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花散る里の病棟 の商品レビュー

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16件のお客様レビュー

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2022/06/19

大正時代、「虫医者」と言われ、蛔虫退治で多くの命を救った初代。 軍医として戦地に赴き兵站病院に勤務し、 満身創痍、復員後は町医者として地域に根ざした二代目。 高齢者に医療と介護を施すため尽力した三代目。 肥満治療を手がけてきた四代目。 ここで、コロナウイルスが発生。 戦争の残酷...

大正時代、「虫医者」と言われ、蛔虫退治で多くの命を救った初代。 軍医として戦地に赴き兵站病院に勤務し、 満身創痍、復員後は町医者として地域に根ざした二代目。 高齢者に医療と介護を施すため尽力した三代目。 肥満治療を手がけてきた四代目。 ここで、コロナウイルスが発生。 戦争の残酷さは、「胎を堕ろす 二〇〇七年」でも語られている。 戦地の過酷さには胸が詰まる。 P163 現代医療の暗部についても書かれている。 本作は忘れることなく頭の片隅に残る作品だと思う。 帚木蓬生さんらしい読み応えのある一冊だった。

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2022/06/18

もう2年半、なのに都内だけでも2000人近い感染者。それでも、また“G o T o”参院選目当てで。いい加減な政府のコロナ対策は、すでに忘却の彼方。「ワクチン無しは鉄砲も持たず戦場を歩かされたことに似とるよ」町医者四代のつぶやきは重いが、この国では届かない、マスクは律儀に未だに付...

もう2年半、なのに都内だけでも2000人近い感染者。それでも、また“G o T o”参院選目当てで。いい加減な政府のコロナ対策は、すでに忘却の彼方。「ワクチン無しは鉄砲も持たず戦場を歩かされたことに似とるよ」町医者四代のつぶやきは重いが、この国では届かない、マスクは律儀に未だに付けているが…。

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2022/06/06

「医は仁術」との思いを強くする。4 代に渡る町医者の物語。 明治維新や太平洋戦争、近年のコロナ禍まで4代に渡り医師を務める九州の一族を描いた感動作。 一話一話ほぼ独立した短編であるが、町医者のDNAが流れている。年代順になっているわけでもなくバラバラな構成ではあるがそれも悪く...

「医は仁術」との思いを強くする。4 代に渡る町医者の物語。 明治維新や太平洋戦争、近年のコロナ禍まで4代に渡り医師を務める九州の一族を描いた感動作。 一話一話ほぼ独立した短編であるが、町医者のDNAが流れている。年代順になっているわけでもなくバラバラな構成ではあるがそれも悪くはない。 大きな感動を持って読めた一冊。素晴らしい作品でした。

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2022/05/26

「九州で四代続く医師の家を描く100年の物語」というから、胸熱の大河小説みたいなのを勝手に期待して読んだからか、肩透かし感が半端ない。 2012年から2021年にかけて、小説新潮に書いたものを単行本化にあたって加筆修正するでもなく、掲載順を工夫するでもなく一つにした作品。 そ...

「九州で四代続く医師の家を描く100年の物語」というから、胸熱の大河小説みたいなのを勝手に期待して読んだからか、肩透かし感が半端ない。 2012年から2021年にかけて、小説新潮に書いたものを単行本化にあたって加筆修正するでもなく、掲載順を工夫するでもなく一つにした作品。 そのため、時系列も目線となる医師も話ごとに前後し、作品としてのまとまりが感じられない。 それでも、戦争絡みの「胎を堕ろす」や「復員」にはグッとくるものもあったし、折々に挟まれる句や歌は少ない言葉の中に情感が溢れて秀逸。 残念なのは、小説というよりは記録という印象が濃いこと。戦時の部隊展開など細か過ぎる数字の羅列が物語の流れを断つし、コロナパンデミックの部分では、スペイン風邪のくどくどしい解説にはじまり、まるでワイドショーの医療コメンテーターのような政策批判と医療者擁護が鼻につき、なんとも趣のない、感動の大河小説とは似ても似つかないものになったのが残念でならない。

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2022/05/24

「面白いか?」と問われれば「否」ですが、読み応えは凄まじく。 四代にわたる町医者の物語です。蛔虫退治で評判を取った初代。悲惨なフィリピン戦線の軍医だった二代目。高齢者医療を始めた三代目。そして肥満治療を手がけてきた四代目。それらがで順不同で描かれるオムニバス形式の短編10編です。...

「面白いか?」と問われれば「否」ですが、読み応えは凄まじく。 四代にわたる町医者の物語です。蛔虫退治で評判を取った初代。悲惨なフィリピン戦線の軍医だった二代目。高齢者医療を始めた三代目。そして肥満治療を手がけてきた四代目。それらがで順不同で描かれるオムニバス形式の短編10編です。 三代目を主人公に、居場所のない高齢者の悲惨さを描き、でもどこか救いのある出だしは如何にも帚木さんで良い。しかし、全体として医療小説・記録文学・仁愛(?)小説など色んなテーストが有って、それが上手く一体化できてない感じががします。 最も紙面が割かれるのが「兵站病院」と「胎(こ)を堕ろす」「復員」などで描かれる余りに悲惨な太平洋戦争。今のウクライナが頭を掠めつつ。やはり戦争の不気味さ怖さ阿保らしさが沁み渡ります。加えて現役医師(帚木さんは精神科ですが)の目で見た新型コロナの第四波までの医療現場の実情を描いた最終編の「パンデミック」も本当に読み応えが有りました。

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2022/05/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2022/04/27リクエスト 3 1代目 大正時代、寄生虫胎児で評判を得た 野北保造(のぎた やすぞう)は九州帝国大学医科大学を卒業した。 二代目 野北宏一(のぎた こういち)は、久留米の九州医学専門学校に入学して、軍医としてフィリピンで過ごし、命からがら祖国に戻る。尊敬していた上官の指の骨を持ち帰るシーンはなんという体験をしたのだろう、とつくづく感じた。戦死した戦友のことを想いながら町医者として人生をまっとうする。 三代目 野北伸。九州大学医学部出身で、老人介護施設も設立。 人のいい町医者、人が集い、医療者も集まる、人柄なんだろう。 四代目 野北健。ボストンで糖尿病手術の研修をして帰国後、市立病院で働く内科医。2020年からのコロナでの病院の様子も医者ならではの目線で臨場感あふれる。 婚約者がコロナ感染して、周りにはまだ知らせていなかった為、身内びいきもできず、もちろんしてもいけない、そんな物悲しいシーンもある。こんな辛いことって… 華やかな大学病院のドクターなどではなく、臨場感あふれる、私達の身近にいてほしいようなお医者さん。 こんなお医者さんに家庭医になってほしい… 日本にも家庭医制度があれば、いいのに。 読み応えのあるいい話でした。

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