ナショナリズムの狭間から 新版 の商品レビュー
ナショナリスティックな言説で支配され、その本体が見えにくくなっている慰安婦問題。 本書はまず、第一義的にこれはフェミニズムの問題、性暴力の問題であることを明らかにする(それは決して、慰安婦問題のはらむ民族差別的視座を後景化させることではない)。 自分の中にあった偏見、差別意識に気...
ナショナリスティックな言説で支配され、その本体が見えにくくなっている慰安婦問題。 本書はまず、第一義的にこれはフェミニズムの問題、性暴力の問題であることを明らかにする(それは決して、慰安婦問題のはらむ民族差別的視座を後景化させることではない)。 自分の中にあった偏見、差別意識に気づかされざるを得ない。強制/非強制の議論の無効、「尊厳を奪われた」的言説の無効(彼女たちは恥ずかしくない。恥ずかしいのは日本政府である!)、我々自身が内面化している家父長制的な視点の相対化。本当に目から鱗のおもい。 そのとき立ち上がってくるのは、民族、性別を超えた連帯の可能性。彼女たちを大文字の「慰安婦」として捉えるのではなく、それぞれの人生の中で理不尽な暴力、苦しみにさらされた一人一人の人間として捉えたとき、私たちは連帯して立ち上がれるのではないか。 繰り返すが、これは決して「慰安婦」という存在を歴史修正主義的に消すこととも、この無責任の極みたる日本政府の存続を許している有権者としてのわたしの罪を軽減することでもない。
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