漢とは何か の商品レビュー
「なぜ一王朝である漢が、文字や民族を表す呼称に用いられるようになったのか」そこまで象徴的存在となった漢王朝。 次に漢王朝に比肩する存在は唐王朝の登場を待たなければならない。というわけで本書は、漢が存在した時代から唐までのそれぞれの時代で漢がどういう存在だったかについて迫っていく内...
「なぜ一王朝である漢が、文字や民族を表す呼称に用いられるようになったのか」そこまで象徴的存在となった漢王朝。 次に漢王朝に比肩する存在は唐王朝の登場を待たなければならない。というわけで本書は、漢が存在した時代から唐までのそれぞれの時代で漢がどういう存在だったかについて迫っていく内容になっている。各時代における漢認識を考察することで「漢とは何か」に迫ろうとするその試みは読み応えのあるものだった。
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第一章「集団から帝国へ」前漢 漢王朝を構成した劉邦集団は、群盗集団期・楚国郡県期・漢王国期・漢帝国期と段階を経て形成されていった。それぞれの段階で既存構成員の地位は守られる一方で、その外延への新たな構成員の取り込みも常に行われていった。官僚層も当初は功臣群の再生産が行われていった...
第一章「集団から帝国へ」前漢 漢王朝を構成した劉邦集団は、群盗集団期・楚国郡県期・漢王国期・漢帝国期と段階を経て形成されていった。それぞれの段階で既存構成員の地位は守られる一方で、その外延への新たな構成員の取り込みも常に行われていった。官僚層も当初は功臣群の再生産が行われていったが、徐々に人材登用策が整備されていく。 第二章「懐旧と称揚の狭間」後漢 後漢当初は漢制といえば前漢だったが、世代を経るに連れて前漢後漢がともに漢として見做されるようになっていく。 第三章「漢を継ぐもの」三国西晋 五行思想と易姓革命を組み合わせた五徳終始説は、王朝交代の理論的根拠を与えたが同時に、未来の交代も是認する思想であった。西晋は曹魏からの禅譲に五徳終始説を利用したが、やがて自らも簒奪を迎えようとすると五徳終始説を重視しない姿勢を見せていく。 第四章「漢との距離感」五胡十六国 五胡十六国時代、各国は自国の正当性を表すために漢だけでなく、匈奴・魏晋・姫周などの淵源を持ち出し、漢は絶対的ではなく相対的な存在に変化していった。 第五章「漢から周へ」東晋南朝 王朝交代による儀式の断絶もあり、南北朝では儀式の根拠を周礼に求めていき、王朝の正当性の根拠は漢から周へと移り変わった。 第六章「儀表としての漢」北魏 南朝が基本的に実封なのに対し、北魏では成立当初は漢領域の辺縁の虚封が見受けられる。全国支配をしているとの表面的な主張であり、北魏の正当性や権力の弱さの裏返しだが、徐々にその傾向は薄れ孝文帝の漢化政策に繋がる。 第七章「漢王朝へのまなざし」唐 前王朝の子孫を祀る二王三恪については、当初は北周と隋としていたが、唐が長期政権化していくにつれてふさわしい格の周と漢が選ばれるようになった。後に時代が下り宋以後では漢唐と並び称されていく。
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