SNS天皇論 の商品レビュー
「すずめの戸締り」きっかけで読んだ。 ポップカルチャーにおける表象だけでなく、SNS時代の双方向的なメディア言説の流通にも分量が割かれていて、読み応えがあった。
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『#SNS天皇論』 ほぼ日書評 Day627 副題にある「ポップカルチャー = スピリチュアリティと現代日本」に関する広範な知見を基に、まだ30歳代の著者が圧倒的なスピード感で書き連ねたエクリチュール、アラカンの評者には拾い読みするのも難儀するレベルだ。 かように、読者を選...
『#SNS天皇論』 ほぼ日書評 Day627 副題にある「ポップカルチャー = スピリチュアリティと現代日本」に関する広範な知見を基に、まだ30歳代の著者が圧倒的なスピード感で書き連ねたエクリチュール、アラカンの評者には拾い読みするのも難儀するレベルだ。 かように、読者を選ぶ一冊ではあるが、それはそれとして非常に面白い。 牽強付会とも思える「深読み」で、特に先般の平成から令和への改元を読み解く箇所は、確かに同時代を生きた記憶はあるものの、そんなこともあったのか…と驚かされること然り。 本書で触れられる数多くのテキストの中で『箱の中の天皇』は、狐につままれた感を覚えながらも読んだ。多種多彩に紹介されるコミック、ラノベの類は初耳。 最もポピュラーなのは『シン・ゴジラ』か。同作において、既に天皇制は存在していない設定だと言う。公文書に年号の記載がなく、ゴジラによる放射能汚染の最寄地にある皇居について、一顧だにされておらず、のラストシーンでゴジラが凍結させられ立ち尽くす場所は、大手町、あの平将門の首塚のある場所。「新皇」を自称した将門と重ね合わせる等。 最後に、どうも筆者は「炙」の字が好きなのではないかという気がしてきた。どうでも良いことだが、最近の本ではあまり見かけない熟語複数に使用している。 https://amzn.to/3oVPkUS
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昭和天皇が皇太子時代のブロマイドが女子学生に人気だったという事を考えると、天皇の大衆化は20世紀初頭から既に始まっていたと考えられる。戦後は象徴制によりその表象がポイントになってくるが、マスメディアが果たした役割は大きく様々な研究がなされてきた。本書では21世紀以降のネット社会の...
昭和天皇が皇太子時代のブロマイドが女子学生に人気だったという事を考えると、天皇の大衆化は20世紀初頭から既に始まっていたと考えられる。戦後は象徴制によりその表象がポイントになってくるが、マスメディアが果たした役割は大きく様々な研究がなされてきた。本書では21世紀以降のネット社会の進展に伴うSNSの隆盛による双方向的な観点から表象の生成を問うものである。 マスメディアにおいては所謂「閉ざされた言論空間」と呼ばれるGHQによる規制の影響がまだ残っており、天皇に関して必ずしも自由な表現が可能であるとは言えない。他方、そういった規制のないネットメディアは「開かれた言論空間」と言えるだろうし、サブカルチャーやポップカルチャーとの親和性も高い。という意味において、本書のような研究は現代的な意義があるものと言える。 本書で印象的なのは「弱い天皇」である。これがある種の生存戦略的なものかどうかはハッキリしないが、確かにそう解釈できる部分はあるし、昭和から平成への大きな変化であると言えるだろう。しかしながら、著者のいう「解釈ゲーム」が過剰化しており、深読みが過ぎるのではないかという印象を本書全体を通じて感じる部分もある。とはいえ、現代天皇論はこういう方向にならざるを得ないのではないかという気もするし、さらにはこういった風潮がナショナリズムとどのように結びついていくのかを考えてみたいという気持ちにもなる。読み物としては大変面白く、示唆に富む一冊ではある。
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