民主主義が科学を必要とする理由 の商品レビュー
トマス・クーンに代表される1960年代以降の科学観において一種の危機に陥った専門知への信頼を、懐疑主義や相対主義を乗り越えて擁護し、民主主義の内において「それでも科学が選ばれなければならない」ことを強く主張する著作。 科学的真理がかつて信じられていたような卓越した存在ではなく...
トマス・クーンに代表される1960年代以降の科学観において一種の危機に陥った専門知への信頼を、懐疑主義や相対主義を乗り越えて擁護し、民主主義の内において「それでも科学が選ばれなければならない」ことを強く主張する著作。 科学的真理がかつて信じられていたような卓越した存在ではなくなった世界において、それでもなおスペシャリストとしての専門家とその知識の価値が「選ばれる」べき理由と、そうした専門知を民主主義がいかなるルールのもとで活用すべきかが具体的提案と共に示される。 この著作において科学という専門知は擁護されるが、正当化はされない。厳然たる真理の不在は認めたままに、そして科学の営みそれ自体が時として民主主義的プロセスから逸脱する側面を持つことをも認めたままに、それでもその必要性が力強く説かれていく。
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主張の趣旨 ・科学は政策決定の基礎となるべきであるが、意思決定に関与してはならない ・一方で政治的意思決定の際、科学と異なる提言を出す場合には、必ず意思決定の過程(科学に基づく見解を棄却した理由)を述べる必要がある ・専門家で現在わかっていることとその確度については、ふくろう委員会が意思決定者に伝える 興味深いと感じた点 ・専門家の中には、学問として研究しているものだけでなく、経験を持つものも含む
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科学は様々な攻撃を受けている。時には、環境に対する災厄の道具とみなされたり、経済的観点だけで価値を考える政治体制から圧力を受けたりもする。それでも、民主主義社会は科学を必要としている。その理由を具体的な事例と研究の蓄積によって丁寧に説明し、社会における科学の役割、科学者たちの道徳...
科学は様々な攻撃を受けている。時には、環境に対する災厄の道具とみなされたり、経済的観点だけで価値を考える政治体制から圧力を受けたりもする。それでも、民主主義社会は科学を必要としている。その理由を具体的な事例と研究の蓄積によって丁寧に説明し、社会における科学の役割、科学者たちの道徳的責任を問う、科学論・専門知論の第一人者によるマニフェスト。
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