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緑の天幕 の商品レビュー

4.3

9件のお客様レビュー

  1. 5つ

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2023/05/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

一貫して非常に面白い小説でした。 文学や音楽、絵画が多数引用され、文化的な豊かさを感じました。 シェンゲリ先生が、”人間がどのような通過儀礼を持ってして文化的で道徳的な成熟した人間になるのか”と考察しているところは私も興味あるテーマだったので、カーチャとの結婚後のシェンゲリ先生があまり登場せず語られることがなかったのは少し残念でした。 それでも登場人物の一人一人が政治的な正しさや自身の幸福を追求している姿が鮮やかで、この本を手に取ったのは偶然でしたが、読むことができて本当に良かったです。

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2022/10/09

スターリンの死から始まり、ソ連崩壊後の90年代まで、毒舌で行動的なイリヤ、音楽的才能に恵まれたサーニャ、読書好きで赤毛のユダヤ系ロシア人 ミーハの3人の少年と彼らを取り巻くたくさんの人たち、ソ連という国のシステムに取り込まれ、ある人は抗い、ある人は心が折れてしまう、そういう群像劇...

スターリンの死から始まり、ソ連崩壊後の90年代まで、毒舌で行動的なイリヤ、音楽的才能に恵まれたサーニャ、読書好きで赤毛のユダヤ系ロシア人 ミーハの3人の少年と彼らを取り巻くたくさんの人たち、ソ連という国のシステムに取り込まれ、ある人は抗い、ある人は心が折れてしまう、そういう群像劇を、実在した人物や事件を交えながら描く。 21年末だったか、22年年初だったか書店に平積みされていた本書の表紙が気に入って、所謂“ジャケ買い”した。しかし、読み始めるにはソ連の歴史について少しは勉強が必要では?とソ連歴史関係の本を読んでから取り組んだが、政治史だけではダメで、文学史の知識もあった方が良かったかも。 だが、そういう前知識がなくても十分楽しめる。

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2022/08/28

スターリンが死んだ頃からソ連崩壊の頃までのソ連の話。 かなり好きですこの話。 3人の少年が大人になり、それぞれの道を歩む。その3人に影響を与えた人、見守る人、そして関わってくる人など大勢の人が32の章にわたって出てきます。 やはりこの時代の、文学や芸術に対する自由な思考と嗜好が...

スターリンが死んだ頃からソ連崩壊の頃までのソ連の話。 かなり好きですこの話。 3人の少年が大人になり、それぞれの道を歩む。その3人に影響を与えた人、見守る人、そして関わってくる人など大勢の人が32の章にわたって出てきます。 やはりこの時代の、文学や芸術に対する自由な思考と嗜好が捕まる原因に…ということが主題になってきています。いろんなことに興味を持って調べたり本を読んだりということができない世界。亡命できる人は亡命する。でも言語や文化が好きで外に出たくない人もいる… ラストで音楽家の1人の心が救われるのが"バッハの平均律" この平均律の最後に"終わりよければ全てよし"と書いてあるそう。 全709頁、厚さ4センチ。図書館で借り、2週間の期限当日まで読んでました。重くて普段の読書タイム(寝る前後)には向いてませんでした。 それでもほしくて図書館の本読んだ後に購入 20220316読了

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2022/07/17

大作でした.
1953年のスターリンの死から1996年までが舞台であるが,1996年は完全に後日談であり,ほぼ全編にわたってソ連におけるフルシチョフ&ブレジネフ時代の抑圧された社会と,それに抗う人々が描かれている.
表紙には「幼なじみの3人の少年と,そこに同世代の3人の女性が交錯...

大作でした.
1953年のスターリンの死から1996年までが舞台であるが,1996年は完全に後日談であり,ほぼ全編にわたってソ連におけるフルシチョフ&ブレジネフ時代の抑圧された社会と,それに抗う人々が描かれている.
表紙には「幼なじみの3人の少年と,そこに同世代の3人の女性が交錯し,」とあるのだが,主人公たちは3人の少年たちで,彼らを軸に市井の人々(とはいっても,KGBの監視下にあるような,反体制派知識人が多いのだが)の物語が綴られる.
3人が成長して以降は時系列もバラバラになり,また,登場人物も多いので,何度も以前の章に戻って確認をしながら読み進める羽目になりました.人物一覧や相関図を作りながら読むことをお勧めします.順不同であるお陰で,エピソードの積み重ねのようにもなっており,無理に全部を把握しなくても,読み進められるかもしれませんが,前の方で出てきた人物,逸話が再び別のシチュエーションで登場することによって話がつながったり,また,複数の角度から描かれることによって人物像や物語に深みが与えられていますので,自分は全容を把握するために再読するつもりです.

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2022/05/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

辞書みたいに厚い本だった。 GWの課題にした。 3にんの幼馴染と3にんの女性。 ソヴィエトからロシアへ。 時間の流れとともに物語が進行していく。 一生ってわけではなかった。 オーリャとイリヤが中心だったような。 非合法文書に,関わるとはどういうことだったのか。 反体制派の本を今は出版してもいい時代になったのか。 先生の,影響で,子供たちが文学を志って、すこしいいな、とおもった。ミーハは、悲しい結果になった。間違った本。作者とナボコフも話題でてきたー。

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2022/03/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「おまえバカじゃないのか?これ以上悪くなんかなりようがないだろ!」(P9) 1953年スターリンの死から始まって、1996年1月28日までの人間模様が描かれる。 主要な登場人物は3人の男子、イリヤ、サーシャ、ミーハ。彼らは良き先生に出会い成長していく。彼らを軸に蜘蛛の巣のように張り巡らされた人間関係が描かれる。物語は時計の針が行きつ戻りつ、閉じられた物語に違う扉が取り付けられまた開かれる。彼らの若さゆえの情熱から生じる軽率な行動は希望と絶望をもたらす。 誰がどうなるのか、というより「この国は、歴史は、どうなってしまうのだろうか?」という、時代のうねりを感じつつ読むことができました。 ロシアでは2010年発行。こういった物語が今も書かれるということ自体に感動を覚えます。そしてこの物語は、あの土地でしか生まれないのだろうとも思います。 ウリツカヤの未訳作品も翻訳されることを期待しています。 <後書きから> 「訳者あとがき」…ウリツカヤは1943年生まれ。理系出身。サミズダートの非合法文学を読んでいたことが発覚、1970年に解雇。その後文筆業へ。

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2022/02/27

やっと読了。 目に負担をかけたくなくて、休み休み読んでいたら、 案の定、時間がかかってしまった。720頁。 こちらの知識が足りず、きちんと理解できたとは言えないけれど、 すごいものを読んでしまった。圧巻。 また、ゆっくりとまとめたいところ。 とりあえず、今は自分にご苦労さんを...

やっと読了。 目に負担をかけたくなくて、休み休み読んでいたら、 案の定、時間がかかってしまった。720頁。 こちらの知識が足りず、きちんと理解できたとは言えないけれど、 すごいものを読んでしまった。圧巻。 また、ゆっくりとまとめたいところ。 とりあえず、今は自分にご苦労さんを♫ ◆2.25追記◆ 危惧していた、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まってしまった。 地下鉄構内へ避難し、恐怖に震える人たちの姿は辛い。 本書を読みながら、何とか避けて欲しいと考えていたのに・・・ とにかく穏やかな形での収束を願うばかり。 本書について、一読しただけでは語れそうもないし、 どこから語り出したら良いかもわからない。 (とりあえず中断) ◆2.27追記◆ 以下ブログ「旅と、本と、おしゃべりと・・・」に感想をアップしました。 https://blog.goo.ne.jp/mkdiechi/e/7fa558106b43b3a30e114c3ae366df0c

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2022/02/05

イリヤ、サーニャ、ミーハ3人の少年の生い立ち、成長を中心とした物語、その1人イリヤと学友オーリャの書き表しが多くを占めるのは、イリヤの個性が突出してソ連という時代背景から波乱万丈という生涯が輝きを放ち著者に最も訴えたからだろうか。 3人が兵役に適性を欠いた事が彼らにとって幸運だっ...

イリヤ、サーニャ、ミーハ3人の少年の生い立ち、成長を中心とした物語、その1人イリヤと学友オーリャの書き表しが多くを占めるのは、イリヤの個性が突出してソ連という時代背景から波乱万丈という生涯が輝きを放ち著者に最も訴えたからだろうか。 3人が兵役に適性を欠いた事が彼らにとって幸運だった。 3人とも家族環境やシェンゲリ先生を中心としたリュルスの活動で思春期の彼らの思想や理念、哲学が育まれ、自分に正直に生きた人生だったと思う。 登場人物が多く関係をつかむのが難しかった。 あの強権的、独裁国家の共産国ソ連という国で、そこには思想や言論、見聞、読書、広報、文化等に制限された困難な状況において、この小説は人々はどう生きたかを伝え、共にその時代を生きた著者が抗う人々に寄り添う共感が伝わり温もりを感じる。 ブレジネフ時代を知る者にとって、強固なソ連がはてなしく続くものと思っていたが、それから10年もせず崩壊するとは分からないものだった、人が造ったものはいつかは終わりが来るという事か。 時に話題になったジョージ・オーウェルの「1984」や、ソルジェニーツィンの「収容所群島」も物語れ、懐かしく読んだ。 確かソルジェニーツィンが来日し写真週刊誌「FOCUS」に掲載され記事を読んだ事が思い出される。 著者はノーベル文学賞受賞者の有力候補らしい、はたして選出されるだろうか。 700ページに及ぶ大小説、大分読み終えるのに日数を要したが、読んで良かったと思える本となった。

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2022/01/18

ソ連70年。 そこに暮らした市井の人々が織りなすタペストリー。 美しい少年時代から、苦悩をはらむ青年時代を経て、 重苦しい抑圧に怯え抗う大人たちへ。 ロシアの広大さ、深さ、そして長い冬がまるで目の前にあるようなぶ厚い700ページ。 人物関係図を乗せなかった新潮社は、きっと「悔...

ソ連70年。 そこに暮らした市井の人々が織りなすタペストリー。 美しい少年時代から、苦悩をはらむ青年時代を経て、 重苦しい抑圧に怯え抗う大人たちへ。 ロシアの広大さ、深さ、そして長い冬がまるで目の前にあるようなぶ厚い700ページ。 人物関係図を乗せなかった新潮社は、きっと「悔しかったら自分で作れ!」「2度読め!」って言ってる。

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