雑賀のいくさ姫 の商品レビュー
「あー…終わってしまった…」と読了が惜しくなってしまう程だった。読み始めると、頁を繰る手が停められなくなる。そして読了があっと言う間という感じになってしまう。文字どおりに「爽快!」という読後感のエンターテインメント小説であると思う。 戦国時代を背景とした物語である。知られている史...
「あー…終わってしまった…」と読了が惜しくなってしまう程だった。読み始めると、頁を繰る手が停められなくなる。そして読了があっと言う間という感じになってしまう。文字どおりに「爽快!」という読後感のエンターテインメント小説であると思う。 戦国時代を背景とした物語である。知られている史上の人物をモデルとした作中人物も多く登場するが、その限りでもない作中人物も多い。物語の進行の中で、視点人物が適宜切り替わりながら、テンポ好く展開している。が、最も主要な視点人物は、ヒロインである「いくさ姫」こと鶴と、彼女と出会うイスパニア人のジョアンということになるであろう。 物語は海で漂流している南蛮船の上から起こる。 1人で甲板上に在るのがイスパニア人のジョアンだ。遠い国々への憧れから、フィリピンに出て総督府の仕事をしていた青年だが、思い立って日本に行ってみようとする。ソウリン・オオトモなる領主が支配する港に出て交易をするという船に便乗して出発した。航海中、船内で反船長派と船長派との諍いが起る。やがて死者が出るような騒乱状態になってしまう。船の便乗者であるジョアンは船倉で混乱をやり過ごそうとしていた。そうすれば、死者多数で、生き残った者達は船を放棄して小舟で脱出してしまった。1人では操船も困難な船にジョアンは1人で残った。やがて嵐になり、帆柱が壊れる等、船は少し大きな損傷を受けて、只管に漂流するということになってしまう。 途方に暮れるような様子であったジョアンだったが、海賊の争いに巻き込まれる。争いを制した側に連れて行かれる。そして船は彼らの所へ曳航された。 ジョアンを連れ帰った一団を率いていたのは若い女性だった。名を鶴と言う。紀州の雑賀衆の領袖、「雑賀孫一」こと鈴木孫一の娘であるという。周辺では「いくさ姫」と綽名される。鶴は約30人の一党を率い、「鶴丸」という船で辺りの海で活動していた。そして他地域から入り込んだ海賊を撃退しようとした時にジョアンを連れ帰り、船を曳航して持ち帰ったのだった。 ジョアンの鶴の下、雑賀衆の村でで暮らすことになった。巻割りや炊事の手伝いというような、様々な雑用に使われる状況であった。鶴はジョアンが乗っていた船を修理、改装して使おうと「鶴丸」を売ってしまい、村の造船廠で作業を進めていた。そのジョアンに鶴が語った夢は、改装した南蛮船を駆使して、南の国々と交易をして様々な見聞をし、そして雑賀の村を豊かにするということであった。ジョアンはそれに共鳴もしたが、否応なく鶴の一党に参加することとなる。 改装が成った南蛮船を操船する演習が繰り返され、鶴の一党が船を扱えるようになった。船は鶴の綽名「いくさ姫」に因んで「戦姫丸」(せんきまる)と名付けられた。「戦姫丸」は出航するのだが、その行く手に暗雲が立ち込めていた。暗雲とは、南の海で暗躍する強大な海賊集団である。林鳳の一党は、琉球を制圧し、そこを拠点に九州を征服することを画策しているのだという。「戦姫丸」は、この企てに抗う動きの中に入って行くことになるのだ。 南海を舞台に繰り広げられる冒険、戦いが描かれる物語だが、多彩な作中人物達が何れも面白い。鶴は意外な秘密も持っていて、それも明かされ、その秘密と向き合うことにもなって行く。 面倒な理屈抜きに、冒険や戦い、作中人物達のドラマが愉しい。御薦め!!
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NHK「ブラタモリ」の対馬で蒙古襲来時に 三万の軍勢と船体のCGを見て、 コレだったのね!とぞーとしました。 林鳳が頭の中で「ラオウ」に変換されて困りました。---ケンシロウは居ないのに--- 孫一が 「鶴。お前に一つ、教えておく。人は 海の上だけでは生きてはいけん。...
NHK「ブラタモリ」の対馬で蒙古襲来時に 三万の軍勢と船体のCGを見て、 コレだったのね!とぞーとしました。 林鳳が頭の中で「ラオウ」に変換されて困りました。---ケンシロウは居ないのに--- 孫一が 「鶴。お前に一つ、教えておく。人は 海の上だけでは生きてはいけん。帰る港、拠って立つ大地があってこそ、人は人でいられる」 -------- 「なににも縛られることなく、思うままに生きろ。だがこれだけは忘れるな。お前は俺の娘で、お前の帰る港は雑賀だ。」 もう!孫一に惚れてまうじゃない‼️ それに兵庫もいいけど、左近! 左近~!がんばれー!と応援したいなぁ~。 ジョアンはしおれた茄子よ。(笑) 久々の海戦もので、面白かったです。
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さまざまな人物の視点で話が展開されており、それぞれの登場人物がどのような想いを持ちながらその場にいたのかが想像でき、とても読み応えがあった。 また、どの登場人物も個性が際立っており、とても愛着を持てた。
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紀州雑賀水軍の「いくさ姫」と呼ばれる鶴は、操船と射撃の名手で男まさりの19歳の少女。イスパニアのイダルゴ(栄誉ある戦士の末裔)の家系に生まれ、ジパングにやってきたものの、難破し囚われの身になっていたジョアンを救い、家来にする。 鶴は、ジョアンの乗ってきたカラベルという型のイスパニ...
紀州雑賀水軍の「いくさ姫」と呼ばれる鶴は、操船と射撃の名手で男まさりの19歳の少女。イスパニアのイダルゴ(栄誉ある戦士の末裔)の家系に生まれ、ジパングにやってきたものの、難破し囚われの身になっていたジョアンを救い、家来にする。 鶴は、ジョアンの乗ってきたカラベルという型のイスパニア船を修復した「戦姫丸」で異国に向け商いの航海に出るが、瀬戸内海で、村上水軍に捕まる。さらには、毛利、大友、島津と戦国の西国大名オールスター水軍と、日本を狙う明国の強大な海賊・林鳳との海戦に巻き込まれていく。 終盤の奄美大島周辺での壮絶な海戦シーンはボリュームをたっぷり取り息もつかせぬシーンの連続。ただ、日本水軍と林鳳率いる水軍、時折立場を変え、それぞれの視点から描かれているため、「敵」、「味方」が入れ替わり、少し分かりづらかった。 主人公・鶴はとにかくワンマンだが、複雑な生い立ちも持っている。また、島津の姫・巴、林鳳の手下だが怪しげな月麗と、強い個性と魅力を持った女性を登場させ、物語に彩りも持たせている。 全体的にテンポと歯切れの良い文章で書かれ、夢を抱きながらも臆病なところがあるジョアンや鶴を追いかける許嫁の左近に滑稽さがあり、読みやすく、楽しませる海洋冒険小説になっている。
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これこれ。天野さんのこういうの待ってた。武将が主人公よりも、やっぱり市井の民の希望や心意気が感じられるこういう物語がいい。 キャラクター造形も好きだし、物語の締めくくりも素敵だった。 漫画チックな王道だっていいじゃない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ジョアンはマルコ・ポーロの『東方見聞録』を読み、かつて十字軍に参加した先祖のようになりたいと願い、下働きなどで金を稼ぎ、イスパニアのフィリピン総督府で会計官の募集に飛びついた。四か月の航海に耐えてたどり着いたものの、目指すハポン(日本)は遠い。 だが、そんなある日、彼はようやく憧れのジパングへ行くことになるのだが……。 乗った船は仲間割れの最中に嵐にあい、ジョアンのみが生き残った。 食べるものも飲むものもなくなり、考えることを放棄したジョアンはそのまま眠りについたであるが、目覚めたときには穴倉の中に閉じ込められていた(^▽^;) そして、彼は一人の若い女性に出会う。鶴と呼ばれる紀伊雑賀のいくさ姫と呼ばれる雑賀孫一の娘であった。 ジョアンの乗ってきた南蛮船を修理しながら目を輝かせる鶴。彼女にあこがれのセニュリータの姿を求めるジョアンは、彼女が軍船に興味を持つことを諫め、止めるために家宝のレイピアで鶴に勝負を挑むのだが、ぼろ負けしてしてしまう。 そんなことからジョアンは鶴の下僕となるのだが、このポン〇ツ下僕と女傑姫の行先は。 本当に楽しい一冊でした。 女性陣のかっこいいこと。いくさ姫こと鶴も、島津の巴姫も、鶴の仲間でる銃の名手の蛍もしとやかな女性に見えて肉食系女性の智もみんな大好きです。 とくに鶴の敵方になる月麗もいいなぁ。 そんな女性たちもそうですが、彼女たちと共に戦う男性陣もユニークな人物ばかり。その中のピカ一なのはジョアンなのでしょうが、鶴の父・孫一や奴隷として日本へ連れてこられたアントニオ。鶴の目付け役・喜兵衛。 そして、九州を奪い取ろうとする海賊・林凰との海戦も読みごたえがありました。 楽しかったです。そして、こういう本を読むと元気がでるなぁと思うのです。
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