日本のインド・ネパール料理店 の商品レビュー

小林真樹(著者)

2022/06/12

インド・ネパール食器の輸入業を営みつつ、インド・ネパール料理を日本人で最も極めているのではないか、と思わせる著者が、北海道は稚内から沖縄は宮古島まで、日本全国の偏在するインド・ネパール料理店に実際に足を運びながら編纂した食紀行。著者の『食べ歩くインド』シリーズは、日本にいながらインドの現地料理の奥深さを知れる点で非常に面白く、本書も期待しながら読み進めたが、やはり大変面白い。

各店の料理をしっかり味わいつつ、日本という異国の地でどのようにネパール人が来日し、料理店を開業するようになったのか。そこには、当時のネパールの経済状況や、日本の移民政策の変化、日本におけるネパール人コミュニティや有名店での経験を経ていわば”のれん分け”のように店が分岐していく点など、様々な因子が絡んでいる。

にしても、北海道から沖縄まで、ネパール人が店を開いていないエリアはないのではないか、というくらいに偏在するインド・ネパール料理店の豊饒さには改めて驚かされた。大阪の天満にあるインド・ネパール料理の名店「カンティプール」が大好きで昔は頻繁に訪れていたが、東京に来てからほとんどインド・ネパール料理店に行っていない自分に気づき、所要のついでに食べた新大久保の「アーガン」は最高に美味かった、という点を申し添えておく。