姉妹殺し の商品レビュー
1993年美人姉妹の女子大生が惨殺された。ラングという作家の書く作品内と似た設定で殺されており、姉妹とラングの交流があったと分かる。ラングが殺したのか・・・25年後、ラングの妻が殺される。毒蛇にかまれて。 面白かった!分厚くても全然飽きない。謎が解かれる快感をストレートに味わえ...
1993年美人姉妹の女子大生が惨殺された。ラングという作家の書く作品内と似た設定で殺されており、姉妹とラングの交流があったと分かる。ラングが殺したのか・・・25年後、ラングの妻が殺される。毒蛇にかまれて。 面白かった!分厚くても全然飽きない。謎が解かれる快感をストレートに味わえた。シリーズものだけれど、前作読んでなくても大丈夫。
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凄いと思った。700ページ近い量もだが、25年にまで遡るセルヴァズの来歴が事細かに綴られている。同時に当時の警察官の取調べの様子から今に至るまでの時の流れをセルヴァズと共に味わっていく様だった。登場人物の作家の作品にクスリとさせられもした。
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「セルヴァズ」シリーズ第5弾。今作は25年前セルヴァズが新人だった頃の事件から幕が開ける。大学生の姉妹が殺害され容疑者は人気小説家。シリーズのどの作品もそうだけれどすぐに引き込まれていく。25年後に起きた似たような事件。その関連とセルヴァズが感じる不安。ジリジリと追い詰められてい...
「セルヴァズ」シリーズ第5弾。今作は25年前セルヴァズが新人だった頃の事件から幕が開ける。大学生の姉妹が殺害され容疑者は人気小説家。シリーズのどの作品もそうだけれどすぐに引き込まれていく。25年後に起きた似たような事件。その関連とセルヴァズが感じる不安。ジリジリと追い詰められていくような焦りと緊張感がある。700ページ近くあるけれどその長さを感じさせない。事件のラストの展開やエピローグで明かされることやシリーズの今後が気になる。
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ロン毛、ノーネクタイ、四大卒、コネのある新人刑事―― それが、マルタン・セルヴァズ、我らがセルヴァズ24才の若き姿だ。 入ってこられた署のほうは、そりゃ嫌だろう。 私も、なんだかいやだ。 セルヴァズ・シリーズももう5作目である。 1988年から話は始まる。 15歳、16歳の姉...
ロン毛、ノーネクタイ、四大卒、コネのある新人刑事―― それが、マルタン・セルヴァズ、我らがセルヴァズ24才の若き姿だ。 入ってこられた署のほうは、そりゃ嫌だろう。 私も、なんだかいやだ。 セルヴァズ・シリーズももう5作目である。 1988年から話は始まる。 15歳、16歳の姉妹が、白いドレスを着て、夜の森を歩いている。 二人は憧れの作家に会いに行くのだ。 "初聖体拝領式のドレス"を着てというのが、なんだか気になるではないか。 そもそも、初聖体拝領式って――なに? ざっくり調べてみたのが、以下の通りである。 カトリックのクリスチャンにおいて、大事な儀式の一つらしい。 乳児の時に洗礼を受けているのだが、それは本人の意思によるものではない。 物心がついてから、自覚をもって、はい、私はクリスチャンです、カトリックです、というのがこの儀式なのだそうだ。 それまでは、ミサにある聖体拝領――聖なるパンを受けることができないが、これ以降ようやく受けることができる。 一段階大人になるわけだ。 女の子は白いドレスを着るものらしい。 時所によって違いはあるが、ベールをつけて、小さな花嫁さながらになったりもする。 非クリスチャンがなんとか検索結果を述べているので、トンチンカンな誤りもあるだろう。 ご存じの方にご教示ねがいたい。 さて、事件が起きるのは1993年、白いドレスを着た女性二人の変死体が見つかる。 ロン毛の新人セルヴァスの初めての大事件である。 「目も耳もフル稼働させろ。勉強しろよ」(51頁) ボスのコヴァルスキーに檄を飛ばされ、その指示を受けあとをついて走って、捜査を進めていく。 捜査線上に浮かんできたのは、ある作家だった。 エリック・ラング、大人気のミステリー作家である。 代表作は『初聖体拝領式のドレスの女』―― 24才のセルヴァズは悩みも多い。 妻との関係に、なんだか冷たいものを感じ、警察での仕事に大きな疑問を抱いている。 『いい父親でもなく、いい夫でもなく、いい警察官でもない。いい息子でもなかった。』(286頁) 事件は興味深く、セルヴァス新人も悪くないんだけど、ううん、でも、なんか・・・・・・なんか物足りないんだよなあ。 そう思った読者もいるはずだ。私は思った。 安心したまえ、ちゃんと登場する。 2018年、49才のマルタン・セルヴァス警部補が! 『それにしても、地球温暖化に懐疑的な人や、陰謀論を唱える人たちは、どうして自分たちの意見ばかりに固執して、現実を見ようとしないのだろう。』(298頁) 2月の早朝、昨夜降った雪を眺めながら、昨夜の吹雪のニュースに思いをはせつつ、温暖化について頭を巡らせ、 『作家というのは、作品を通じて読者の暮らしに入り込んでいくものなのだ。・・・・・・そして、もし作家の活動が数十年に及べば、作家はいつしか読者の人生に必要不可欠な存在になっている。』(372頁) ある作家の熱烈なファンに会えば、それについて『ちらっと考え』る。(372頁) もと作家志望の文学部卒、馬鹿な筈がない、むしろインテリの筈なのに、なぜか毎度考えなしに突っ込んで大怪我をする男、 小さな息子を抱きしめながら、 『無駄に危険な真似は絶対にしてはいけない。』(345頁)自分に言い聞かせる男、 犬が怖い、蛇が怖い、なのに遭遇してしまう男、 読者の知るあのマルタン・セルヴァスがいる! シリーズ読者には、嬉しい一冊だ。 読みごたえはたっぷりだ。 いきなりこの一冊を読んだとしても、 きっと面白いだろう。 妻のアレクサンドラとはどうなったの? このマリアンヌって、誰? 部下の妻と、仲がいい・・・・・・? 疑問は必ず湧くだろう。 そういう方々はシリーズ過去作をどうぞ。 ちょっと、動物好きに辛い点のあるのが難だが、必ずや面白い。 今回のこの『姉妹殺し』には、犬、猫、蛇が出てくるが、彼らの扱いが悪くないのは大いに美点である。
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セルヴァズ警部、と呼び掛けられると、前作で降格させられた経緯があるので、「警部補です」と敢えて答える主人公が、本作ではとにかく目につくし、それもまたなかなかの味である。銃をあまり持たないセルヴァズ。射撃にとんと自信がないからである。そんな主人公の警察シリーズで良いのか? と読者...
セルヴァズ警部、と呼び掛けられると、前作で降格させられた経緯があるので、「警部補です」と敢えて答える主人公が、本作ではとにかく目につくし、それもまたなかなかの味である。銃をあまり持たないセルヴァズ。射撃にとんと自信がないからである。そんな主人公の警察シリーズで良いのか? と読者が心配してしまうタイプの警察官が主人公なのだ。 好敵手は、かのハンニバル・レクターに比肩されるほど怖い、サイコ過ぎる元検事の殺人鬼ジュリアン・ハルトマン。この怖い元検事の殺人鬼が出演しないストーリーであれ、セズヴァズの夢には必ず出てきたりするくらい、シリーズ中、圧倒的存在感を誇る。前作ではハルトマンとの一部直接対決など、どきどきする巻でもあったのだが、本作では思い切り趣向が変わる。 しかもセルヴァズ警部ファンにはこたえられないことに、何と20代、新米刑事時代のセルヴァズ登場によって、本作はスタートするのである。銃を使いこなせない不器用さはもちろん各方面で駆使されるし、新米であれ、彼なりの性格の強さや勘どころの鋭さといった、今に繋がるセルヴァズならではの特徴はこの年齢でも早くも味わえる。特に彼の実力を伴いそうにない無謀さは、この頃から何とも一流である。 本シリーズは最初から順番に読んでいるのだが、何といっても『氷結』で知ったトゥールーズという作者在住でもある地方都市が良い。ピレネー山脈やスペイン国境にフランス一近い大都市が、トゥールーズである。なので、冬には雪と山岳を舞台にしたアドベンチャー・ノヴェルをシリーズ内で披露できるという、この年に住む作者ならではの強みがある。それこそ一作目の『氷結』はこの都市、そして冬のピレネーという個性を存分に生かしてくれたのだ。事件も個性的で第一作としてはなかなかの大物デビューぶりを示したのだったし、セルヴァズの無謀ぶりも存分に表現してくれたものだった。 その後、シリーズを重ねるにつれ、ハルトマンとの因縁の経緯を背景に楽しみながら、各作品毎の大きめの変化も楽しむことができたのが本シリーズ。『魔女の組曲』などは独立作品でも成功しただろうと思うのだが、セルヴァズのシリーズに組み込むことにより、読者的にはより楽しむことができた。療養中のセルヴァズを無理やり出演させることで、作者の、また読者側からのセルヴァズ拘りを確認できたくらいである。 さて本書は、そういったセルヴァズ・ファンにとっても、初読の方にも最高のサービス作品である。物語は二部制となっており、前述の通り、二十代のセルヴァズが担当した事件、そしてその時点での謎多い結末までが描かれる。最大の容疑者はその時点で自殺している。 その25年後、続編とも言える新たな事件が起こる。二つの事件は一見遠いように見えるが、繋がるのは25年前と同じ被害者の白いドレスと、両方の事件に関与した作家の存在。作家が書く作家。そんなややこしい多重構造重だけでも、かなり好奇心を刺激されるのだが、両方の事件を繋ぐものの何ものかに対する好奇心が半端ではなくなるのが、25年を経た二つの事件の繋ぎの部分である。 シリーズ中、最もサービス過多と思われるエンタメ作品でありながら、まだまだ宿敵との怨恨も残しつつ、さらにセルヴァズの青年から熟年への変化をも楽しみつつ、事件の複雑な謎解きにももちろん迫ることができる作品内多重構造の、これは超エンタメ作品なのである。訳者解説にもある通り、確かに時系列としてはシリーズ主人公セルヴァズの20代から物語がスタートするとあって、シリーズ読者でなくともこの作品に限っては、本書から最初に読んでも問題はないかもしれない。 著者のベルナール・ミニエは、今、最も人気のあるフレンチ・ミステリ作家であるらしい。作品毎にこの作家はかなり趣向を変え、見方をずらしてみせる。そのマジックぶりに、セルヴァズという個性的な警部、じゃない、今は警部補、の魅力を存分に味わって頂きたいと思う。
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