期待と回想 の商品レビュー
・鶴見俊輔のことはよく知らず、木澤佐登志がインタビュー本として秀逸と紹介していたので読んでみる。本当に知らないんだけど、この人そんなに偉い人なのか?日本を代表する知識人という感じがしない。 ・政治家の家系に生まれ、強い母の厳しい教育に反発して犯罪や自殺未遂を繰り返した。それを見...
・鶴見俊輔のことはよく知らず、木澤佐登志がインタビュー本として秀逸と紹介していたので読んでみる。本当に知らないんだけど、この人そんなに偉い人なのか?日本を代表する知識人という感じがしない。 ・政治家の家系に生まれ、強い母の厳しい教育に反発して犯罪や自殺未遂を繰り返した。それを見かねた父がアメリカに留学させるとハーバード大学で優等の成績を収めたが、アナキストを疑われ収監される。日本が敗戦すると確信して帰国を決意し、戦後は「思想の科学」を創刊し、ベ平連の活動をする。 ・けっこう反発も感じる。 お坊ちゃんで、渡米も雑誌創刊も親の協力によっているのに、それでいて自分のことを好んで「悪人」と呼び、万引きしたことや収監されたことを得意になって語る感じ、嫌だ。 実質プラグマティズムを学んでいたのも、ハーバードの2年半だけじゃねえかと思うし、議論もガバガバで、質問に対して答えになっていないこともしばしば。 ・他方で、それでいいようにも思う。 話は興味深い部分がときどきあり、大掴みには納得できることも多い。ルールオブサム、自分の指で測るような経験による知識を重視するのは良いと思う。 一番病のエリートはその時代、その環境での最適解を出すのが早いだけで、時代が変われば易々と「転向」してしまう。という指摘は、生きるために変化し続けろという圧力のある今の時代に新鮮な感じがした。 何か今の時代に決定的に無くなってしまったような空気を感じた。
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鶴見俊輔の思想・哲学の変遷を幼少から追うことができ、興味深い。 母親との関係性は面白い。 哲学者、思想家の固有名詞に翻弄され、難解な部分も多々あるが、知的欲求を十分に満たしてくれる一冊。 以下抜粋~ ・本はめちゃめちゃ読んだ。家に帰りたくないから神田で降りて古本屋で立ち読みする...
鶴見俊輔の思想・哲学の変遷を幼少から追うことができ、興味深い。 母親との関係性は面白い。 哲学者、思想家の固有名詞に翻弄され、難解な部分も多々あるが、知的欲求を十分に満たしてくれる一冊。 以下抜粋~ ・本はめちゃめちゃ読んだ。家に帰りたくないから神田で降りて古本屋で立ち読みするんだ。1日に四冊、本を読まなければ眠れない。小学校を出るまでに、だいたい一万冊は読んだ。(笑)
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鶴見俊輔には『戦争が遺したもの』という同様の対談型自伝があるが、同書が「何をしたか」に重点を置かれているのに対し、本書は「「何をしたか」に至る前に何を考えたか」に重点を置かれていると感じた。 鶴見はプラグマティズムの哲学者、となる訳だが、ではプラグマティズムって何?、となると、...
鶴見俊輔には『戦争が遺したもの』という同様の対談型自伝があるが、同書が「何をしたか」に重点を置かれているのに対し、本書は「「何をしたか」に至る前に何を考えたか」に重点を置かれていると感じた。 鶴見はプラグマティズムの哲学者、となる訳だが、ではプラグマティズムって何?、となると、本書においてはその言行の内の言、『戦争が遺したもの』においてはその内の行、を答えていると思った。 己の主義を実践に移した稀有な哲学者は今年生誕百年を迎えた。 くまざわ書店天王寺店にて購入。
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まさに「市井の人」から生み出される思考ではないか、と思った。むろん鶴見俊輔はアメリカでプラグマティズムを学び学問的鍛錬を積んだ人だが、その鍛錬に淫しないトーシロ/アマチュアの視点を忘れず、「日常」の中にこそ思索の材料を求めていった人ではないかと思ったのだ。だからここで語られる鶴見...
まさに「市井の人」から生み出される思考ではないか、と思った。むろん鶴見俊輔はアメリカでプラグマティズムを学び学問的鍛錬を積んだ人だが、その鍛錬に淫しないトーシロ/アマチュアの視点を忘れず、「日常」の中にこそ思索の材料を求めていった人ではないかと思ったのだ。だからここで語られる鶴見の言葉は実に平たく明晰。「リベラル保守」の始祖的な存在として読むこともできるし、穏健にして愚鈍な左翼のパイオニアとして読むこともできる。何度も読み返して彼の姿勢を自家薬籠中の物としたい。殊に、過度に厳密さが求められる時代だからこそ
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