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イマジナシオン の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2024/07/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

眠れない。 いや、眠れるのだがすぐに起きてしまう。 目が覚めて枕元のスマホをタップすると2時とか3時はざら。 それでも4時、5時くらいまでは布団に横なりつつ微睡むのだが、いい加減中途半端加減が嫌になり、こそこそと活動を始める。 そうして読みだした本書『イマジナシオン』(フランス語で想像、仮想の意)。 家族はみんな眠りの中、間接照明を灯した暗がりで、ひっそりと読み進める。 そんな集中時間、無時間性の中だったためかこの幻想性を存分に堪能できた。 昨今の短歌人気を支える口語体のわかり易い歌。 誰もが経験している、日常の場面をくすりとさせるような表現ではっとさせる。 だけでは済まない。 口語体の歌に接すると、その分かり易さに惑わされ、「なるほど~、そういう風に切り取るのね~、面白い!」と思い、自分も1首2首くらいだったら、熟考、推敲すればキラリと光る歌が詠めるのではと思ってしまう。 (勿論思い上がりもいいところで、全然浮かばない。。) でも、toron*さんの歌には圧倒される。 この世界観は無理。 この組合せ、この比喩は、解説山田航さん言うようにまるで魔法。 それでいて、あぁ分かるという共感も湧くのがほんと不思議。 ○ねむるとき目蓋のあとに閉じてゆくプラットホームの柵らしきもの ○掃除機をかけるあなたが口ずさむそれはわたしの歌だったのに ○その喉に青いビー玉ひと粒を隠して瓶はきっと少年 ○にんげんじゃないのがばれてしまうからきみに教わる虹の配色 ○好きそう、とあなたが買ってきてくれるパンことごとくわんぱくなパン ○冷ややかに星は輝く何ひとつ為し得なかった日の黒ラベル ○くるぶしに桜の香水吹きつけるきみはマスクで来ると知りつつ ○記憶野は珊瑚のようにほろびつつ祖母の瞳のどこまでも凪 ○理科室で凝固融解蒸発し昇華してからふたりは変ね ○群青の火が点くように起立するきみらに最後の校歌を弾くよ 好きな歌は尽きない。

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2024/05/26

歌人toron*の第一歌集。実は、俺が短歌を始めた頃に日本経済新聞の短歌投稿欄の日経歌壇に掲載されていた著者の短歌を読んだことがある。とてもいい短歌で、5552のこの歌集のレビューを読んで更に気になって歌集を読んだ。 短歌にしているテーマは誰もが経験するような身近なものが多いが...

歌人toron*の第一歌集。実は、俺が短歌を始めた頃に日本経済新聞の短歌投稿欄の日経歌壇に掲載されていた著者の短歌を読んだことがある。とてもいい短歌で、5552のこの歌集のレビューを読んで更に気になって歌集を読んだ。 短歌にしているテーマは誰もが経験するような身近なものが多いが、そんな身近な事柄を短歌によってドラマチックな世界に変える。そんな力のある短歌が多いと感じた。 57577の定型に忠実な短歌が多く、「短歌ってどんな感じなんだろう」と思っている人が最初に読む歌集としてもおすすめしたい。いくつか短歌を紹介したい。 果てしない夜をきれいに閉じてゆく銀のファスナーとして終電 神さまが通り抜けるのにふさわしいきれいな五円玉えらぼうね 露店より買う万華鏡たわむれに街を破片にしてみる日暮れ 噴水で待ち合わせては待つあいだ一生分の虹を見ていた 時差を越え夜のはじまる国へゆくわたしが数え終わったひつじ はつ雪と同じ目線で落ちてゆくGoogleマップを拡大させれば この夏で最後だという先輩のスリーポイントの弧のうつくしさ (スリーポイントというのは、バスケットボールのスリーポイントシュートの略で、引かれている線の外からシュートを決めると3点入る。通常は2点)

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2024/03/25

5552さんのレビューを拝読してから読みたくて読みたくて。 レビュー拝読の際も感じていたけれど、この歌集ヤバい! ドラマチックで、眩しい程の透明感が美しくて、いい歳の私でさえキュンとした。 ページを捲ればどの歌も素敵で惚けてしまう 笑 不思議な感覚なのだけど、ポジティブな歌もネガ...

5552さんのレビューを拝読してから読みたくて読みたくて。 レビュー拝読の際も感じていたけれど、この歌集ヤバい! ドラマチックで、眩しい程の透明感が美しくて、いい歳の私でさえキュンとした。 ページを捲ればどの歌も素敵で惚けてしまう 笑 不思議な感覚なのだけど、ポジティブな歌もネガティブな歌も、絵本のようにそのシーンが浮かぶ歌集だった。 ただ、寺山修司の『地獄編』が引用された「Ⅳ」は難しかったけど。 解説で山田航さんが詠み手のペンネームについて「苗字も名前もない。性別も国籍もいまひとつわからないこのペンネームこそが、「私はあなたである」という読者へのメッセージ」と仰られていたのが印象深い。 一番好きだったのは、 「果てしない夜をきれいに閉じてゆく銀のファスナーとして終電」 その他に幾つかご紹介。 「露店より買う万華鏡たわむれに街を破片にしてみる夕暮れ」 「花びらがひとつ車内に落ちていて誰を乗せたの始発のメトロ」 「ぎんやんまみたいに頬に触れるからしばらくわたしは静かな水面」 「青空の彩度が高い 更新を止めたInstagramのなかで」 「三面鏡じっと見つめてそのなかでいちばん強いわたしを選ぶ」 「大丈夫、全然大丈夫だからさ。主役みたいに照らすなよ月」 「いずれ夜に還る予約のようである生まれついての痣すみれ色」

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2024/03/08

全部素敵、全部好き。 好みど真ん中すぎて逆にせつない。 こんな短歌作ってみたいなあ。 [果てしない夜をきれいに閉じていく銀のファスナーとしての終電] [花びらがひとつ車内に落ちていて誰を乗せたの始発のメトロ] [檸檬堂ぶら下げてゆくあかるさのちょっと足りないきみの部屋まで...

全部素敵、全部好き。 好みど真ん中すぎて逆にせつない。 こんな短歌作ってみたいなあ。 [果てしない夜をきれいに閉じていく銀のファスナーとしての終電] [花びらがひとつ車内に落ちていて誰を乗せたの始発のメトロ] [檸檬堂ぶら下げてゆくあかるさのちょっと足りないきみの部屋まで] [神さまが通り抜けるのにふさわしいきれいな五円玉えらぼうね] [鯖味噌煮定食だったレシートが詩に変わりゆく古本の中] 解説の山田航さんは“日常を魔法の世界へと変えていく”短歌だと書かれている。 そうなんだ。わたしは魔法を求めてるのだ、と強く思った。 これも山田さんがおなじようなことを書いておられたが、どうってことない、自分の日常が、他でもない、言葉によって、一瞬にしてキラキラと光りだす。 これを魔法と言わずなんと言おう。 toron*さんの比喩や発想は絶妙で、読者を置いていくことなく、手を取っていつもと違う世界に連れてってくれる気がする。

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2023/08/12

全ネット歌人の憧れは当然歌集も良い 巧みで綺麗だしユーモアだったり不思議だったり多彩 わたしは街の細胞だったって連作?が特に好き 犬という不思議な言葉

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2023/01/14

ああ、こういう瞬間をこんな感じで切り取れたら! そう感じる歌が多かった。31音の定型が多くて読みやすい。

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2022/10/29

自分も最近短歌を始め、「うたの日」に投稿するようになり、toron*さんの存在を知った。 ぶっちゃけまだ短歌歴が浅く、短歌のことは詳しくないのが原因だと思うが、toron*さんの歌が全て良いとは思えない。 それでもやっぱりtoron*さんぽいなーという独自の世界観は感じられる...

自分も最近短歌を始め、「うたの日」に投稿するようになり、toron*さんの存在を知った。 ぶっちゃけまだ短歌歴が浅く、短歌のことは詳しくないのが原因だと思うが、toron*さんの歌が全て良いとは思えない。 それでもやっぱりtoron*さんぽいなーという独自の世界観は感じられるし、憧れにしている存在でもある。 これからも「うたの日」でtoron*さんを見かけたら積極的に同じお題で挑んでいこうと思う。

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2022/05/12

『剃刀を頬の産毛にあてているわたしにだって裏側がある』 『一対のナイフもフォークのようになり傷つけ合っても並んでねむる』 『ひとりでは乾かしづらい髪の部分こころがあるならそのあたり』 『ひび割れた液晶越しじゃない空を見ていた卒業証書まるめて』 現代短歌とは如何なるものか? T...

『剃刀を頬の産毛にあてているわたしにだって裏側がある』 『一対のナイフもフォークのようになり傷つけ合っても並んでねむる』 『ひとりでは乾かしづらい髪の部分こころがあるならそのあたり』 『ひび割れた液晶越しじゃない空を見ていた卒業証書まるめて』 現代短歌とは如何なるものか? Twitterで短歌に出会った著者が綴る魔法の言葉。

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2022/03/22

toron*は、大阪府豊中市出身で、Twitterで短歌と出会い、2018年からウェブの短歌投稿サイト「うたの日」や、月刊誌「小説 野性時代」の歌壇欄などに投稿するようになり、2021年の歌壇賞では「犬の目線」(本歌集に収録)が候補作品に選ばれている。塔短歌会、短歌ユニットたんた...

toron*は、大阪府豊中市出身で、Twitterで短歌と出会い、2018年からウェブの短歌投稿サイト「うたの日」や、月刊誌「小説 野性時代」の歌壇欄などに投稿するようになり、2021年の歌壇賞では「犬の目線」(本歌集に収録)が候補作品に選ばれている。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。 本書は、第一歌集である。 私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持つようになり、俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら等による入門書や歌集、多数の現代短歌歌人を集めたアンソロジー等を読み、半年ほど前から新聞歌壇への投稿も始め、最近ポツポツ採用されるようにもなった。 本書については、大型書店の短歌コーナーを見ていたときにたまたま目にし、購入したのだが、それは、自分が投稿している日本経済新聞の歌壇(穂村弘選)で、toron*という名前を何度も見ていたからである。日々の出来事を日記風に詠んだ歌が多くを占める新聞歌壇(私の歌もそうだが)の中で、toron*の歌はとても新鮮かつ異彩を放ち、その名前も含めて印象に残っていて、同じ時期に同じステージで歌を詠んでいるという(勝手な)親近感から、思わず買ってしまったのだ。 因みに、最近の日経歌壇では、以下のような歌が掲載されていた。  海獣は食事の時間もショウだから兄の作法を誰も咎めず  自らの羽根に埋もれて水鳥は空き家の井戸のごとく夢みる  コピー機が白紙のコピーを吐くことの誤差の範囲のふつうを生きる 若く、センスのある人の感性には、どうしてこんなことを思いつくのか、どうしてこんな言葉が浮かぶのかと、感心しきりなのだが、自分の平凡な歌にも少しでもこうしたフレーバーが取り入れられるように、試行錯誤をしていきたいと思う。 (2022年3月了)

Posted byブクログ