台湾有事のシナリオ の商品レビュー
笹川平和財団安全保障研究G「日米同盟の在り方」研究プロジェクトの成果物。「はじめに」には、本書の執筆陣が日本側メンバーとなって、米国ヘリテージ財団のメンバーとも議論を重ねたとある。ヘリテージ財団と言えば、レーガノミクスの立案と実践など反共政策を支え、現在はトランプ派とも近い立場...
笹川平和財団安全保障研究G「日米同盟の在り方」研究プロジェクトの成果物。「はじめに」には、本書の執筆陣が日本側メンバーとなって、米国ヘリテージ財団のメンバーとも議論を重ねたとある。ヘリテージ財団と言えば、レーガノミクスの立案と実践など反共政策を支え、現在はトランプ派とも近い立場とされる。その意味では、まさに「中の人」たちによる専門的な知見が記されている、と見てよいのだろう。 ふだん文学表現を扱っている立場からすると、軍事・安全保障の専門家たちの使う用語の抽象性がとても気になる。できるだけ具体的な状況や場面、情景を想像させないような、形式的な論理操作として人間の傷つけ・傷つけられる場面を議論できるような、抽象的な略語がたくさん用いられている。それこそまさに、伊藤計劃が『虐殺器官』で問題化していたことだったはずだ。沖縄や南西諸島の人々の主体性がまったく問題にされていないのも象徴的。
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最近の戦況報道番組に出演している人で検索すると本書がヒットした。 まえがきと目次と執筆者の履歴は読んだ。 本書は、ロシアのウクライナ侵略前にまとめられたものである。 興味深いのだが、しばし積読。 外省人とか内省人とか光復大陸とかいう言葉を、 以前よく目にしたが既に死語なん...
最近の戦況報道番組に出演している人で検索すると本書がヒットした。 まえがきと目次と執筆者の履歴は読んだ。 本書は、ロシアのウクライナ侵略前にまとめられたものである。 興味深いのだが、しばし積読。 外省人とか内省人とか光復大陸とかいう言葉を、 以前よく目にしたが既に死語なんだろうか?
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台湾有事に日本はどうなるのか、どうすべきかを専門家たちが論述する。 台湾がもつ地政学的な重要性(シーレーンと戦略原潜の基地になりうる)、台湾有事のシナリオ、宇宙、サイバー、電磁波領域を含めた各種戦、サイバーも含めたグレーゾーンでの国際法、日本の防衛政策と幅広く扱っている。 日本が...
台湾有事に日本はどうなるのか、どうすべきかを専門家たちが論述する。 台湾がもつ地政学的な重要性(シーレーンと戦略原潜の基地になりうる)、台湾有事のシナリオ、宇宙、サイバー、電磁波領域を含めた各種戦、サイバーも含めたグレーゾーンでの国際法、日本の防衛政策と幅広く扱っている。 日本が台湾有事に大慌てすることなく対応するには整理しなければならないことが山ほどある。しかし、その議論自体が中国を煽ってしまうことになり、非常に難しい。少なくとも安全保障の実務者、研究者は頭の体操をしておかないといけないのだろうな。
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台湾有事を巡って起こりうる状況や、抱えている課題を整理できる一冊。安保三文書決定以前に出された本だが、基本的な考え方は概ね変わらないと思われる。 在留邦人の救出、在日米軍基地や自衛隊基地に避退する台湾軍機の受け入れ、中国本土を攻撃する米軍機の空自機による護衛、海自護衛艦・潜水艦...
台湾有事を巡って起こりうる状況や、抱えている課題を整理できる一冊。安保三文書決定以前に出された本だが、基本的な考え方は概ね変わらないと思われる。 在留邦人の救出、在日米軍基地や自衛隊基地に避退する台湾軍機の受け入れ、中国本土を攻撃する米軍機の空自機による護衛、海自護衛艦・潜水艦による中国海軍艦艇の行動阻止、機雷掃海、ハイブリッド戦やサイバー空間での戦いへの備え等々、台湾有事を自分事として捉える良い機会になった。
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もっとミリタリーよりかと思って購入したが、グレーゾーン事態/ハイブリッド戦対策よりだった。 なお、読み終わる前に安保三文書が改定されたので前提が変わった模様w
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大陸による台湾侵攻が起きれば日本の南西諸島は中国軍による海上航空封鎖を受け安全保障上の重大な事態となる。そうした事態が起きた場合のシナリオや日本が抱える課題などについて、元防衛省・自衛隊の関係者が中心に論じたもの。台湾が中国に支配された場合、中国海軍が太平洋に進出し易くなり、それ...
大陸による台湾侵攻が起きれば日本の南西諸島は中国軍による海上航空封鎖を受け安全保障上の重大な事態となる。そうした事態が起きた場合のシナリオや日本が抱える課題などについて、元防衛省・自衛隊の関係者が中心に論じたもの。台湾が中国に支配された場合、中国海軍が太平洋に進出し易くなり、それが米国にとっても安全保障上の脅威になり得るというのは新たな発見だった。また、近年は武力行使と一概には言えないグレーゾーン型のハイブリッド戦術を用いることが想定されており、日本はそうした事態への対処が必ずしも十分となっていないらしい。 本書の内容の多くは専門的で軍事の専門知識がないと理解するのは容易ではない。ただ、軍事シナリオの前提となる外交・安全保障観には疑問があった。中国を、ベールに包まれ台湾を征服しようと企む敵国と断じるだけでは何も前進しないのではないか。日々挑発行為に晒されている防衛省・自衛隊がそうした認識しか持てないというのであれば、政治家がきちんと文民統制したうえで、外交チャネルを整備していくことが求められる。 あと、本書は全体的に誤字が多い気がした。
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ウクライナの戦争と並んで、台湾有事が語られることが多いので、自分の中で整理したいと思って読んでみた。2022/1/30初版とあるから、ウクライナ戦争の直前の出版だ。 初心者向けの本ではない。個人の主張を述べたものではなく、『笹川平和財団安全保障グループの「日米同盟の在り方研究」...
ウクライナの戦争と並んで、台湾有事が語られることが多いので、自分の中で整理したいと思って読んでみた。2022/1/30初版とあるから、ウクライナ戦争の直前の出版だ。 初心者向けの本ではない。個人の主張を述べたものではなく、『笹川平和財団安全保障グループの「日米同盟の在り方研究」プロジェクトにおける議論の成果』だという。政治や軍事の専門用語が頻発する。戦争はよくないとか、平和が一番とか、そういう議論は一切出て来ない。さらに中国が台湾に武力侵攻するか否か、という議論はすっ飛ばして、武力侵攻が現実となったときに日本はどう動くべきか、という研究だ。 中国の習近平国家主席は、中国政権=中国共産党が台湾統一の強い意志を持ち、軍事力に訴えるという選択肢を排除しないと明言している。一方のアメリカ・バイデン大統領は台湾有事でアメリカがどうするか明言しない、という曖昧戦略から一歩踏み出して、「決意がある」と言い方をした。アメリカが、自由主義陣営の一員としての台湾を見捨ない(見捨てられない)事情も、いいたいことはよくわかった。 台湾に中国が軍事侵攻すれば米国が「何か」をして、そのとき台湾からごく近く、アメリカ軍の基地があり、日米同盟を結んでいる日本が何もしない、という状況は考えにくい。台湾有事は日本有事なんだ、といまさら認識して、ちょっと鳥肌が立った。
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台湾有事をシミュレーションし、日本の課題を検証している。 どう言う考え方に基づいてどこに向かうべきか、参考になる。
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ロシアのウクライナ侵攻が現実になる前に出版された,台湾をめぐる安全保障を考える本。具体的な軍事作戦の推移なんかも想定していて勉強になる。 侵略者が果実を得るのか手痛いしっぺ返しを食らうのか,今まさに習近平は注視してるのだろう。 "留意すべきは、能力がたとえ不足しても、...
ロシアのウクライナ侵攻が現実になる前に出版された,台湾をめぐる安全保障を考える本。具体的な軍事作戦の推移なんかも想定していて勉強になる。 侵略者が果実を得るのか手痛いしっぺ返しを食らうのか,今まさに習近平は注視してるのだろう。 "留意すべきは、能力がたとえ不足しても、意思次第によっては台湾侵攻もあり得ることを予期しておかねばならない。揚陸艦艇や輸送機が不足していても、習近平国家主席の一喝で、漁船までも根こそぎ動員して、台湾海峡を船舶で埋め尽くし、一気に海峡を渡る挙に出る可能性は否定できない" そしてそのような動員の前例として,あの映画にもなったダイナモ作戦を挙げている。 "第二次世界大戦のダンケルクからの撤退作戦(ダイナモ作戦)がそれを証明している。ウィンストン・チャーチル英首相は、軍用艦艇のみならず、漁船、貨物船、ボートなどあらゆる船舶を動員して、 九日間で約三四万人を仏海岸ダンケルクから英国本土に撤退させた。 軍事的能力の観点では着上陸侵攻能力は限定的であるが、意図の観点からあらゆる手段を尽くして台湾島を占拠する可能性は完全に否定できない" 国際・国内の諸情勢がいったいどう転がって開戦に繋がるか,今回の戦争同様予測し難いのが怖い。抑止が破綻することのないよう願うほかない。
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