流浪蒼穹 の商品レビュー
「宝をめぐって闘うことは、宝そのものより重要だ」 地球へ向かう輸送艦、老いた艦長から老いた火星総督への伝言、物語はここから始まる。 舞台である「火星と地球」は、火星独立時の事情から、「統制管理と経済支配」という社会構造の相違から、再び戦火を交える直前にあった。その様子は、まるで...
「宝をめぐって闘うことは、宝そのものより重要だ」 地球へ向かう輸送艦、老いた艦長から老いた火星総督への伝言、物語はここから始まる。 舞台である「火星と地球」は、火星独立時の事情から、「統制管理と経済支配」という社会構造の相違から、再び戦火を交える直前にあった。その様子は、まるで現代の「社会主義と資本主義」を比喩しているよう。 人の幸せとは何か 自由と保護は相反するのか そしてこの大きなテーマは、主人公達の葛藤という内面でのテーマとも通じている。 「自由とはなにか」主人公ロレインたちの迷い……。 自由、それは束縛からの離脱、独立。離脱したのちにあるものは、自らが作る新たな束縛? レイニー医師の言葉 「世界は扇動と盲従の上に築かれている。その原動力は欲望だ」 「幸福とは頭をはっきりさせておくこと。自由とは頭をはっきりさせておけること」 第三章、刻々と迫る変化のなかで繰り広げられる群像劇、そして結末。 SFでありながら、カミュやサン=テグジュペリからの引用を多用した哲学書のようなこの物語。 『流浪蒼穹』この二つの熟語の題名は、「流浪、その果てに蒼穹」と、私は感じた。
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秋の夜の様に、長く静かな作品だった。二段組で669ページ。読んでは止まり、止まっては読み、数ヶ月かけてようやく読み終えることができた。地球より独立して数十年が経過した火星が舞台。地球への留学から帰ってきた少女ロレイン。二つの世界を知ってしまった彼女はその違いに迷い、自分の生きる道を見失ってしまう。彼女の揺れ動く心の動きを追いながら、微妙なバランスの上に成り立っている火星と地球の関係へと展開する。最後の十数ページにある、ロレインの祖父ハンスの独白が特に印象深かった。
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次回「流浪蒼穹 第二部 ~宇宙(そら)を駆ける~」 2136年刊行予定 以下序文。 火星に大規模な水がもたらされたことで、火星の都市圏は拡大、拡散し、前総督が予測した通り、各都市間の摩擦・貧富が生じ、分裂が生じていく中、前総督の孫ルディと航空システム長官ホアンが実権を握り、うちをまとめるため、ついに地球に宣戦を布告、地球へとコロニー落としを敢行する。 一方、地球と火星との橋渡しである宇宙船マアースでは前総督が最後の時を迎える。看取るのは前総督のもう一人の孫ロレイン。地球への留学経験がある彼女は祖父の遺言を受け、兄ルディを止めるため火星へと帰還。対抗勢力ネオ火星を組織し、地球勢力とのパイプを活かし兄と戦うことになる・・・! 〝ジーク火星!〟
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