鈍色の奴等 の商品レビュー

冬矢冴(著者)

2022/11/23

※
壮絶な程スパルタ教育の父と
直情径行気質の母の元で育った姉と弟。

虐げられた姉弟が歩む人生は、真逆と
言えるほど異なり離れていく。

幼い頃に生じた苦痛と歪みは消失せず、
広がり続けていく深く濃い膿。

奇妙な形の家族が堕ちて行く物語。

2022/10/22

教育熱心な親の元、大学出て、普通に就職して、そのまま行けば全く穏当な、人並みの人生送れたっていうのに自ら放擲しちゃう人。そんな人たくさんいるんだろうな‥

2022/05/22

本書にてデビューの作家。
ページ数68にギュッと詰まった濃い内容。

裕福な家庭に育つが、ずっと父に教育虐待を受けていた姉弟。
姉は、大学中退をし家を飛び出してからSM女王として暮らす。
弟は、仕事を休職し精神を病み、姉に連日のように呪詛のメールを送り続けて自殺をする。

両親とも暮らさず、紐のようなクズな恋人とも離れ、SM女王の仕事も辞めて、向かった先。
そこも新たな敗北への始まりにすぎない。

なんともいえない救いようのない暗さ、闇の中で蹲るしかないような身動きのとれない絶望を感じた。
ラストも不気味さしかなかった。

2022/02/27

この作者、何者なのか？
暴力に次ぐ暴力、ロスジェネ世代の諦念、SM好きなら舌舐めずりして悦ぶ様な女王様からの罵倒シーン。
過激なシーンのオンパレードなのに、作者は新人に有りがちな自身の筆に酔う事もなく、極めて淡々とした筆致で一つ一つの描写を圧倒的な力で描き切っている。
末恐ろしい作家が出てきたもんだ、素顔が判らない、男か女かも判らないが小説を読めばその｢人｣が見えてくるのは自明の理だ。この短さも己の性に合っていた、我が持論は｢世に出回る大多数の長編は蛇足の宝庫｣である。