オーナー会社のための役員給与・役員退職金と保険税務 改訂版 の商品レビュー
法人税の役員給与・役員退職金・保険税務について実務的な指摘から解説された書籍。筆者の意見が所々に読めたのはよかった。論点がコンパクトにまとめられており難なく読めた。 P10 イ 家族経営である同族会社の留意点 夫が 100%株主であって代表取締役に就任しており、妻は会社法上の役員...
法人税の役員給与・役員退職金・保険税務について実務的な指摘から解説された書籍。筆者の意見が所々に読めたのはよかった。論点がコンパクトにまとめられており難なく読めた。 P10 イ 家族経営である同族会社の留意点 夫が 100%株主であって代表取締役に就任しており、妻は会社法上の役員ではなく、使用人として従事している場合があると思います。このような場合には、夫が対外的な営業活動などを行い、妻が経理、総務的なバックオフィスを担うことが良くあります。妻は、会社法上の役員には就任していませんが、夫が 100%株主であることから特定株主に該当し、「経営に従事」すると認定されるとみなし役員になります。 みなし役員に該当すると法人税法上の役員給与の規定が適用されることから、事前確定届出給与に該当しない賞与は損金不算入になってしまいます。「経営に従事」するか否かは、事実認定の領域となります。妻が夫の指揮監督下において経理、総務の作業を行っているのであれば、「経営に従事」すると認定されることは考えられません。一方で、夫が妻に権限を委譲して、妻が独断で決裁している状況が、税務調査時の発言や取引先との書面、メールから読み取れる場合には「経営に従事」していると疑われるリスクが高まります。税務調査において、代表取締役である夫が、使用人の妻に、権限委譲していることを調査官に説明するようなことは避けなければなりません。 P94 実務的には、3年を超える分割払いの退職金は、退職年金として否認されるリスクがあるとされています。著者の聞き及んだ範囲でも、退職 一時金を未払計上して、その取崩しが3年を超えたときに税務調査で退職年金としての可能性を指摘された事例が数件あります。いずれも修正事項にはならずに、指導事項として整理されたようなので、課税庁サイドとしても退職年金として否認するのは、ハードルが高いことが伺えます。 ご質問のケースでは、資金繰りの都合で長期に及ぶ分割が見込まれるようであれば、金融機関からの融資を受けて、短期間で支払うことも検討すべきかと思います。また、税務リスクを抱えずに、資金繰りの負担も軽減する方法として、あえて退職年金としての支給も視野に入れて検討すべきかと思います。 P121 ②経営上主要な地位 法人税基本通達9-2-32の適用が難しいのは、同通達が適用されない者である「実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている」に該当するか否かを形式的に判断できないためです。 裁決例でも①筆頭株主であること、②取締役会等に出席して決議に参加していること、③従業員に指示を与えていること、①事業活動に広く関与していることなどをもって、総合的に判断した結果、「実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている」とされた事例があります(東裁平02-02-15、TAINS コードF0-2-023)。 分掌変更後も発行済株式の過半数を保有するような株主の場合には、その所有株式を通じていつでも会社の経営や経理に支配を及ぼし得る立場にあることから、単なる株主としての立場のみであって、経営に従事していないことの証明ができるような対応が求められます。
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