世界推理短編傑作集(6) の商品レビュー
2022/4/29読了 乱歩チョイスの『世界推理短編傑作集』1~5巻の選に漏れた名作を補完するべく、東京創元社の戸川安宣さんが新たに13作品をチョイスしたもの。
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2018年から2019年にかけてリニューアルされた乱歩編『世界推理短編傑作集』の補遺として、戸川安宣編で新編集されたもの。 シムノン、チャンドラー、ガードナーのようなビッグネームから、ハックスリー、パール・バック、イーヴリン・ウォーのような有名作家のサスペンスフルな作品、歴史...
2018年から2019年にかけてリニューアルされた乱歩編『世界推理短編傑作集』の補遺として、戸川安宣編で新編集されたもの。 シムノン、チャンドラー、ガードナーのようなビッグネームから、ハックスリー、パール・バック、イーヴリン・ウォーのような有名作家のサスペンスフルな作品、歴史的里程標たるガボリオやM・P・シールなどなど13編が収録されている。バラエティーに富んでいて、古さを感じることもなく、とても楽しみながら読めた。 それにしても、チャンドラーは村上春樹訳が出て、今でも容易に読むことができるが、文庫でたくさん刊行されていたシムノンやガードナーはほぼ全滅で、今回短編ではあるが、久し振りに「この調子、この展開」と懐かしく読んだ。 ハックスリーの作品は人物造形が上手くて納得のいく展開。ウォーの作品にも相通ずるところがある。クリスティーやセイヤーズもそうだが、イギリスの作家は毒物を良く使う。犯罪がそれだけ社会的関心事項になっているということだろうか。 パール・バックの『身代金』はおそらくリンドバーグ事件に触発されたもの。愛児を誘拐された父親と母親の焦燥感や考え方の食い違いが良く書かれている。 アーサー『五十一番目の密室』。新味のあるミステリー、しかも誰も考えたことのない密室のトリックをめぐり起こる事件。ミステリー作家界の楽屋裏のような、バカミスのような、それでいてなぜ密室にしたのかの大胆不敵な解決。すれっからしの読者向け。 巻末の編者解説により、各作家、各編の歴史的位置付けや読みどころが丁寧に触れられている。1〜6合わせて、ミステリー短編アンソロジーのクラシックになると思う。 (各作品読み応えがあって文句を言う筋合いはないのだが、1から5に比べて本書6は700ページ超とだいぶ分厚くて、並べるとバランスが良くない(^^))
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