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ミクロコスミ の商品レビュー

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2023/09/16

本書はフィクションではあるが、基本的には語り手がトリエステとその周辺地域の風土や生活を淡々と語る構成となっており、文学作品というよりは、歴史の本を読んでいるような気分になった。著者のクラウディオ=マグリスがトリエステ出身ということから、彼の実体験や見聞きした話が多分に反映されてい...

本書はフィクションではあるが、基本的には語り手がトリエステとその周辺地域の風土や生活を淡々と語る構成となっており、文学作品というよりは、歴史の本を読んでいるような気分になった。著者のクラウディオ=マグリスがトリエステ出身ということから、彼の実体験や見聞きした話が多分に反映されているのだろう。高校世界史でも出てくる地域ではあるが、国家や政治といったいわゆる「表向き」の歴史ではなく、その背後にある「個人」にスポットライトが当てられている。トリエステはイタリアからすれば、東欧社会に相対する最前線であり、冷戦当時イタリアとユーゴスラビアとの間では人の交わりは少ないと勝手に思っていたが、実は双方向の人の往来がそれなりにあったということが分かり興味深い。 文章自体はそれほど難しくはないが、現地の人名、地名が多く出てくるので、背景知識がないと読みづらい作品だと思う。人名については人名索引が充実している(それでもほとんど知らない歴史上の人物である)が、地名は目次の直後に簡略な地図があるのみで、どこのことを話しているのかよく分からないまま読み進めることになってしまった。イタリアの地名はもとより、本書はスロベニア、クロアチアの地名も多く出てくるが、Googleマップにヒットする地名は大体半分ほどであった。イタリアでは一般向けの本として刊行されているようだが、どちらかというと地域研究者や歴史研究者向けの本なのかもしれない。 誤植が多いのがややもったいないところ。

Posted byブクログ