平安京の下級官人 の商品レビュー
学校の歴史の授業では庶民の暮らしに言及がないのが不満だっだが、この本は『小右記』や『御堂関白日記』などをもとに庶民の様子を垣間見せてくれる。情報量が多すぎて消化しきれないが、いずれ再読したいと思う。
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平安時代は決して平安ではなかった。そのことを痛感することができる本である。それも摂関政治の絶頂期と言える藤原道長や頼道の時代でもかなりの乱行が幾つもあった。本書は歴史学の立場で文学作品は一等資料としては用いず、公家日記の類を根拠にして論じられている。しかも対象は地下と呼ばれた下...
平安時代は決して平安ではなかった。そのことを痛感することができる本である。それも摂関政治の絶頂期と言える藤原道長や頼道の時代でもかなりの乱行が幾つもあった。本書は歴史学の立場で文学作品は一等資料としては用いず、公家日記の類を根拠にして論じられている。しかも対象は地下と呼ばれた下級官人なのである。 貴族にとってこうした下人はまさに卑しき人なのであって、人権の配慮はほとんどない。下人が死傷したとき彼らが気にしたのは穢れのために公的行事が中止にならないかということであった。下人から見た記録がないのだから、偏光グラスを通して時代を伺うしかない。 本書は歴史学者らしく文献の紹介をしながらも、しばしば現代人の視点で人物評価がなされるところが面白い。平安時代の一般的な通念を見事に崩してくれた。和泉式部や紫式部の生きていた時代が実はワイルドであったことを確認できた。文学の描く世界と現実とは当たり前だが乖離しているかもしれないと考えることができた。
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平安時代の下級官人の置かれていた状況、人事への一喜一憂やその勤務振り、生活の実相を、「古記録」を用いて明らかにしようとするもの。 摂関期になると下級官人が昇進できるのは限られたポストまでとなってしまっていたが、役人にとって人事は何よりも重要。悲喜こもごもが語られる。また、こ...
平安時代の下級官人の置かれていた状況、人事への一喜一憂やその勤務振り、生活の実相を、「古記録」を用いて明らかにしようとするもの。 摂関期になると下級官人が昇進できるのは限られたポストまでとなってしまっていたが、役人にとって人事は何よりも重要。悲喜こもごもが語られる。また、この時代何よりも求められていたのは、儀礼という政務を「先例」、次第通りに行うことで、ここでも失敗の例が残されている。 その他、闘乱、殺人、勤務の懈怠など様々な出来事が紹介される。もちろんこうした古記録に書かれる出来事は、珍しいと思われるからこそ記録に残されたのであろうが、それにしても驚かされるようなことが次から次へと出てくる。特に内裏への闖入が結構あったというのはどうなのだろうか。警備の懈怠ということのようで、本来厳罰ものだと思うのだが、どうだったのだろう。 いろいろな事例により当時の様子も分かり興味深かったのだが、どうしてそのようなことが起こったのか、それにはどういう背景なり意味があるのかが良く分からないままに多くのエピソードが紹介されるので、ちょっと消化不良になってしまったのが残念。
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※このレビューにはネタバレを含みます
下級官人の業務・日常・取り巻く社会を御堂関白記・権記・小右記などの記録から導き出している そこかしこに実資(大河ドラマではロバート秋山)の名前がでてくる、日記にマメな貴族さん 興味深かったのは、触穢に対するこだわり(本朝独特の忌む風習)は疫病と関係あるのではないか、天然痘等の最悪の死を前提に考えると忌引き等で出仕を一定期間憚る事が自然に思える 当時は天然痘は大部分の人がり患していて、顔にアバタがある事がデフォであり、鉱物性の化粧品で白く厚塗りをしていた理由もうなづける 【疫病の流行】疱瘡・麻疹など 989、993、994、995、998、999、1000、1001、1005、1008、1014、1015、1017、1018、1020、1021・・・延々と続く疫病の流行
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平安時代の摂関期での、平安京での下級官人について、 古記録から拾い上げ、その仕事や生活等を紐解く。 ・初めに 序章 摂関期の平安京 第一章 下級官人の仕事 第二章 生活のあれこれ 第三章 恐怖の対象 第四章 平安京の人びと ・おわりに 平安京の日々 略年譜、関係地図(平安京内...
平安時代の摂関期での、平安京での下級官人について、 古記録から拾い上げ、その仕事や生活等を紐解く。 ・初めに 序章 摂関期の平安京 第一章 下級官人の仕事 第二章 生活のあれこれ 第三章 恐怖の対象 第四章 平安京の人びと ・おわりに 平安京の日々 略年譜、関係地図(平安京内)、関係地図(平安京外)、 平安宮大内裏地図、平安宮内裏地図、参考文献有り。 『本朝文粋』『池亭記』『権記』『小右記』等の古記録に、 僅かながら残る摂関期、平安京での下級官人の姿。 五位以上の貴族と、六位以下の下級官位や無位の人々との 大きな格差。更に、下級官人の家に生まれたら、 ほぼ下級官人にしか任じられない現実がある。 上司と人事との駆け引き、先例が重い儀式や儀礼、 それらの中での縁の下の力持ちとしての存在にとっては、 途轍もなくしんどい仕事だと思われます。 だからこその捺印漏れやミス、儀式での失儀はあるし、 やってられないよ~と怠勤したり、ずる休みしたり。 でも、怠状・過状(始末書)を提出して謹慎してれば、 赦免されることが多かったそうな。 学者や相撲人、競馬の騎手や射儀の射手、大工等の悲喜こもごも、 遊興や博奕、男女の関係、信仰などをも紹介しています。 更に、貴族のストレスが下人にも広がり起こる事件有り。 貴族の権力闘争が及ぼす合戦。 下衆、学生、女性、僧の闘乱。うわなり打ちも。 殺人事件、様々な形態の盗賊たち、下人や雑人たちの闖入。 朝廷に寄せられる下級官人や百姓の愁訴。 そして庶民の貧窮と「貴人の義務」。 政府を壊滅状態にした疫病、数々の災害と人命。 平安?と感じるほど大変な平安京ですが、 多分、庶民はしぶとく生き抜いたと思いたいなぁ。 穢を忌み儀式をどうするかに重点を置くことは、 「現代語訳吾妻鏡」を読んでいると、鎌倉時代は平安時代の 延長線なのだなぁとも、しみじみ感じました。
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摂関期の平安京に生きた下級官人や庶民の仕事や生活を巡る様々なエピソードを一次史料を基に紹介。 平安時代の人々の生き様が知れて面白かったが、いろんな話を盛り込みすぎで、それぞれの記述が簡潔なので、エピソードの背景や詳細がよくわからないものが多かった。
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平安京の下級官人 2023年1月7日読了 平安時代の文書における下級貴族への記述を、ていねいに列記した一冊。 新書というよりも研究書や論文のようなまとめ方だと感じた。 一般受けはあまりしなさそうだが(使用されている言葉が大変わかりやすく、合間の筆者のコメントも面白かったが)、...
平安京の下級官人 2023年1月7日読了 平安時代の文書における下級貴族への記述を、ていねいに列記した一冊。 新書というよりも研究書や論文のようなまとめ方だと感じた。 一般受けはあまりしなさそうだが(使用されている言葉が大変わかりやすく、合間の筆者のコメントも面白かったが)、多くの文献にあたり下級官人が登場する記述をていねいにすくいあげ、ジャンルごとにまとめてある。 本書の中で、当時の人(下級官人)の「死」に対する価値観が興味深かった。 上級貴族たちが下人や下衆の死を自らの書物や日記に記述することがあるのだが、 それらはもっぱら宮中にて「死」が発生した時に限られる。 当時「死」は忌み嫌われたものであり、「死」を身近に見たり触れたりした場合、 儀式を延期せねばならなかった。 そのため、死に瀕した人を前に、自らの穢れを恐れて助けないこともあったようだ。 現在では考えられない価値観である。 つまり、上級貴族が彼らの死を記述したのは、 亡くなった自身の部下や近しい召使のことを想ってというわけではないのだ。 様々なあり方の「死」に際した場合、 彼らがどのように判断し、儀礼をおこなったか否かという 前例を記録しておくためであったのだ。 人々の死よりも穢れを恐れ、儀礼が滞りなく実行することを優先する時代。 階級社会であり「命の価値」に明らかな差があった時代。 悪であると一概には言えないが、現代に生まれてよかったと思った。
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摂関期の平安京における下級官人とその周辺を中心に、古記録からその実態を探る一冊。仕事や生活、災害・宗教といった様々な事例が豊富に紹介されていて、当時の都の庶民生活の一端に触れられる内容。
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自分が読んでみたかった内容であったが、内容は淡々としており盛り上がりがない。 教養書なので仕方ないかと…
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生まれ変わっても平安時代には行きたくないなと思うくらいには理解出来ました。大学受験の日本史レベルの知識とよくわからない単語(固有名詞)をスルーする能力さえあればなかなか面白く読めると思います。
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