法王庁の抜け穴 の商品レビュー
ジッドの小説は高校生の頃に『狭き門』『地の糧』『背徳者』などを読み、何となく卒業。何十年振りかに手に取ったのが本書『法王庁の抜け穴』だが、こんなにも面白い小説だったのかと驚いた次第。 各章は次のとおりだが、第四の書を除き、その章で主に活躍(?)する登場人物の名がタイトルとなっ...
ジッドの小説は高校生の頃に『狭き門』『地の糧』『背徳者』などを読み、何となく卒業。何十年振りかに手に取ったのが本書『法王庁の抜け穴』だが、こんなにも面白い小説だったのかと驚いた次第。 各章は次のとおりだが、第四の書を除き、その章で主に活躍(?)する登場人物の名がタイトルとなっている。 第一の書 アンティム・アルマン=デュボア 第二の書 ジュリウス・ド・バラリウル 第三の書 アメデ・フルリッソワール 第四の書 百足組 第五の書 ラフカディオ 科学至上主義のフリーメーソン会員だったが、ある奇蹟により不自由な体が恢復し回心したアンティル、その義弟でアカデミー入りを望む凡庸な作家ジュリウス、幽閉されているローマ法王を救出するために資金が要るとの口実で詐欺行為を働く闇組織百足組に属するラフカディオの旧友プロトス、ジュリウスの義弟で法王救出にローマに向かう善人のアメデ、ジュリウスの父の私生児で思わぬ遺産を相続することになったラフカディオ。これらの人物が主となっていろいろな出来事が出来し、思わぬ偶然もあって事件は意外な展開を見せていく。 読みどころはいろいろあるが、有名なところはラフカディオの「無償の行為」と呼ばれるもの。フランス語の"gratuit” 日本語だと「無償の」とか「動機のない」といった意味なのだが、そのラフカディオの行為が大きな波紋を引き起こし、またラフカディオ自身の感情も大きく変化することになる。それまでのストーリーが一気に結び付いてクライマックスに至るところが非常に面白い。 訳文もかなり平易で読みやすいので、カトリックのことなど多少理解しづらくともスイスイ読めるだろう。
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「狭き門」は読んだか読んでないのか記憶にない。しかし作家名作品名共に重みのある存在ですが、 今作はそんなクソ真面目はイメージとはちょっと違う、ふわっとした雰囲気でした。
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信じていたもの、頼らざるおえないものが一転する人々が絡み合う話。 人物造形に滑稽さがあって、油断して読んでいたが、ある登場人物の行動からこれまた色々と考える話に転じる。 作者の誤りなども含めて作品への姿勢の表れとする&話の中にも内包する技とは…なんか狡い。 当時の史実...
信じていたもの、頼らざるおえないものが一転する人々が絡み合う話。 人物造形に滑稽さがあって、油断して読んでいたが、ある登場人物の行動からこれまた色々と考える話に転じる。 作者の誤りなども含めて作品への姿勢の表れとする&話の中にも内包する技とは…なんか狡い。 当時の史実も混じえたり、混じえて間違えたり… 現代でも起きている事件や問題に絡むさまざまな立場の人が出てくる物語もあるので、当時はこんな感じだったのかな?という軽い感じでスラスラと読めてしまった。 新訳のおかげだと思うのですが、「名作なんだよな」と構える必要もなく素直に物語に接することができたように感じ、この文庫の別の作品も読みたくなった(ジッドの他作も) 全てのことが大きくみるとその時代の一瞬のこと、どれも変化途中の経過の一つで、起きたことも全て小さく流れて消えていく感じがした。
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- ネタバレ
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古い作品のわりに、新訳でとても読みやすかった。キャラクターがそれぞれクセがあり、人間らしく魅力があって楽しい、エンタメ作品。 でも、アメデが殺されてしまう展開に、えーと思ってしまった…。 プロトスの嘘から全ては引っ掻き回され、アンティムは改心したと思ったら最後にまた法王庁批判、アルニカもサクッと別の人と結婚しまうみたいだし。プロトスもカローラもサクッと死んでしまう。 全て流動的で、混沌とした、移ろいやすい世の中。何も正しいことなんてない、みたいな時代の風刺なのかな?
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2/3くらいまで、アルセーヌ・ルパンみたいで面白い!と思って読んでいた。 残り1/3で、変わった。面白い、だけではなくて。 ルパンの印象と被ったのは、ラフカディオの飄々としたところと、この光文社古典新訳の「あそび」ある訳が、ハヤカワ版のルパンの新訳(ルパンは自分を「わし」とは言...
2/3くらいまで、アルセーヌ・ルパンみたいで面白い!と思って読んでいた。 残り1/3で、変わった。面白い、だけではなくて。 ルパンの印象と被ったのは、ラフカディオの飄々としたところと、この光文社古典新訳の「あそび」ある訳が、ハヤカワ版のルパンの新訳(ルパンは自分を「わし」とは言わない!)によるイメージと合ったんだろうな。 ラフカディオ、嫌いになれない。 ジッドの本がもっと戻って(再販されて)くればいいなあ
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