あなたが私を竹槍で突き殺す前に の商品レビュー
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2020年に単行本として出版された小説。今、数週間前に書かれたもの?と錯覚するような冒頭。 愚劣極まりない結果で終わった2024年東京都知事選、クルド人ターゲットの差別攻撃にネトウヨのみならず野党も関与して酷い有様の日本、関東、東京。都知事は変わらず、関東大震災における朝鮮人虐殺にかかる式典へのメッセージをあえて送らない知事が再選され多くの抗議や疑問の声があがるもより多くの無関心や同意にかき消される、すでにディストピアなこの社会。 ユートピアを求めるほどの天真爛漫さはない、もちろんそんなつもりはないが、あまりにささやかすぎる韓国への帰国事業。日本が在日コリアンを追い払うために積極的に支援した北朝鮮への帰国運動やいまだに私には謎の滑稽行動であるよど号ハイジャックなどいろいろなことを想起させる。 ディストピア。知識人やメディアが煽動して扇動して先導して作る、大衆の雰囲気。太一がシンくんに言う、世界とは大衆のこと、世界の意志とは大衆の意志、最終の敵はいつだって大衆、それには絶対に勝てない。勝とうと思ってはだめだ、と。 そして太一よりも強い意志をもつ葵が言う通り、わたしも弱い、ずるい、大衆の一部だ。 流れを変えるための事件を身を挺して実行してなお、行動してもしなくても、私は大衆の一部であることを抗えない。 ユニークなキャラクターたち、とくにアメリカ育ちのシン君が面白くい。それぞれの登場人物を主人公に各章が書かれているが、それぞれのスピンオフというかその人生を深掘る小説が書かれたら面白そうだ。 今、ディストピア的な悪い流れに乗る世界においてもはや敬愛するバージニアウルフを梨花がコスモポリタンかいと揶揄したが、コスモポリタンにすらなれない世界性、I have no country I want no country と心から欲してもなお、自分はどこかに帰属する、させられている大衆の紛れもない一員であるのだ。
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かなり読みづらく、読了までに相当時間がかかってしまった。 読みづらいというところもあってか内容も頭に入って来づらく難物であったと言わざるを得ない。 あまり関心のないテーマだったのが良くなかったんかなー、結果論。 タイトルはもっとグイグイストーリーが迫ってくる印象だったんだけ...
かなり読みづらく、読了までに相当時間がかかってしまった。 読みづらいというところもあってか内容も頭に入って来づらく難物であったと言わざるを得ない。 あまり関心のないテーマだったのが良くなかったんかなー、結果論。 タイトルはもっとグイグイストーリーが迫ってくる印象だったんだけど、淡々とした説明が多くページを手繰る手が鈍かった。 お!、と思うところもあっただけに全体を通しては残念な感じに終わった。 次は口直しに軽めの読もうっと。
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文学を志すが評価されず諦めたことのある女性のブログがところどころ出てくるが、なんとも言えない才能の無さと自己陶酔感が出ていてとても良い。
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ー 他の国がもっとひどいからって、だからって日本の現状を見逃していいわけない。日本の現状だって、飼い馴らされて気づいてないかもしれないけど、いや、かなりのディストピアだから。何も明確なジェノサイドや強制収容所の再来だけがディストピアじゃない。ディストピアは今だ。要するに、やっぱり...
ー 他の国がもっとひどいからって、だからって日本の現状を見逃していいわけない。日本の現状だって、飼い馴らされて気づいてないかもしれないけど、いや、かなりのディストピアだから。何も明確なジェノサイドや強制収容所の再来だけがディストピアじゃない。ディストピアは今だ。要するに、やっぱり人類は歴史から学んだんだな。この、じわじわとした、言い訳と詭弁ばっかりの、誰も責任を取らなくていいような、 毒ガスではなくただ憎悪を募らせて空気を悪くし、マイノリティを窒息させるこの締め出し方こそ、奴らの学んだ新しいクレンジング方法だ。俺たちは騙されない。そこの知恵比べに負けはしないさ。 ー これはすごい作品。エネルギーに引き込まれる。 反韓、反日、反共、といったイデオロギーはさておき、そういったイデオロギーの中で生きる人々の生々しい“生きる声”を描いた作品。 ヘイトクライムに参加する人も、アンチヘイトクライムに参加する人も、無関心な人も、そもそもそんなものの存在すら知らない人も、みんながこれを読めば世界が少しは優しくなれるかな。 マルローの『人間の条件』をもう一度読みたくなった。
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最後の10P分が余分かなと思ったが、個人の思惑を超えて社会は流動的に動くということを言いたかったのかな。差別問題はされる側とする側が表裏一体で、ほんの少しの揺らぎで攻守が変わってしまうのか。
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読み終わった後、ドッと疲れたような気がした。 テーマが濃ゆくて、なかなか頭の中で整理出来なかった。一括りに「在日問題」と言われても世間一般 的に難しいと解釈する方も多いと思う。 私も難しいと感じます。でも目を背けていい問題だとは、思ってもいないです。何が正しいのか、何が間違ってい...
読み終わった後、ドッと疲れたような気がした。 テーマが濃ゆくて、なかなか頭の中で整理出来なかった。一括りに「在日問題」と言われても世間一般 的に難しいと解釈する方も多いと思う。 私も難しいと感じます。でも目を背けていい問題だとは、思ってもいないです。何が正しいのか、何が間違っているのか、それは人それぞれと言えば、無責任に感じるが、でもそう考えてしまうのです。 この作品は、小説の概念を超えた、著者の心の叫び だと感じています。
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