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一九二〇年代モダニズム詩集 稲垣足穂と竹中郁その周辺 の商品レビュー

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2023/05/06

足穂を唯一無二の作家だと信じていた十代と二十代。 webで知った石野重道が足穂そっくりで驚いた三十代なかば。 そして四十になんなんとする今、本書を読むことができてよかった。 また偶然だが川端康成を重点的に読んだあとで、「疾走! 日本尖端文學撰集――新感覚派+新興藝術派+α」を経て...

足穂を唯一無二の作家だと信じていた十代と二十代。 webで知った石野重道が足穂そっくりで驚いた三十代なかば。 そして四十になんなんとする今、本書を読むことができてよかった。 また偶然だが川端康成を重点的に読んだあとで、「疾走! 日本尖端文學撰集――新感覚派+新興藝術派+α」を経て、この本に触れられたのも、よかった。 足穂っぽい詩がたくさん。 若い頃なら驚きのあまり足穂を敬遠してしまったかもしれない。 が、今なら納得できる。 同じ時代、同じ場所で、似た文化経験や似た読書をした人だから、似るほうが自然。 交友があったり、間接的に影響し合ったりする。 読んで書くとは影響し合うことなのだ。 オリジナリティとはむしろ後からついてくるもの。 足穂の作中に散見される名前もチラホラあるので、足穂再読の際に本書で再確認することもあるだろう。 で、本書に収められた詩人の多くは筆を断ったり、生没年不詳の人も多い。 その中で偶然足穂は、半世紀以上書き続けた。 あるいは意図してそういう境遇に自分を置いた。 足穂の本心は与り知るところではないが、十代二十代に影響し合った詩人の残光を引き連れて書き続けるという思いもあったのではないかしらん。 そもそも人は本を読むとき、自分の問題意識に引きつけながら取捨選択をするものだ。 三島由紀夫は男色研究から足穂を、中島らもはシュルレアリスム傾倒から足穂を、知った(んじゃないかしらん)。 私は少年への憧憬から足穂を愛読するようになったが、半世紀も書き続ければ作品は多様。 いつでも自分のその時点での興味に合わせて掘り出せる作家になっている。 と同じく、多くの詩人が多くの媒体に書いたものが残り、こうしてまとめられているからこそ、もっと広い採掘場として多くの読者がそれぞれの興味に任せて読めるのだ。 嬉しい。 ちょっと意外に感じたのが、プロレタリア文学や社会運動との共振が見えること。 「疾走! 日本尖端文學撰集――新感覚派+新興藝術派+α」でも感じたことだが、そりゃ当然、流行っていたのだ。 100年前のナウに触れられる本でもある。 季村敏夫 高木彬 受川三九郎 稲垣足穂 猪原一郎 石野重道 近藤正治 田中啓介 平岩混児 高木春夫 遠藤忠剛 九鬼一爾 唯半児 衣巻省三 野川隆 冨士原清一 星村銀一郎 橋本健吉 宇留河泰呂 沙良峰夫 藤村青一 小野十三郎 友谷静栄 碧静江 細田東洋男 竹中郁 福原清 山村順 木水彌三郎 富田彰 一柳信二 平井功 黄瀛 岡田春草 坂本遼 原理充雄 西村欣二 山田初男 橋本実俊 浅野孟府 市島三千雄 澤ゆき子 水町百窓 井上増吉 笹井陶 岡崎龍夫 竹村英郎 浜名与志春 林喜芳 北村栄太郎 永井叔 能登秀夫

Posted byブクログ