親鸞 の商品レビュー
さまざまな哲学者や思想家の親鸞解釈を参照しつつ、その教えが現代においてどのような意義をもつのかということを考察している本です。 本書の「まえがき」で著者は、「専門の研究者でなくても、人間親鸞には正面から向きあうことができるのではないか、そういう立場から親鸞の魅力を描きだすことも...
さまざまな哲学者や思想家の親鸞解釈を参照しつつ、その教えが現代においてどのような意義をもつのかということを考察している本です。 本書の「まえがき」で著者は、「専門の研究者でなくても、人間親鸞には正面から向きあうことができるのではないか、そういう立場から親鸞の魅力を描きだすことも可能なのではないか、そうした思いから本書の執筆を始めた」と述べています。ただしこうしたことばからあるいは予想されるような、著者自身が親鸞の教えに触れることで感動をおぼえた体験にもとづくエッセイのような内容ではありません。著者は、西田幾多郎や清沢満之の研究者であり、本書でも西田や清沢のほか、田辺元、三木清、武内義範、曽我量深といった思想家たちの解釈がくり返し参照され、彼らの議論をまとめつつ、親鸞の思想の宗教哲学的な意義について論じられています。 本書でとくにくわしい検討がなされているのは、宗教における時間の特別な意義についてです。著者は、親鸞の思想とキルケゴールの思想の類似性を指摘し、実存の立場において宗教的な真理へ向かう「決断」がおこなわれる「とき」は、時計で測ることのできるような間延びした時間ではなく、むしろそうした日常的な時間に垂直に切り込む「とき」だと論じています。そうした「とき」は、永遠として特徴づけられるものの、日常的時間から完全に乖離しているのではなく、日常的時間のなかに交わると著者は主張し、そのような宗教哲学的な立場から親鸞の信仰の内実についての解釈を提出しています。 多くの思想家たちの議論が参照されており、親鸞の思想の宗教哲学的な意義について、これまでの研究のなかでどのような議論がなされてきたのかということが、本書を通してうかがい知ることのできる内容だと感じました。
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版元からの哲学者執筆親鸞論は久しぶりかなあ(石田慶和先生・大峯さん・薗田坦氏・長谷正當氏くらい?勿論、著者も特に 大峯・長谷著作を多く参考している)。再読します。
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周囲が大絶賛だったのだけど、やっと読めた。 親鸞聖人が書かれた言葉を引用もあるが著書の方は哲学専門なのでそこからの言葉もあり、ひとりの人間が親鸞聖人の教えに向き合って感じた(だと言葉が弱いな)、自分の中から出てきたものだと思う。哲学的な無駄のない記述でありながら、親鸞聖人の思いが感じられる表現てすごいな。 著者が親鸞聖人と向き合っているわけだけど、親鸞聖人が向き合ったものも見えるような感覚になるのがすごい。考える力、突き詰めていく力と書く力の偉大さ。 信仰のダイナミズムという章では回向、往相と還相、三願転入という真宗ど真ん中のテーマについて書かれている。近代の方の解釈も含め自分はどうだと読むことが出来た。これが正解ですよではなくて、信仰の中で生まれてくる思惟の話なのだ。 はっきり言ってどこも退屈なところがない!真宗の方は是非ご一読を。
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まえがき 1 親鸞が生きた時代 2 法然と親鸞 3 「悪」の自覚 4 救済のパラドクス 5 「信心定まるとき」―親鸞と「時間」 6 親鸞と言葉の問題 7 宗教的言語としての名号 8 信仰のダイナミズム(1)―回向をめぐって 9 信仰のダイナミズム(2)―往生と還相 10 信仰のダ...
まえがき 1 親鸞が生きた時代 2 法然と親鸞 3 「悪」の自覚 4 救済のパラドクス 5 「信心定まるとき」―親鸞と「時間」 6 親鸞と言葉の問題 7 宗教的言語としての名号 8 信仰のダイナミズム(1)―回向をめぐって 9 信仰のダイナミズム(2)―往生と還相 10 信仰のダイナミズム(3)―三願転入 エピローグ―イマジネーションの人・親鸞
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