けて、男の行動がなんとも情けない。会社でも一定の責任ある立場の人間とも思えない思慮の無さと責任逃れ。さらに廃棄されるのは明らかなのに素直について行く人形の心の動きもなんだか良く判らず、なんで?と思う様なサスペンス?でした。 ラブドールに付けられた小春という名前は近松の『心中天網島』から来たもの。他にも近松の話題は良く出てくるので、最後の流れも 何か近松の浄瑠璃を踏んだものかと思いますが、知識が無くて判りません。 と、ここまでは素直な感想なのですが。。。。 Amazonのでの評価に、ある人が 「"文学"が齎す怒涛のサスペンス小説と言っていいでしょう。」と絶賛した上で 「より洗練されたペダントリーの横溢を生み出し、東京・首都圏、大阪の土地のトリヴィアルを追い求めながら、」  ペダントリー=学問や知識をひけらかすこと。衒学な態度。  トリヴィアル=瑣末なさま。つまらないものにこだわるさま。 と有り、私がスノッブと感じたのは、むしろ文学性の為に敢えて取った手法という解釈のようです。確かにそうなのかもしれません。 辻原さんはこれまで5冊 改めてレビューを読むと『遊動亭円木』と『円朝芝居噺』という落語を題材にした作品は高評価なのですが、後の三作品はさほどでも無く。面白いのは、評価の低い三作品は何れも「玄人受け」とか「文学の匂い」と言った表現でフォローしています。 多分、私が読み手として教養不足なのでしょうね。

Posted byブクログ

2022/07/22

出版社の知り合いが薦めてくれた本です。タウン情報や本、映画が満載なので、神保町とか好きなら、この本も好きかも、と教えてくれました。確かに街のディテール、サブカルチャーの破片があふれんばかりに埋め込まれていて、そのリアリティがラブドールが意志を持つ、という荒唐無稽な設定を現実に定着...

出版社の知り合いが薦めてくれた本です。タウン情報や本、映画が満載なので、神保町とか好きなら、この本も好きかも、と教えてくれました。確かに街のディテール、サブカルチャーの破片があふれんばかりに埋め込まれていて、そのリアリティがラブドールが意志を持つ、という荒唐無稽な設定を現実に定着させている、と思いました。1980年の「なんとなく、クリスタル」が当時、知らない固有名詞で構築された時代気分のシンボル小説であったことから42年、今は日常に散りばめられた固有名詞で時代気分ファンタジーを成立させています。なにしろレオパレスなんて単語、小説で出会ったのは初めてです。没後30年、松本清張のような暗い昭和の情念も令和の今に召喚されているし、もっとストレートに業田良家の空気人形の純愛も参照されている、と思いました。著者の作品は朝日新聞に連載されていた「花はさくら木」ぐらいしか読んだことがなく、最初、こういう小説書くんだ、という戸惑いもあったのですが、しかし、特異な趣味で物語を煌びやかに紡ぐ、というのは一貫しているのかな、と感じました。

Posted byブクログ

2022/07/12

久しぶりの大家作品に気負ってページ開くと主人公はラブドール…。SFホラー、それとも穴場紹介?あまりに突飛な設定に最初は戸惑うも、豊富に繰り出される蘊蓄マッタリ楽しんでいるうちに怒涛のラスト。辻原さん、551のブタまんまでカバーしているとは。この春、大津SAで食べたシューマイ懐かし...

久しぶりの大家作品に気負ってページ開くと主人公はラブドール…。SFホラー、それとも穴場紹介?あまりに突飛な設定に最初は戸惑うも、豊富に繰り出される蘊蓄マッタリ楽しんでいるうちに怒涛のラスト。辻原さん、551のブタまんまでカバーしているとは。この春、大津SAで食べたシューマイ懐かしい。

Posted byブクログ

2022/07/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

今読んでいる最中です。 他のレビューアーの方のご指摘が結構当たっていると思います。 内容を水増しされているので肝心のサスペンスに中々たどり着けず、初めの部分で既にかなり退屈読むのがダルイ。 これで私の「小説嫌い」が更に進まなければ良いのですが。 >やはり人形は怖い 人形恐怖症を罹患する方を増やさねば良いと思う今日この頃。 >最後で矢野を救って自ら火の中に戻っていく小春の愛が際立つ。 手塚治虫の商業アニメ「火の鳥2772愛のコスモゾーン」のパクリ? >実在する街の説明や、カフェの情報、映画や小説の情報が詳細に描かれすぎて、 既知の内容その物、枚数を水増しする為にそうしているのだと思います。 東京やその周辺に関しては「んなの知ってる、るさい」と言う程クドクド沢山書くけれど、東欧の街の描写は驚くほど少ないのが爆笑。

Posted byブクログ

2022/06/09

やはり人形は怖い。途中までのスピード感のなさを補って余りあるほどのラストに向けての怒涛の展開。 「捨てないで、‥‥私を」と訴えかける小春のひたむきさが哀しい。主人公・矢野聡を取り巻く3人の女。誰も幸せにならない結末。矢野の身勝手さが際立つ終盤だけど、最後の最後で矢野を救って自ら火...

やはり人形は怖い。途中までのスピード感のなさを補って余りあるほどのラストに向けての怒涛の展開。 「捨てないで、‥‥私を」と訴えかける小春のひたむきさが哀しい。主人公・矢野聡を取り巻く3人の女。誰も幸せにならない結末。矢野の身勝手さが際立つ終盤だけど、最後の最後で矢野を救って自ら火の中に戻っていく小春の愛が際立つ。 小説としては、実在する街の説明や、カフェの情報、映画や小説の情報が詳細に描かれすぎて、その度に物語の流れが止まるような印象。その手の解説本ならいざ知らず、ちょっと邪魔だったかな〜。

Posted byブクログ

2022/04/20

【戦慄の長篇サスペンス】「捨てないで、……私を」ラブドールと暮らす男が、生身の女性と恋に落ちた。前途で男を待ち受ける危険と陥穽とは?

Posted byブクログ