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世界を変えた12の時計 の商品レビュー

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2022/07/15

科学者による世界の分析は、やっぱり面白い。今回は時計の専門家による世界の新たな解釈。時間を計るだけのものと思っていた時計だが、実は権力の基盤であり象徴である。時間に合わせ礼拝させる。仕事を始めさせ終わらせる。食事や寝起きの時間を統一し、それを美徳とすることで支配しやすくする。時間...

科学者による世界の分析は、やっぱり面白い。今回は時計の専門家による世界の新たな解釈。時間を計るだけのものと思っていた時計だが、実は権力の基盤であり象徴である。時間に合わせ礼拝させる。仕事を始めさせ終わらせる。食事や寝起きの時間を統一し、それを美徳とすることで支配しやすくする。時間とは地球上の位置に基づくものであり、航海術やGPSなどとも密接に関わる軍事技術である。王宮や記念広場だけでなく、市場や学校にも時計塔があり、規律と権力の象徴となっている。時計や時間をそんなふうに捉えたことはなかった。新たな見方をくれる一冊。

Posted byブクログ

2022/04/24

世界を変えた12の時計 デイヴィッド・ルーニー著 時の技術から時代を覗く 2022/4/16付日本経済新聞 朝刊 境界侵犯する知的快楽を味わう。本書の醍醐味はこれだ。 内容は明快で首尾一貫している。 計時装置「時計」を覗(のぞ)き穴にして、それぞれの機械仕掛けを生みだした時...

世界を変えた12の時計 デイヴィッド・ルーニー著 時の技術から時代を覗く 2022/4/16付日本経済新聞 朝刊 境界侵犯する知的快楽を味わう。本書の醍醐味はこれだ。 内容は明快で首尾一貫している。 計時装置「時計」を覗(のぞ)き穴にして、それぞれの機械仕掛けを生みだした時代の思想や、社会の価値観を明らかにすることである。 例えば、「古代ローマ」の「日時計」に始まり、古代中国の「水時計」、中世キリスト教圏の「天文時計」「砂時計」を経て、近代の「クロノメーター」。そして、現代の「電気時計」や「原子時計」、「衛星時計」まで。 各章ごとに1機種を取り上げる。さまざまな文化圏にわたって語られる、総計12種類の計時装置は、ほぼ科学史を網羅している。 しかし、本書は単なる技術史ではない。 技術を通して時代を覗き、技術史を通して歴史を遠望する。本書の狙いはこれである。 つまり本書は、工学的知識に裏打ちされつつ、人間社会と歴史を論じた人文科学の書といえる。 だから、古代の「高い塔」に設置された「日時計」を論ずるにも、単に、時を告げるための情報メディアだったと、考古学的に指摘するだけではない。 公共に時間を告知すること。それは、なにより為政者の権威と支配圏を誇示するため、政治メディアとして機能した。 このように、技術論から権力論へ、論点を深めるのである。 あるいはまた、近代、「標準時間」が制度化される。これにより、通商が世界規模で合理化された。 だが同時に、「時間」で計測・評価されることで、「労働」が均一化され、平準化されてしまう。 結果、働くことから固有性が剥奪され、労働は抽象化され、疎外されてゆく。 技術論から労働の存在論へ、論点は深まるのだ。 「時がいかに管理され、政治に利用され、兵器とされ」てきたか。「エリートたちは権力を振るい、金儲(かねもう)けをし、民を統治して暮らしを支配」してきたことか。 「時計」を通して、「権力、支配、金、道徳、信条」を、縦横に斬る。 発見術的に論点を水平移動させてゆく。本書の筆致は一貫しているのである。 この境界侵犯は、認識の発端となる知的快楽だ。 《評》早稲田大学教授 原 克 原題=ABOUT TIME(東郷えりか訳、河出書房新社・2970円) ▼著者は英国の技術史家。グリニッジ天文台を経てフリーで著述などを行う。

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