タリバンの眼 の商品レビュー
アメリカが撤退した後のアフガニスタンは、タリバンが首都カブールを制圧し暫定政権を樹立した。そのタリバンは厳格なイスラム主義に則り一般的に言われるような女性の人権を無視したり、罪を犯した者に対する処罰が前時代的な肉体への残酷な処分であったりと、女性差別や人権侵害について非難を浴びる...
アメリカが撤退した後のアフガニスタンは、タリバンが首都カブールを制圧し暫定政権を樹立した。そのタリバンは厳格なイスラム主義に則り一般的に言われるような女性の人権を無視したり、罪を犯した者に対する処罰が前時代的な肉体への残酷な処分であったりと、女性差別や人権侵害について非難を浴びる。実際のところ我々の常識に照らし合わせればそのように受け取れる面も多々あるのだが、あくまでそれを判断しているのは、判断する側の基準でしかない。例えば日本人であれば、大半の人が職につき、日々の食事や生活が困難に成る程、著しく困窮している訳ではない。戦争や貧困をテレビに映る映像として受け止め、自分の生活の中では味わった事のない事態に対しての感想でしかない。方やアフガニスタンという国を見たらどうであろう。文明の十字路と呼ばれ、北に広大なロシア、東西はアジアとヨーロッパを結ぶど真ん中に位置し、中国、インド、イランに囲まれる。周囲の強大な国家群が南北東西勢力拡大しようものなら、このアフガニスタンを通らざるを得ない。アフガニスタン事態は天然資源に乏しく、かつ海に面さない為海洋資源がある訳でもない。国は長らく続いたアメリカによる攻撃、旧ソ連の侵攻などで荒廃し、農業も産業も育っていない。よって国民の大半は貧困、食べて生きる為の仕事と言えば兵士になるしかない。そのような環境、国家に育った若者たちと日本人の感覚や判断基準が異なるのは当然であり、その違いを理解しないままに彼らの文化や習慣を野蛮であるとか残酷、間違っていると指摘する事自体がずれている。 筆者は世界中の紛争地を訪れ、長らく彼らと生活を共にするジャーナリスト、ジャパンプレスの代表でもある佐藤和孝氏である。テレビニュースでも現地の映像や取材でその姿を見た方も多いと思うが、長年連れ添ったパートナーの山本美香も取材の過程で銃撃により失っている。そのような筆者が現地で目の当たりにした真実を写真や言葉にして伝えるのだから、我々平和な人間の感覚と異なるのは当然であり、より真実に近い意見・感覚である事は間違いない。 本書は「タリバンの眼」というタイトルで、大半はタリバンの視点や考え方について、その背景をベースに展開されていくのだが、後半はジャーナリズム論がその中心となり、考え方のベースになったとも言えるアフガニスタンの状況をつぶさに伝えている。我々が触れて異常と思えるタリバンの実態、イスラム主義の考え方は少し前の日本や欧米国家では日常的に同じことが行われてきた。「偶然」にも資源に恵まれ産業が発達して、雇用も確立された国家群が、自分達の文化や考え方を変えていっただけで、時間の止まったアフガニスタンでは変わらず残っているだけだ。 我々が真実がどこにあるか、何が正しいのかを理解するためには、彼らと同じように自分の目で見て自分の頭で考えるしか無い。だが多くの人にその様な勇気も時間も無い。だからこうした書籍から真実を探り、断片的ではあるものの真実のピースを拾いあげながら自分の頭の中で真相の完成図に近づけるため、考えながら組み立てていくしかないのである。今日も新聞や雑誌、ネットから流れてくる様々な情報を目にし、それを誰がどの様な行動から発信したものかを理解し、真実が何処にあるか、考えるきっかけになる本である。全てを鵜呑みにするのでは無く、誰のどの情報がより真実に近いのか。私は現地で真実を撮り続けるフォトジャーナリストの存在は大きいと感じる。
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米軍のアフガニスタン撤退に併せた 緊急出版なのかな?話があちこちにバラける 中国人アルカイダの話やサイクス・ピコ協定の話 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争 江戸時代の刑罰の話などが紛れ込む 徴税によるインフラ整備や国家というものが見当たらないアフガニスタン 復讐によって成り立つアラブの世界(95p) ムジャヒディンの汚職 タリバンの宗教的不寛容、金のないサウジアラビア(54) 羊とアヘン
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タリバン(タリブ=神学生の複数形)とは、神学校(マドラサ)で洗脳に近い宗教教育を受けた人達の間で生まれたイスラム教スンニ派の過激派組織。 パキスタンとアフガニスタンの国境周辺を活動拠点としたが、2021年のアメリカ軍撤退直後に首都カブ-ルを制圧、アフガニスタン暫定政府が発足させた...
タリバン(タリブ=神学生の複数形)とは、神学校(マドラサ)で洗脳に近い宗教教育を受けた人達の間で生まれたイスラム教スンニ派の過激派組織。 パキスタンとアフガニスタンの国境周辺を活動拠点としたが、2021年のアメリカ軍撤退直後に首都カブ-ルを制圧、アフガニスタン暫定政府が発足させた。40年以上にわたり戦乱の地を歩いてきた著者が、〝報道は戦争を止められるか〟の問いに 「中立な報道を世界に伝えることで、最悪の事態を防ぐことができる。情報を隠蔽する権力者の反啓蒙主義に対抗するジャ-ナリストは抑止力となり得る」と。
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タリバン=タリブ 神学生の複数形 1979年 ソ連 アフガン侵攻 ムジャヒディンが抵抗 1992年 腐敗したムジャヒディン政権をタリバンが武力とカネで倒す世直しするが パシュトゥン人の掟の押し付けで 北部同盟と国内勢力が二分 パシュトュン人勢力=スンニ派=人口80% が肥大化、 (ハザラ人=シーア派=20%)(イラン90%以上、イラク65%以上シーア派) それが国際化したのがアルカイダ アルカイダからISが派生 イラク サダム フセイン(=シーア派)のバース党の組織がISの母体 アメリカはアフガンから始まり、イラクで恨みを買いISを生み出した 2000年 北部同盟マスード将軍暗殺 9.11 アルカイダ ウサマヴィンラディンをかくまうタリバンがアメリカの標的に 北部同盟カルザイが大統領に インド、フランスで留学経験 2021年8月15日 カブール制圧 麦よりアヘン それと羊しかない ウイグル人がタリバンで戦闘訓練 戦闘員でしか暮らしていけない 徴税システム機能不全 主義主張はない 15歳以上の識字率30%台 民主主義ではなく、掟「パシュトゥンワリ」
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